

関連するSDGs目標
種の減少や絶滅、自然の質の低下、生態系の破壊など、生物多様性は危機的な状況にあります。同時に、企業が生物多様性の保全に取り組む重要性もますます高まっています。
セイコーグループは、事業活動が生態系サービスの恩恵を受け、同時に影響を与えている企業として、生物多様性の保全は環境経営の重要課題であると考えています。各事業会社では自社の特性に合わせた生物多様性活動を推進しています。生物多様性に配慮した土地利用、製品での配慮、植栽活動、ステークホルダーとの連携、教育啓発などのさまざまな活動に取り組み、「自然共生社会」の実現を目指しています。
2021年度総括
セイコーグループの事業会社では自社の立地や周辺環境に合わせた生物多様性活動を推進しました。
セイコーインスツルグループの各事業所では、2021年度も引き続き生物多様性の見える化を推進しました。事業所に生息するいきもの調査、撮影や記録、また、それらの結果を事業所内で共有することで、生物多様性の見える化、理解が進みました。また、「SIIグループ生物多様性土地利用ガイドライン」に基づく取り組みも継続しました。
盛岡セイコー工業(株)では記念すべき第10回目の自然観察会を開催しました。また、セイコーグループ(株)と共同で子どもたちに生物多様性の大切さを伝える「セイコーわくわく環境教室」を開催しました。
生物多様性に配慮した土地利用
セイコーインスツルグループでは2011年4月に生物多様性行動指針を策定し、生物多様性保全活動を開始しました。その後、2016年2月には「SIIグループ生物多様性土地利用ガイドライン」を発行し、ガイドラインに基づいた事業所緑地の利用や、地域の生物多様性保全への貢献活動を継続的に実施しています。2021年度も各事業所では事業所の特徴をいかしたさまざまな取り組みを展開しました。
絶滅危惧種の保護
セイコーインスツル(株)大野事業所では、2020年6月に敷地内にて絶滅危惧種(環境省・絶滅危惧Ⅱ類)であるキンラン14株を発見しました。その後は保護エリアを設定し、大切に見守っています。大野事業所は都心に近い千葉県市川市に立地し、事業所周辺は住宅に囲まれている環境ですが、そんな中でキンランが発見されたことは大変喜ばしく、毎年開花した姿を確認できています。

生物多様性の保全には、企業単独の取り組みだけではなく、地域や自治体、NPOなど多様なステークホルダーとの協力や連携も重要です。
千葉県内に所在するセイコーインスツル(株)の3事業所※では、2016年2月より、千葉県のヒメコマツ回復事業の一環として募集した「ヒメコマツ系統保存サポーター」に登録し、千葉県の絶滅危惧種であるヒメコマツを育成しています。生育状況は毎年10月に千葉県に報告し、苗を育てることでヒメコマツに対する理解を深めるとともに、ヒメコマツの遺伝系統の保存に協力しています。
※3事業所:幕張事業所(千葉県千葉市)、高塚事業所(千葉県松戸市)、大野事業所(千葉県市川市)

緑化活動・花壇づくり
エスアイアイ・クリスタルテクノロジー(株)では、社員の手による敷地の緑化を推進しています。2021年度は春季と秋季に芝桜の苗植えを実施しました。苗植えには毎回30名以上の社員が参加し、社員同士のコミュニケーションにもつながっています。

中国の大連精工電子有限公司でも継続的に緑化を進めています。2021年度は新たに2ヶ所の緑化エリアを設け、アカシア、レンギョウやライラックなどを植栽しました。大連精工電子有限公司ではこれまでも生物多様性に配慮した緑地づくりに取り組んできました。緑地の維持管理では、殺虫剤や除草剤の使用を控え、枯れ枝や落ち葉などは堆肥化することにより敷地内で循環しています。

セイコーインスツル(株)幕張事業所は広い緑地を有している事業所ではありませんが、「通年で花いっぱい咲き乱れる事業所」をスローガンに掲げ、継続的に社員による花壇づくりに取り組んでいます。また、千葉県花き(花卉)振興地域協議会が主催する、花きイノベーション推進事業「幕張新都心地区における花壇づくりコンテスト」に2017年より毎年参加し、2021年度は「奨励賞」を受賞しました。

いきものの生息場所の提供・調査
セイコーインスツル(株)の各事業所では、いきものの生息場所の提供の一環として巣箱やバードバスなどを設置しています。また、センサーカメラ等を利用した「いきもの調査」も実施し、事業所敷地内に生息しているいきものについて理解を深めるとともに、調査結果は社員への啓発活動に活用しています。
仙台事業所では既存のバードバスの設置環境を改善しました。設置後に利用された形跡がないことから、新たな場所に木材や草木を利用した空間をつくり、いきものが安心して利用できる環境にしました。近くに設置したセンサーカメラで、リスが利用している姿が確認できました。

自然観察会
盛岡セイコー工業(株)では、自然観察会を開催しました。この自然観察会は、専門家を招いて生物多様性保全活動の指導を頂く機会でもあり、2012年から継続しているものです。10回目となった2021年度は、前回に引き続きリモートを併用しての開催となりました。当日は、専門家の方々や社内関係者の他、行政からもご参加いただき計34名が参加しました。
10回目という節目の開催になることに伴い、これまでの活動とその成果を振り返ると共に、初の冬の開催ということで、冬の杜の生き物の観察やその生態について学びました。
盛岡セイコー工業(株)では、センサー自動カメラを用いて敷地内の数ヶ所で動物のモニタリングを続けています。当日のプログラムの中ではその結果を共有し、専門家の方に動物の生態や生物多様性との関わりなども解説していただきました。
この他、盛岡セイコー工業(株)は、セイコーグループ(株)と共同で、子どもたちにインセクトホテル※作りを通じて、生物多様性の大切さを伝える「セイコーわくわく環境教室」を開催しました。
また、2022年8月には、公立大学法人 岩手県立大学の協力を得て、自社の敷地内に、水資源循環機構を備えたビオトープを開設しました。
※インセクト(虫)のホテル。廃材や落ち枝、竹筒などを用いて作成し、虫の繁殖や越冬するための場所を提供することで多様な生態系づくりを目指す。

教育・啓発
生物多様性の保全には一人ひとりの理解と行動が欠かせません。セイコーグループでは環境教育の中で生物多様性の重要性について触れるとともに、各事業会社ではイントラネットでの情報配信など、生物多様性保全の啓発活動を継続的に行っています。
エスアイアイ・クリスタルテクノロジー(株)では、事業所内に生息する植物を事業所構内図に解説入りで見える化し、啓発活動に役立てています。

製品と生物多様性
2016年度からSIIグリーン商品基準(現セイコーグループ・グリーン商品ラベル制度)の環境配慮項目に「生物多様性への配慮」を追加しました。製品ごとに配慮する項目を設定し、製品における生物多様性への配慮を強化しています。