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2026年夏、和光本店の3・4階が「スタイルスクエア」として生まれ変わりました。より明るく広々とした内装は、ただ新しいものに置き換えられたわけではなく、セイコーグループとして「何を守り、何を変えるか」を問い続けて導かれた空間です。

歴史あるものと新しいものの交差に、どんな思いが込められているのか。セイコーグループ、そして和光でデザインを担当する武蔵さんと、和光デザイン部の奥田さんにお聞きしました。

再び向き合った「何を残すか」。2008年からのつながり

3・4階のリニューアルにはどのような背景があったのでしょうか。

― 武蔵さん:今回は、売場を新しくすること以上に、これからの和光らしさを形にすることを大切にしました。商品を販売する場所から「自分らしい装いを育てる場所」にするために、何を加えるかよりも、まずは「何を残すか」から考えていきました。

「何を残すか」は、2008年の大規模改修の時から続くテーマでもあります。1932年(昭和7年)竣工の歴史ある建物ですが、多くの方が訪れる銀座の重要な場所だからこそ、”皆さんにとって良い場所にすること”を前提として、残すもの・復刻させるもの・新しく加えるもの、という3つの分類を考えてきました。

2008年の改修から17年が経過した2025年の春頃、内装に多少の傷みが出てきたことや、2024年に地階のリニューアルを終えたこともあって、次は3・4階に取り組む流れとなりました。特に今回は、和光ブランドをどのように訴求していくかを考えて、販売スタッフの声も聞きながら進めていきました。

武蔵さん 画像

2008年の改修時も担当していた武蔵さん

迎えるのは開かれた“回廊”

今回3・4階のリニューアルで大切にしたことはどんなことでしたか。

― 奥田さん:今回が17年ぶりのリニューアルだったように、最低でも10年以上は使うフロアになることを前提にプランを練りました。現場スタッフそれぞれの要望に寄り添いつつも、中長期的な目線を忘れないように努めました。そのため、近い将来ちょっとした変更が必要になったとしても対応できるように設計されています。

銀座の街に面した窓を開放的にしたことが、今回の最大の特徴だと思っています。実際、3ヶ月間の改装を終えて初めて入ったフロアスタッフからは、「明るい」「広く感じる」という声が多く挙がりました。光を多く取り込めるようになったことによって、体感的にも広く感じてもらえてよかったです。

奥田さん 画像

ディレクターである武蔵さんと共に、デザイナー兼コーディネーターとしてリニューアルを担当した奥田さん

― 武蔵さん:確かに、明るいフロアにしたい、というのが目標のひとつでした。そのためこの建物の特徴でもある、カーブした壁面の窓から、自然光をたっぷり取り入れています。

この壁面はいわば、1932年から変わらないこの建物の財産でもあります。元々あるものを活かして、床の白いタイルから繋ぎ目なく続く、階段状の白い雛壇をつくりました。お客様には、ゆったりとした「回廊」を体験していただけるように考えたエリアです。

2008年にも、この窓周りをうまく活かそうという話は出たのですが、今思うとあまり活かしきれていませんでした。それが今回のリニューアルで、目一杯叶えられたと思います。

お客様には、窓の外の銀座を感じながら、自由に店内を見てもらいやすくなり、また商品を試しやすくなったことで、販売員とのコミュニケーションも取りやすくなったと思います。

内装 画像

「回廊では刻々と変わる太陽の光と、ダイナミックな銀座の変化を、来店するたびに異なる景色として体感いただけます。今後は回廊全体でのアート展なども予定しています」と、武蔵さん

― 奥田さん:商品を自由に手に取っていただける点では、ハンカチーフやアクセサリーのフロアも大きく変わりました。ハンカチーフは以前ケースの中に収まっていたため、販売員はケースを挟んでお客様と対話していました。和光の中でも、「この販売方法のままでいいのか」と課題になっていましたが、リニューアルによってお客様に自由に商品を手に取っていただき、販売員とは横に並んで選んでいただくことが可能になりました。

アクセサリーの引き出しも、“見せるストック”として引き出しを作りました。お客様自ら引き出しを開けていただけるようにしたのは、和光では初の試みです。こうした新しい環境も、販売方法の課題を聞きながら、みんなで一緒に作ったかたちだと言えると思います。

