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文 清水麻衣子
写真 中川 司

2021年3月11日14時46分──今年も銀座・和光の時計塔から、人々の魂を浄化するような鎮魂の鐘が鳴り響きました。人々は足を止め、ショーウインドウに設置された時計のディスプレイを前に黙祷を捧げます。震災から10年の節目という今年、違っていたことは、鎮魂の鐘の後に続けて「未来への希望の鐘」が鳴り響いたこと。時計の文字盤に光が差し、止まっていた針が動き出したのです。そう、我々はあの時を忘れず、前に進む! そんな強いメッセージが込められた演出に、多くの人が足を止め、心を一つにしました。

銀座・和光のショーウィンドウでの特別ディスプレイ

10年の集大成は武道館で

セイコーが震災直後から被災者の心に寄り添い、支援を続けてきた「“わ”で奏でる東日本応援コンサート」(以降、“わ”のコンサート)も今年で10年。「音楽で支援ができないか」という服部CEOの提案で、ジャズピアニストの故・前田憲男さんと、その想いに賛同したアーティストの方々が、東北3県の被災地を回り、地元の人たちと一緒に作り上げるスタイルのコンサートです。2014年からは東北のみならず、東京でもスタート。10年目の節目となる2021年3月11日は、集大成にふさわしく、武道館で開催。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、無観客で、そして、オンラインで全国に生配信されました。

トップバッターで登場したのは小林沙羅さん。「えがおの花」を歌い上げると、会場の空気は一変。すみずみまで響き渡るシルキーな歌声が、人々の心をやさしく包み込むように癒やしていきます。

“わ”で奏でる東日本応援コンサート2021 in 日本武道館

どんなにつらいことがあっても、みんなで協力しながら、前へ

そして紹介されたのが、多賀城中学校の生徒400名が参加した作詞プロジェクト。2018年に宮城県多賀城市で行われた“わ”のコンサートが縁で実現し、服部CEOが作曲した曲に歌詞をつけるというものです。
多くの素晴らしい歌詞が寄せられた中から最優秀賞に選ばれたのは、作詞当時多賀城中学3年生だった石川愛恵さん(現在、高校1年生)の「希望と絆」。編曲をクリヤ・マコトさんが担当、阿木耀子さんが歌詞を整えてくれました。
震災当時小学校へ上がる年齢だった石川さんには、震災の記憶はほとんどないそうですが、「今までの多賀城の街ではなくなってしまったんだよ」と伝え聞いているそうです。

石川愛恵さん 写真

「希望と絆」をサーカスとセイコー社員で結成されたAlways四丁目合唱団が歌唱、東京フィルハーモニーが演奏で盛り上げた

「希望と絆」という曲は、どんな想いを込めて作詞したのですか?

(石川さん)どんなことがあっても希望を忘れず、みんなで協力して、がんばってもらいたいという願いを込めて作りました。リズムに合わせて歌詞を当てはめていくのが想像以上に難しかったけど、こんなにすごい完成度になるとは思わなかったので、びっくりしています。音楽は人の心も動かせるすごいものなんだと感じました。

石川愛恵さん 写真

さきほどは銀座・和光の鎮魂の鐘を聴きながら黙祷を捧げていましたね。地元に帰ったら、お友達に今日のことをどんな風に伝えますか?

(石川さん)地元では3.11になると震災のことを話したりするんですが、東北だけのことだと思っていました。10年も経っているにも関わらず、東京や、遠く離れた場所で、こうして多くの人が東北に想いを寄せてくれているっていうことに驚いたし、感謝しかありません。友達にもすべてがすごかったよ! と伝えたいです。

石川愛恵さん 写真

音楽がつなぐ、人々のこころ

コンサートの応援団長に就任した加山雄三さんからメッセージが届き、ご自身で作曲した“わ”の応援ソング「時を抱きしめて」のサプライズプレゼントがあったり、この10年被災地支援に尽力されてきた渡辺真知子さん、大橋純子さん、サーカスの皆さんが盛り上げたりと、武道館という神聖なる場所で、被災地に心を寄せ、パワーを届けるような力強いパフォーマンスの数々。

“わ”で奏でる東日本応援コンサート2021 in 日本武道館

(写真下)”わ”の応援ソング「時を抱きしめて」を熱唱するサーカス、渡辺真知子、大橋純子、小林沙羅、サラ・オレイン(ヴァイオリン)

