生物多様性保全
関連するSDGs目標
自然共生社会を目指し、立地や周辺環境に合わせた生物多様性活動をステークホルダーと連携しながら取り組んでいます。
基本的な考え方
2022年12月に開催された生物多様性条約 第15回締約国会議(COP15)において、新たな生物多様性に関する世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。ネイチャーポジティブの実現に向けて、企業にはより一層の取り組みが求められています。
当社グループは、事業活動が生態系サービスに依存し、同時に影響を与えている企業として、生物多様性の保全は環境経営の重要課題であると考えています。また、生物多様性の保全には、緑を増やすだけではなく気候変動や資源循環も含めた統合的な取り組み、同時に、さまざまなステークホルダーとの連携が重要だと考えます。
当社グループの事業会社の中には自然豊かな国立公園や県立自然公園に隣接している事業会社もあります。各事業会社では自社の立地や周辺環境に合わせた生物多様性保全活動を推進しています。
今後は、依存と影響、及び、リスクと機会について可視化していきます。
2023年度総括
各事業会社では生物多様性に配慮した土地利用の一環で緑化活動、絶滅危惧種の保護やいきものモニタリング、啓発活動として自然観察会の開催など自社の特性に合わせた生物多様性活動を推進しました。これらの活動には社員が自ら参加することで生物多様性への理解が深まりました。また、GHGの削減、取水量削減や廃棄物削減など生物多様性に関わる取り組みを統合的に推進しました。
製品については環境配慮型製品の配慮項目の1つに生物多様性への配慮を設定し継続的に取り組みました。
盛岡セイコー工業(株)は、2023年度 緑化優良工場等表彰(通称:全国みどりの工場大賞)において「東北経済産業局長賞」を受賞しました。
生物多様性に配慮した土地利用
緑化活動
エスアイアイ・クリスタルテクノロジー(株)では、社員の手による敷地の緑化を推進しています。2023年度も芝桜の苗植えを実施しました。苗植えには毎回30名以上の社員が参加し、社員同士のコミュニケーションにもつながっています。

社員により芝桜の苗植え中
二戸時計工業(株)では、社員による花壇づくりを継続的に推進しています。二戸市が主催する花壇コンクールに参加し入賞しました。

社員で制作した花壇
中国の大連精工電子有限公司ではこれまでも継続的に生物多様性に配慮した緑地づくりに取り組んできました。緑地の維持管理では殺虫剤や除草剤の使用は控え、枯れ枝や落ち葉などは堆肥化することにより敷地内で循環しています。タイのSeiko Instruments(Thailand)Ltd.の2つの工場でも2022年に大規模な植樹を実施し、現在は樹木の生長を見守っています。

大連精工電子有限公司の緑地
絶滅危惧種の保護
セイコーNPC(株)那須塩原事業所では事業所内の敷地の一角にキンランを3株、またその近くにはギンランを多数確認しています。かつて雑木林に群生するキンランを見ることは珍しくなかったのですが、近年、個体数が減少し将来的な絶滅が危惧されることから、環境省は「絶滅危惧II類」に指定しています。那須塩原事業所では見守りながら毎年開花を楽しみにしていますが、2023年の春には敷地内の別の箇所でも新たに開花が確認されました。この他にも、シュンラン、ヤブラン、オオバギボウシなどの生息も確認されています。
芝桜の植樹や、鳥の餌として提供できるようにブルーベリーを植樹し敷地内の緑化も推進しました。

キンラン
千葉県内に所在するセイコーインスツル(株)の3事業所では、2016年2月より、千葉県のヒメコマツ回復事業の一環として募集した「ヒメコマツ系統保存サポーター」に登録し、千葉県の絶滅危惧種であるヒメコマツを育成しています。生育状況は毎年10月に千葉県に報告し、苗を育てることでヒメコマツに対する理解を深めるとともに、ヒメコマツの遺伝系統の保存に協力しています。2023年度は幕張事業所のヒメコマツを高塚事業所に移設しました。引き続き生長を見守っていきます。
※3事業所:幕張事業所(千葉県千葉市)、高塚事業所(千葉県松戸市)、大野事業所(千葉県市川市)

高塚事業所のヒメコマツ
啓発活動
いきものモニタリングと啓発活動
セイコーインスツル(株)の各事業所では、いきものの生息場所の提供の一環として巣箱やバードバスなどを設置しています。また、センサーカメラ等を利用した「いきもの調査」も実施し、事業所敷地内に生息しているいきものについて理解を深めるとともに、調査結果は社員への啓発活動に活用しています。仙台事業所では、センサーカメラを設置して「いきものモニタリング」を実施しています。モニタリング動画は、社員への啓発の一環で社員食堂の入口で公開しています。

モニタリング動画を公開
自然観察会
盛岡セイコー工業(株)と当社は、2024年7月に盛岡セイコー工業の敷地内にて自然観察会を開催しました。この自然観察会は、清水建設(株)のご協力を得て、各分野の専門家から生物多様性保全活動の指導をいただく機会でもあり、2012年から継続しているものです。13回目の開催となった今回は、行政関係者、当社グループの環境担当者など26名が参加しました。
今回は「生物多様性の測り方」をテーマに設定し、自社内でも生物多様性向上の程度を評価して活動の改善や外部への発信に活かせるように、専門家からの講義や技術指導をいただきました。生物多様性を定量的に測ることは専門家でも非常に難しく、課題とされていますが、指標となる植物や昆虫を決めて継続的なモニタリングを行うことで、生物多様性の把握につながると考えています。過去の自然観察会で確認された事象や、今回の観察会前に実施した事前調査の結果などを実例に、評価の進め方について現地で説明をいただきました。生物多様性保全活動を高めるため、今後も自然観察会を継続していきます。
このほか、盛岡セイコー工業(株)と当社は、インセクトホテル作りやビオトープでのいきもの調査を通じて、子供たちに生物多様性の大切さを伝える「セイコーわくわく環境教室」を定期的に開催しています。
※インセクト(虫)のホテル。廃材や落ち枝、竹筒などを用いて作成し、虫の繁殖や越冬するための場所を提供することで多様な生態系づくりを目指す。

自然観察会の様子
製品と生物多様性
グリーン商品基準の環境配慮項目の中に「生物多様性への配慮」を設け、鉛フリー化による生態系への影響を軽減など、製品ごとに配慮する項目を設定しています。商品基準は2年毎に見直しし、製品における生物多様性への配慮を強化しています。