Vol.2初めてのジャズライブの楽しみ方。
六本木の老舗「alfie」で味わった緊張と感動の体験レポート

初めてのジャズライブの楽しみ方。六本木の老舗「alfie」で味わった緊張と感動の体験レポート

Seiko Summer Jazz Camp卒業生らによる「西村大地トリオ」の初ライブを通して、ジャズクラブ「alfie」の予約方法や会場の様子など、初心者がひとりでも楽しめるジャズクラブの魅力を解説します。

セイコーのジャズサイト「Seiko Time&Jazz」を通して、「ジャズって意外と身近なんだ」と思うようになりました。映画や・マンガ、ふと入ったお店のBGMなど、意識し始めたら案外身近な範囲でもジャズに触れる機会は多いもの。

前回の記事で基礎知識を学び、さらに興味が高まっていたところに、Seiko Summer Jazz Camp卒業生によるライブ情報を発見しました。まだジャズに詳しくはないけど、これは行ってみたいと思い、早速ジャズクラブへ。少し緊張気味に扉を開けた、初めてのジャズクラブ体験をレポートします。

カジュアルでOK。予約で伝える3つのこと

向かったのは、六本木のジャズクラブ「alfie(アルフィー)」。1980年の創業以来、数多くのミュージシャンたちがステージに上がり続ける老舗のジャズクラブです。今回は、Seiko Summer Jazz Campの卒業生である西村大地さんと蓼川(たでかわ)祐紀さんが、續木晴日(つづき・はるひ)さんと一緒に組んだ「西村大地トリオ」の初ライブ。ジャズの世界では、ミュージシャンが自らの名前を冠にし、共演者やセットリストを企画するライブを「リーダーライブ」と呼ぶそうで、19歳という若さで実現した西村さんに多くのジャズファンも注目しています。alfieには事前に電話して、この日の予約を入れておきました。

alfieに入店する様子

エレベーターで5階へ。18時45分に開店すると続々と予約客で埋まっていく

予約する際に電話で聞かれることは、名前・人数・電話番号の3点のみ。当日は、入店後に名前を伝えるだけで、スムーズにカウンター席へ案内してもらえました。ひとりでしたが、店内を見渡すと案外おひとりで来ている方も少なくありません。

店内の雰囲気はしっとりと落ち着いているものの、服装は至ってカジュアルな方ばかりで安心しました。あえて例えるなら“落ち着いたカフェバー“、あるいは、“普段着で行けるビストロ”といった感じでしょうか。

客席とステージの距離がとても近く、自然とライブへの期待が高まります。来るまでは敷居が高そうなイメージでしたが、店員さんたちも優しく教えてくださり、全く緊張せずに済みました。

alfieの店内

ミュージックチャージと呼ばれる料金は出演者によって異なる。また、alfieは「2オーダー制」なので、ミュージックチャージと別にドリンクやフードをお願いし、帰りに精算するシステム

カクテルを作っている様子

カクテルをはじめとする豊富なドリンクメニューには、ハーブティーやクランベリージュースといったノンアルコールも充実。フード類も多数あり、ライブ中のオーダーも可能

生演奏でしか味わえない感覚

ふとBGMが止まったと思ったら、開演時間のサインです。ミュージシャンの3人が目の前を通ってステージへ向かう様子に、客席の熱量が上がります。拍手で迎えられた西村さんがすっとトランペットに手を伸ばし、まずはそのままソロ演奏。続く2曲目では右手にトランペット、左手でピアノという演奏に、思わず目を見張りました。後でお店のスタッフの方に伺ったところ、これはジャズでも一般的な奏法ではなく、西村さん独自のスタイルとのこと。初めてのジャズクラブで、いきなりこんな演奏に出会えるとは思っていませんでした。蓼川さんのベースと續木さんのドラムが重なり、冒頭からスピード感ある演奏に一気に引き込まれました。

演奏中、3人がアイコンタクトをしていることに気がつき、「あ、これが即興演奏か」と、少し前のめりになった自分がいました。誰かの演奏に続き、次の人は前のメロディにアレンジを加えて、さらに次のプレーヤーへ。まるで3人が対話しているような演奏の連鎖に感動を覚えました。しかも、この近距離。ライブだからこそ味わえる醍醐味が満載です。

西村トリオが演奏している様子

西村さん(写真左/ トランペット)が以前所属していた「中高生ビッグバンド」の先輩にあたる蓼川さん(中央/ ベース)と、東京芸術大学附属音楽高校の後輩である續木さん(ドラム)による「西村大地トリオ」

演奏の合間のMCでは、曲に関することを紹介してくれたので、それぞれの曲の背景を想像することができました。西村さんが作曲したオリジナル曲の場合は、どんな心境の時にできた曲なのか、スタンダードな曲の時には「おなじみの曲」と説明してくれたことで、「そうか、これって有名な曲なんだ」と新たな知識を得ることも。