震災時、芸大受験の合格発表の2日前だったという茨城県出身のサックスプレイヤー・上野耕平さんと、“わ”のコンサート音楽監修の宮川彬良さんが、東京フィルハーモニー交響楽団と繰り広げたNHK連続テレビ小説「ひよっこ」の協奏曲では、カラスの鳴き声に合わせてユーモアあふれるマペットが登場し、皆を笑顔にする演出。辻󠄀井伸行さんによる渾身のピアノ演奏では、オンラインで視聴した人々の心にも、きっとその想いが伝わったはずです。

“わ”で奏でる東日本応援コンサート2021 in 日本武道館

ステージ上のスクリーンでは、全国から寄せられた10年の復興と未来を応援するメッセージ。「私たちはつながっている」「独りじゃない」──そんな力強い言葉の数々が、短期間で180件も寄せられたそうです。そして、司会の宮本隆治さんからの「オンラインで視聴している皆さんも一緒に歌いましょう」というアナウンスでラストを飾ったのは、出演者全員による「花は咲く」の大合唱。“わ”のコンサートが被災地の方々にとって、少しでも力になっていたらと願うばかりです。

2011希望の“わ”合唱団

(写真上)全国から募った「2011希望の“わ”合唱団」には100件を超える動画が集まり、(写真下)ステージ上では希望の“わ”を奏でたいと手を挙げた142人の一般参加の合唱団の皆さんが、心をひとつに「上を向いて歩こう」を合唱した

終わりの見えない旅をこれからも続けていく

この10年、どのような10年でしたか。

(服部CEO)最初はどうやったらいいのかも、どこへ行ったらいいのかもわからずで、“わ”のコンサート1回目は、震災から5か月というときでした。だんだん輪が広がって、賛同してくださるミュージシャンや支援者も増えていきました。故・前田先生は寡黙な方で、あまり多くは語られなかったですが、いつも音楽の遊び心を被災地の方々に伝えていましたね。音楽はいかに気持ちが安らぎ、前向きになれるか、ということを伝えたかったんじゃないかと思います。

前田憲男チャリティーコンサート ~絆~

2011年8月23日に行われた「前田憲男チャリティーコンサート ~絆~」

写真 セイコーホールディングス

これまでの10年とこれからの10年では、復興の意味合いも変わってくると思います。今後“わ”のコンサートでは、どういう支援を続けていかれますか? やってみたいことなどありますか?

(服部CEO)復興も地域差がありますからね。ベースは同じですが、まずは継続することですね。だんだん街が戻ってくると思うので、明るさや夢をもっと皆さんと共有していきたいです。2020年に多賀城中学校の学生とお話できたのは、非常に有意義だったので、今後コンサートで行ったときには、皆さんと握手をしたり、お話する機会がたくさんあるといいなと思います。

作詞プロジェクトが始まった多賀城中学校

2020年2月 作詞プロジェクトが始まった多賀城中学校の学生たちと交流を深めた

最後に、“わ”のコンサートが必要でなくなるとしたら、それは被災地がどういう状態になったときでしょうか?

(服部CEO)まったく新しい街に生まれ変わったときでしょうか。おそらく30年くらいはかかるのでは? 私は今70歳ですから、100歳までは生きられないと思いますので、「続けてよ」と皆さんに遺言して(笑)、そのときは私も天国から被災地の皆さんに寄り添って、一緒に歌ってますよ、きっと。

服部CEO 写真

あの時をわすれずに、時計の針が進みはじめた

コロナ禍で無観客開催となってしまった“わ”のコンサートに少し悔しさを滲ませていた服部CEOでしたが、10年の集大成を達成できたことは、これからの未来へ進む原動力となったのではないでしょうか。「復興は道半ば」と語る服部CEOの言葉からは、来年も再来年もその先も、音楽で心をひとつにし、東北の方々に寄り添い続ける堅い決意を感じました。セイコーはこれからも音楽で東日本を応援していきます。支援活動の「輪」、被災者と支援者で手を取り合う「輪」、将来への希望や思いをつなぐ「輪」、皆で一丸となって復興に取り組む調和の「和」、元気な日本の「和」……一緒に“わ”の絆を広げていきましょう。

銀座・和光のショーウィンドウでの特別ディスプレイ
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