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「腕時計のお手入れ、していますか?」――時計技能者に聞いた大事なお話

文 清水麻衣子
写真 望月みちか

普段なにげなく身につけている腕時計。電池式か、機械式か――という違いくらいはわかっても、長く大切に使うために必要なことは、案外知られていません。まるで外科医のように毎日時計に向き合い、修理のみならず、時に外装だって新品のような状態に戻してしまうセイコータイムラボの技能者たち。ここで手入れをされる時計はなんて幸せなのでしょう。技能者の技術力の高さには、日々の鍛錬があったのです。修理工程から見えてくる「知っておきたい時計の話」に迫ります。

セイコータイムラボの技能者たち 写真

腕時計にダメージを与えること、していませんか?

動かなくなった、時間が狂う、ベルトが切れた、傷がついた……etc. 腕時計のトラブルで困ったことはありませんか? 「いい時計を買ったのだから壊れるはずはない」と思うかもしれませんが、時計はあくまでも精密機械。日常生活には腕時計にダメージを与えるトラップが潜んでいます。

ゴルフなど、スポーツをするときははずしてほしい
時計はぜんまいや歯車など、さまざまな精密部品でできています。スポーツなどの激しい振動や衝撃によって不具合を起こす恐れがあり、注意が必要です。スポーツのときははずすか、ランニングウオッチやダイバーウオッチ、登山用など、振動を想定して作られている専用の時計を選ぶようにしてください。

磁気に近づけないで
スマートフォンや携帯電話、タブレットの本体やマグネット式カバー、バッグのマグネット式留め具、トイレのハンドドライヤー、磁気ネックレス、車のパワーウインドウ、電子レンジやACアダプターなど、日常生活には目に見えない「磁気」であふれています。機械式時計は心臓部のひげぜんまいに磁気の影響を受けると、遅れたり進んだりします。また磁気に触れてしまうと遠ざけてもひげせんまいに磁気が残り、精度に影響を及ぼし続けます。(その場合、磁気を取り除く修理が必要になります)クオーツ時計も磁気に触れている間は内蔵のステップモーターが影響を受け時刻の遅れ進みが生じ、磁気から遠ざければ正常な動きに戻ります。(時刻合わせで進みや遅れを修正してからご使用下さい)時計を磁気から5cm以上離すことで、ほとんど影響を受けなくなります。時計と磁気を密着させないように注意してください。

定期的なメンテナンス 写真

定期的なメンテナンスで、長く使ってほしい
お客さまの大切な時計をより長くご使用いただくために、定期的なメンテナンス=オーバーホール(分解掃除)をお勧めします。「でも、メンテナンスってどういうことをするの?」――そんな疑問に答えるべく、セイコータイムラボの時計技能者たちが毎日鍛錬を積んで取り組んでいる修理とメンテナンスの現場をご紹介しましょう。

サービススタジオ 写真

整理、整頓、清潔が徹底されたサービススタジオ(メンテナンス職場)で防塵服に身を包み、時計に向かう技能者たち。内装修理は分業ではなく、一人がすべての工程を責任持って担当します。診断から始まり、分解、洗浄、注油*、組立、精度調整、運針検査……etc. その表情は真剣そのもの。「任された時計は直す」という熱意に満ちた表情は、外科医が手術を行っているときのような頼もしさがあります。

*最も注油箇所が多い時計は、約140ヶ所に渡り、油の種類は13種類に及びます。その都度部品箇所の目的に応じて最適な油を使い分けて作業をしています。

修理技能者 M.H. 写真

「時計も車の車検と同じなんですよ。車を点検して、オイルやタイヤが消耗していれば交換しますよね。時計の場合も一緒で、使い続けているうちに潤滑油の粘性が低下したり、防水性を保つためのパッキンも劣化してきます。定期的なメンテナンスでそれらを取り替えれば、故障しにくく長く使えます。メンテナンスを怠り、壊れてしまったときの修理を考えると、トータルコストは抑えられるのです。3〜4年ごとのメンテナンスをお勧めします。」(修理技能者 M.H.)

外装研磨作業 写真

外装研磨作業は、使い込んでいるうちに外装が傷ついてしまった時計を修復します。セイコーの旗艦ブランドである「グランドセイコー」は下地を整えるザラツ研磨(左中)をしたのち、つやを与えるバフ研磨(右中)をかけます。それでも直らない深い傷や打痕には、レーザー溶接(右上)の技術で修復し、新品に近い仕上げになるよう復元修理をします。筋目と鏡面が混在するベルトは、模様や輝きが異なる部位を研磨しないように保護するため、細いマスキングテープ(左下)でカバーしてから研磨(右下)します。

双眼顕微鏡でのチェック 写真

すべての工程は、経験を積んだ技能者でなければできない高度な技術。セイコータイムラボでは、対象物が立体的に見える双眼顕微鏡を使うため、目に見えない埃や、接眼ルーペだけではわからない微細な汚れや不具合も見逃しません。52項目もの最終チェックをクリアすれば終了です。すべては「セイコーの腕時計を長く使ってほしい」という気持ちの表れ。電池交換でも、単純に電池の交換だけをする作業では無く、他に不具合が無いか内部機構や防水機能の確認、温度サイクル試験*も行います。お客さまの手元に戻ってきた時計は、さらに愛着の湧く宝物になっていることでしょう。

*時計に-10℃から50℃までの温度変化をあたえ、のべ16時間にわたり時計が正常に動作するかを確認します。

競技会出場者の訓練中の様子 写真

セイコータイムラボでは、すべての技能者が双眼顕微鏡を使用し1/100mm、1/100mg単位のミクロな精度調整を行います。写真は競技会出場者の訓練中の様子。時計修理の全国競技大会で数多くの優勝や入賞を果たしています。

時計修理の全国競技大会で数多くの優勝や入賞を果たす 写真

さらに、社内で「セイコータイムラボマイスター」制度があります。修理技能のみならず、時計の歴史、自社製品以外の知識、ブランドについてなど、幅広く語れる知識が必要な資格です。

競技会出場者の訓練中の様子 写真

「セイコーサービスセンター」から「セイコータイムラボ」へ

創立55周年を迎え、時計の修理だけではなく、高度な技術に立脚した高品質なメンテナンスが大切である事を広く知ってもらうため、社名が「セイコーサービスセンター」から「セイコータイムラボ」に変更になったばかり。スマ―トフォンやパソコン、電化製品の時計機能など、さまざまな形で時刻を知ることができるようになった現代において、腕時計を身につけるなら「いいものを長く、大切に使いたい」という、こだわりや愛着を求めるお客さまが増えてきています。そんなお客さまの想いに応えるため、すべての時計技能者たちが今日も時計に愛情を込め、お客さまの時計に向き合っています。あなただけのセイコーの腕時計を身につける喜びを、ぜひ感じてみてください。

セイコータイムラボ株式会社

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