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被災地に寄り添い、音楽の力で想いを繋ぐ ~“わ”で奏でる東日本応援コンサート2019 in 相馬~

文 本間裕子
写真 中川 司

被災地に寄り添い、音楽の力で想いを繋ぐ ~“わ”で奏でる東日本応援コンサート2019 in 相馬~

2019.10.16

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多くの命を奪い、残された人々の生き方に影響を与えた東日本大震災から今年で8年。
震災直後から活動を始め、全国に被災地応援を発信し続けている「“わ”で奏でる東日本応援コンサート」は今年9月22日、
津波の被害が大きかったことで知られる福島県・相馬市にて開催された。

34回目となる今回は、4人組コーラスグループ「サーカス」をはじめ、地元の合唱団や市内3中学校合同バンド等も同じステージで演奏。
美しい旋律が被災地の深い悲しみを包み込み、歌声が優しくも力強く響き渡った。
復興の現状と共に、コンサートの様子をレポートしてみたい。

相馬市民会館 写真(上)、星のカードが設置され来場者がメッセージを書き込む様子 写真(中)、星のカードのメッセージ 写真(下)

城下町をイメージさせる瓦を使った切妻屋根で構成された相馬市民会館(上)、会場では星のカードが設置され来場者がメッセージを書き込んだ(中)、想いを綴った星のカードのメッセージ(下)

「“わ”で奏でる東日本応援コンサート」は、セイコーグループ株式会社グループCEO服部真二の呼びかけで音楽家の故・前田憲男氏と共に音楽で支援の輪を広げようというプロジェクトだ。震災のわずか一ヶ月後から始まり、日本全国で継続的に開催。34回目となった今回は、音楽のまちづくりに取り組む福島県・相馬市の商工会議所とタッグを組み、同市民会館が舞台に選ばれた。

吉田一直事務局長 写真(上左)、たこ八 小野芳征さん 写真(上右)、お食事処 たこ八 写真(中左)、たこ八、名物のホッキ飯 写真(中右)、原釜港の漁師 菊地基文さん 写真(下左)、ホテルみなとや 管野貴拓さん 写真(下右)

(上左から)吉田一直事務局長、たこ八 小野芳征さん(中左から)お食事処 たこ八、名物のホッキ飯(下左から)原釜港の漁師 菊地基文さん、ホテルみなとや 管野貴拓さん

前日に現地入りしたセイコーグループ株式会社 常務取締役 金川宏美、企業文化部 部長 湯本保憲は、相馬商工会議所の吉田一直・事務局長の案内の元、復興の現状を視察に。地元に愛され、復興のシンボルともなっている「お食事処 たこ八」にて、漁師の菊地基文さん、宿泊業を営む管野貴拓さんから震災直後の様子を伺う。相馬市内でも、津波で全部流されてしまった地域もあれば、浸水被害で済んだ場所もあり、それは地形の差によるもの。逃げて亡くなった方もいれば、残ったことによって助かった方もいたのだそう。

「長きにわたる応援をとても有難く感じている。でもその過程で、相馬を好きになってもらうことが重要だと思う。好きなことは続く、それが人間の本質だから」と菊地さん。

原釜港の漁師 菊地基文さんとホテルみなとや 管野貴拓さん 写真

管野さんが営む宿泊施設では、1階の天井部分まで浸水。車での寝泊まりを余儀なくされる復興支援の方々や火力発電所の作業員の方のことを考え、急ピッチで修復を進め、10月3日に再スタートしたという。菊地さん、管野さんを初めとする相馬市の青年団は、今でもよく集まり、町を盛り上げようとアイデアを出し合っているそう。最近では漁の試験操業もスタートし、水揚げ量もゆるやかながらも増加傾向にあるという。

原釜尾浜海水浴場 写真(上)、伝承鎮魂祈念館の慰霊碑 写真(中)、伝承鎮魂記念館 写真(下)

原釜尾浜海水浴場は遠浅で穏やかな海岸として知られる(上)、伝承鎮魂祈念館の敷地内には、震災で犠牲となった方の慰霊碑が建立されている(中)、伝承鎮魂記念館では相馬市の震災前の原風景や災害の記録などを、写真や映像でみることができる(下)