フロアの様子 画像
フロアの様子 画像

自分らしい装いを選ぶ場に

3・4階と他のフロアは、どんなつながりを想定されていますか。

― 武蔵さん:1・2階のウオッチ&ジュエリースクエアが「時」を、地階アーツアンドカルチャーが「文化(和)」を、3・4階のスタイルスクエアが「暮らし(光)」を担い、それぞれが入口となって、日本の美意識やモノづくりの価値をお客様へとつなぐ場所になると考えています。

以前は3階が婦人物、4階が紳士物とくくられていたのを、今回のリニューアルでは、3・4階を合わせてワンフロアと捉え直し、ジェンダーレスにしています。「スタイルスクエア」という名前にも、ファッションを中心とした和光のブランドのなかで、お客様が自分らしいスタイルや装いを組み立てていく場所、という思いを込めました。

これは、2024年に地階が「アーツアンドカルチャー」としてリニューアルした際、「日本ならではの美意識」や「クラフトマンシップ」といったセイコーグループの哲学を、和光として考え直したことがきっかけになっています。

1階と2階のウオッチ&ジュエリーは、グランドセイコーのフラッグシップストアとして、セイコーの聖地とも言える空間を体験いただけるようになっています。他にはない展示スペースもありますし、いろいろなプログラムも実施している場所です。

インタビューの様子 画像

リニューアルを担当する重責について「心配があっても、想定通りうまくいった時の喜びが大きい」「予想外のことが起きても、その都度逡巡しながら向き合うのみ」と話すおふたり

2008年の改修時と比べて、進め方などに変化はありましたか。

― 武蔵さん:2008年の改修ではどうしても建築優位にならざるを得なかったことがたくさんありました。その影響でフロアに制約が出たこともあったのですが、今回は販売スタッフたちの目線と、その先にいるお客様にとっての体験を優先して考えることができました。

窓際の開放で言えば、雛壇に置かれた商品が逆光になり、日焼けするリスクもある一方で、自然光で商品を選べることや、明るく美しい回廊の空間でお買い物が豊かな時間になることを重視できたことは良かったと思っています。

フロアの様子 画像

変わり続けることよりも、「本質」を次の時代へ

今回のリニューアルを通して、大変だったけど誇らしく感じているところを教えてください。

― 武蔵さん:どこか具体的な1箇所というよりも、この場所がこれまで積み重ねてきたことや和光としての文脈が守られたまま、皆さんに新しく見えていることは、非常に嬉しく思っています。

例えば「和光」という名前の意味を考えると、「和」にも「光」にも、さまざまな良い意味があるんです。「和」は日本的であったり調和であったり、また、地階のリニューアルでは木を多く使い、「和み」の空間となりました。そして3・4階は、圧倒的に「光」の空間です。光は、一日の中で刻々と動きを変える、「時」でもあると思います。

この建物が南を向いていて、東から西まで窓が続き、今回それを回廊にしたこと。昔からこの建築が持っている特徴ではありますが、和光として、とても象徴的だと感じています。そのおかげで私たちは、この空間を考える時にも迷いなく選ぶことができました。これはやはり、これまでの経験や積み重ねてきた時間が可能にしてくれていることです。和光にとっては、変わり続けることよりも、次の時代にふさわしい姿に磨き続けることがサステナビリティなのだと考えています。

― 奥田さん:明るさとお客様の体験を考慮して窓を開放しましたが、もしも、一応つけているカーテンが結局閉めっぱなしになるようなことがあったらどうしよう、という心配もありました。もしそうなったら全体がバランスを崩し、不自然になってしまうんじゃないか、と考えていたんです。

しかし実際にはフロアの皆さんが、外が見えることをすごく好意的に受け止めてくれて、カーテンもほぼ開けたままになっています。商品が日焼けしてしまうリスクはありますが、陽が当たる場所の商品と適宜入れ替えるなど、運用でカバーしてくれているようです。この新しく開放的な空間を、みんなで守り、みんなでお客様をお迎えしようという意識が感じられ、個人的にホッとしました。やはり皆さんに受け入れられることは、とても嬉しいです。

インタビューの様子 画像

おふたりにはさらに以下の記事で、1932年の建物を残す手法についても具体的にお聞きしました

建物を残すための工夫はこちら
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