途中、蓼川さんと續木さんにもマイクが渡り、それぞれの出会いや、この日の意気込みなどを話す様子は、演奏中とは違ったおだやかな人柄を覗かせていました。

MCをしている西村さん

中高生ビッグバンドでは蓼川さんのベースが「かっこよくて憧れていた」と話す西村さんに対し、「初めて知った」と応える蓼川さん。優しさのある3名のやりとりに、会場も和かな雰囲気に

予約なしで来店する方もいたため、気づくと会場は満席になっていました。客席を見渡すと、追加のドリンクやフードを頼んだり、一緒に来た人と楽しそうに笑いあっていたり、微動だにせず演奏に見入っている人など、それぞれの過ごし方をしている様子が見られます。

観客側はいわば、同じ時間に、同じ演奏を聞いて感動を共有する者同士。特に、迫力のあるソロ演奏や即興の後は、会場が一体となって自然と盛大な拍手が起こります。これは観客とステージの間で交わされる、演奏と拍手による対話のよう。ミュージシャン同士が即興演奏の対話を重ねるだけでなく、観客との繋がりが生まれるのも、ジャズクラブの魅力なのかもしれません。初めてながらも、ジャズライブの魅力が少し分かった気がしました。

拍手を送るお客さん

アンコールも含めて、最後まで大満足の素晴らしいライブでした

教えて、もっとライブを楽しむコツ

西村さんは2025年、蓼川さんは2023年の、Seiko Summer Jazz Camp参加者でした。さらにこの日は偶然にも、西村さんと同じ2025年に参加したトランペッターの龍野(りゅうの)日菜子さんがalfieのスタッフとして勤務していたため、久しぶりの再会を果たしていました。そこで龍野さんと西村さんに、ジャズクラブ店員と演者という立場から見た「ビギナーがジャズクラブを楽しむポイント」をお聞きしました。

龍野さん「ジャズにどれだけ詳しいかというよりも、聴いていて楽しいと感じる音楽が正解だと思っています。私自身は小学生のとき、地元・広島で日野皓正さんの演奏を聞き、ジャズトランペッターになりたいと思いました。その頃は当然、ジャズの決まり事など全然わからずに聴いていたんですけど、でもとっても楽しかったです。演奏する側になる時も、ジャズの知識量に関係なく、いろんな人に楽しんでもらえるような演奏を届けたいと思っています。

alfieのステージに出演するミュージシャンたちはみんな素晴らしい方々ばかりです。ジャズクラブが初めてでも常連でも、必ず楽しめるライブを届けてくれています。おひとり様でも全く問題ありません。むしろカウンター席は一際ジャズクラブ感が味わえてお得かも。どうぞ気軽にalfieへ来ていただけたら嬉しいです」

店員の龍野さん

alfieの魅力を聞くと「オーナーの容子ママです」と即答の龍野さん。「最初に来たのは、島裕介さんのライブでシットイン(飛び込み参加)で演奏に入らせてもらった時。すぐに容子ママのファンになって、バイトさせてくださいって頼みました。とても素敵な方なので、皆さんにもぜひママに会って欲しいです」

西村さん「ジャズに関する事前知識がハードルに感じることもあるのかもしれませんが、例えば、その曲が作られた時代背景とか作曲家の特徴とか、本当にほんのちょっとの情報を知るだけで、同じ曲がさらに楽しめるようになります。そうやって聞いたことがある曲が増えて、知ってる曲がライブで演奏されたら、もっと楽しく聴けると思うんです。その雰囲気が伝わってくると、演奏する僕らも嬉しくなります。

ジャズのライブは本当にその場で作り上げていくものなので、僕自身も本番でどんな演奏になるのか、始まってみないとわかりません。アドリブ(即興演奏)はそれぞれの演奏同士が絶妙に絡んでいるので、きっと聴いているうちに分かるようになると思います。そういう楽しみを見つけてもらえたら、演奏する僕らもすごく嬉しいし、もっと盛り上がる演奏をしたくなるんです。ぜひライブでしか見ることができないコール&レスポンスを楽しんでください」

西村さん、蓼川さん、續木さん

alfieでは、国内外のジャズミュージシャンによるライブが連日開催されています。Seiko Summer Jazz Camp関連のライブ情報はこちらをご覧ください

行くまでは緊張していましたが、思い切って行ってみて良かったです。

Seiko Summer Jazz Camp関連のライブ情報は、以下のスケジュールからチェックできます。皆さんもぜひ、ジャズクラブで楽しく音楽を味わってみてみてはいかがでしょうか?