「たこ八」を後にした一行は、被害の大きかった原釜尾浜海水浴場へ。「震災直後は、毎日のように本当に夢であって欲しいと思った」と吉田一直・事務局長。亡くなった方々の名前が刻まれた慰霊碑に手を合わせ、一瞬にして日常を奪った巨大津波の脅威を改めて思い知る。悲しみが完全に癒えることはないものの、最近では花火大会や音楽イベントも開催されるようになり、皆に笑顔をもたらす海水浴場へ復活しつつあるという。
8年の時を経た相馬市は、確実に次のステップへ進んでいるようだ。

服部真二CEOの挨拶 写真

そして迎えた「“わ”で奏でる東日本応援コンサート2019」当日。曇天模様にも関わらず、開場入り前から行列ができ、900人のキャパシティを持つ市民会館は即満員に。実行委員長を務める服部真二CEOの挨拶でコンサートはスタートした。

山口マリー、くるみee 写真

オープニングは、司会も務める山口マリー、くるみeeが会場を沸かせた

中村第一中学校・中村第二中学校・向陽中学校の3校合同バンドの演奏 写真

中村第一中学校・中村第二中学校・向陽中学校の3校合同バンドは息の合った演奏で会場を引き込んだ

相馬市内3つの中学校の吹奏楽部によるバンドは、米津玄師「パプリカ」と星野源「アイデア」という近年のヒットナンバーを演奏。指揮を務めた向陽中学の田代研一先生によると、それぞれの中学で練習を重ね、合同練習は一回のみで本番に臨んだという。演奏後は緊張が解けたのか、生徒たちも自然と笑顔がこぼれる。

システマジャパン相馬子供コーラス 写真

続くのは、小学校4年生から高校2年生で構成されるエル・システマジャパン相馬子供コーラス。
まるで絵本をめくるかのようにストーリーが展開していく「日記のうた」等、ユニークな振り付けと共に披露し、その愛らしさに観客からは笑いが漏れるほど。

「廃盤になってしまったような旧い曲から、これからも歌い継がれて欲しいものを選んでいる」と小島弥生先生。子供たちの一生懸命な姿に感化され、会場のボルテージも上がっていく。

相馬合唱団エスポワール 写真

同様に選曲にこだわりを見せたのが、相馬合唱団エスポワール。歌で被災地を応援しようとカワイ出版が企画したプロジェクトで生まれた「ほらね、」と、相馬市の中学生が教師と共に作った「群青」を披露する。離ればなれになった友への想いや、ふるさとでの再会への決意が込められた歌詞は、心の奥底に染み入っていくかのようだ。

SCCハウスバンドとサーカス 写真

会場に一体感を生んだのが、地元のSCCハウスバンドによるザ・ビートルズ「Hey Jude」。観客やセイコーの金川・常務もステージに上がり、心から楽しそうに歌う姿は、今回のコンサートのハイライトとも言えるシーンであった。

そして遂に、今回のスペシャルゲスト、サーカスが登場。SCCハウスバンドをバックに、「Mr.サマータイム」「アメリカン・フィーリング」「桜色のみち」「One Voice」の名曲を次々と披露、美しいハーモニーで会場を魅了。最後は出演者、来場者全員で「ふるさと」を歌い上げて、コンサートを締めくくった。

ふるさと合唱 写真

「出演者の掛け合いが楽しく、まるで自分も舞台上に参加したかのような気分で楽しめた。最後にみんなで『ふるさと』を歌うことができてよかった」「演者が本当に楽しそうで、観ているだけで幸せな気持ちになった」と、来場者の声。舞台裏で見守っていたスタッフも、「少しずつ出来上がっていく姿に心打たれ、裏方も十分に楽しむことができた」と感慨深げ。
一緒になって楽しむことで、自然と垣根がなくなり、音楽の力が相馬に“わ”が生んだようだ。
音楽の力を信じ、時を経て進化し続ける「“わ”で奏でる東日本応援コンサート」。
音楽を架け橋に、日常の大切さと皆の想いを繋いでいく。

相馬商工会議所創立70周年記念
”わ”で奏でる 東日本応援コンサート2019in相馬

開催日

2019年9月22日(日)

開催場所

相馬市民会館 大ホール

出演

サーカス(ピアノ:平畑徹也) / 山口マリー / くるみee

地元出演者

エル・システマジャパン相馬子どもコーラス / 相馬市立中村第一中学校吹奏楽部・相馬市立中村第二中学校吹奏楽部・相馬市立向陽中学校吹奏楽部合同バンド / 相馬合唱団エスポワール / SCCハウスバンド

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