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文 富澤えいち
写真 近藤 篤

「あの震災の日から8年──
14時46分より1分間、時計塔のチャイムを鳴らし
特別な時を皆さまにお知らせします。」

ショーウインドウに貼られた桜の花びらがプリントされた台紙 写真

そう書かれた看板が掲げられたショーウインドウには、桜の花びらがプリントされた台紙が、満開を思わせるように貼られていた。その台紙の1枚1枚には、被災地の、あるいは各地の子どもたちが被災地に向けて、想いを綴ったメッセージが記されていた。

そこは銀座4丁目の交差点、日本の商業発展を見守り、ビジュアル文化の発信拠点を担ってきたと言っても過言ではない、銀座・和光のショーウインドウの前だった。

銀座・和光の時計台の周りに集まる人々 写真

写真 銀座・和光

その時が訪れると、道行く人たちは立ち止まり、銀座・和光の時計塔を見上げながら、思い思いの姿で11回の鐘の音に耳を傾けた。最後に短く2つ、鐘が祈りの時の終わりを告げると、あっという間にその繁華街中心の交差点は、いつもと変わらぬ喧騒に包まれていった。

ライトアップされたショーウインドウ 写真

写真 銀座・和光

そして日も暮れるころ、ショーウインドウにはモニターが設置され、そこには東京・渋谷のオーチャードホールのステージが浮かび上がっていた。

2019年3月11日、そのステージでは「“わ”で奏でる東日本応援コンサート」が開催されていた。

「“わ”で奏でる東日本応援コンサート」は、2011年の“その日”から1ヵ月も経たないころ、セイコーホールディングス株式会社グループCEO服部真二の呼びかけで始まった、音楽で支援の輪を広げようというプロジェクトのコンサートだ。

このプロジェクトは、年間を通じて被災地を含めた日本各地で継続して開催。通算32回目となる8年目の“この日”のコンサートは、2,000席超のキャパシティをもった会場が用意された。そのステージで、改めて東北を応援する“志”をもつ人々が集まってエールを送ろうというのが、当日のアウトラインになる。

アカペラで「You Raise Me Up」を熱唱するサラ・オレインさん 写真

写真 セイコーホールディングス

開演とともにステージに登場したのは、サラ・オレインさん。オーストラリアから日本へと渡り、3オクターブの美声とバイオリンの音色で癒やしのサウンドを届けてくれることで注目を浴びる彼女が、アカペラで「You Raise Me Up」を熱唱。

サラ・オレインさん 写真

サラ・オレインさん「アナタのおかげでワタシは顔を上げることができる──という内容の歌。人と人のつながりが大切だという想いを込めて、この歌を選びました。“あの日”から8年が経ちましたが、被災地を取り巻く状況が良い方向へ進んでいるとは言えない部分もある、というのが正直な感想です。一方で、“あの日”に日本にいた私だからこそ、伝えられることがあるんじゃないか……。音楽を通じて少しでも元気づけられるエネルギーを届けたいという想いは、8年前もいまも変わっていません」

オープニング・セレモニーと呼ぶに相応しいサラ・オレインのパフォーマンスが終わると、客席の視線はステージのスクリーンに注がれた。そこには先述の、14時46分に銀座・和光の時計塔から“鎮魂と希望の鐘”が鳴らされたようすを撮影した動画が映し出され、しばし会場は“祈りの時”に包まれた。

そのあとは、このプロジェクトの“被災地に日常を届ける”という大きな目的を具現するように、にぎやかなステージが繰り広げられていった。

コーラス・グループのサーカス 写真

写真 セイコーホールディングス

第1部を締め括ったのは、コーラス・グループのサーカス。

「“わ”で奏でる東日本応援コンサート」の立ち上げから関わり、まさに“手弁当”でこのプロジェクトの音楽面を支え、2018年11月25日に逝去した前田憲男氏。その彼に41年前のデビューを後押しされたサーカスが、前田憲男氏の編曲で大ヒットとなった「Mr. サマータイム」で故人を偲び、「家族写真」で会場と被災地、そして日本各地との想いを“繋ぐ”。

左から吉村勇一さん、叶正子さん、叶ありささん、叶高さん 写真

叶正子さん「『家族写真』を被災地で歌ったことを思い出しながら歌いました。ステージからも客席で目頭を押さえている方がいるのが見えて……。改めてこのプロジェクトを続ける大切さを感じたステージでした」

叶ありささん「私もお客さまが涙を浮かべているのが見えました。その涙の裏側にはきっと、大事にしたい人のぬくもりや想い出がある。それぞれの特別な感情を共有できて、貴重な経験になりました」

吉村勇一さん「僕も途中でウルッとしてしまいました……。8年目のこの夜にそうした想いが湧いてきたことを、9年目に向けても伝え続けていくことが大切だということを、改めて実感することができた時間でしたね」

叶高さん「今年も東北を応援するステージに立つ予定なので、一緒に手を取り合って声を掛け合えるシーンをたくさん作れたらと思っています。音楽には、人の心に感動を与える力がある。それはシンプルなメロディであったり、美しい言葉だったりするわけですけれど、僕たちはそこにハーモニーという“もうひとつの魔法”をかけることができるんです。日々暮らしていくなかで、いろいろな人たちが奏でるハーモニー、いろいろな出来事と巡り会うことによるハーモニーが、新しい時代や世界を創っていく。そこに僕たちのハーモニーを加えてもらうことで、みなさんの気持ちが少しでもひとつになるお手伝いができたらと思っています」

前田憲男氏の遺志を継ぐウィンドブレイカーズのビッグバンド 写真

写真 セイコーホールディングス

前田憲男氏の遺志を継ぐウィンドブレイカーズのビッグバンド、さらにストリングスを加えた豪華な編成をバックに、昭和から平成の歌謡界を賑わせたシンガーたちが次々に登場して、ステージを彩ってくれた。

「あの素晴しい愛をもう一度」を、ステージ上の全員と客席が一体となって合唱 写真

写真 セイコーホールディングス

第2部のエンディングは、プロジェクトの実行委員長である服部CEOとSeikoダンサーズによるRock'n' Roll Medleyのあと、ゲストを呼び込んで「あの素晴しい愛をもう一度」を、ステージ上の全員と客席が一体となって合唱し、大団円を迎えた。

服部克久氏と服部真二CEO 写真

ステージを降りた服部CEOと、前田憲男氏の盟友として当夜のステージを見守った作・編曲家の服部克久氏が、次のようにプログラムを振り返った。

服部克久氏「こんなにみなさんに集まっていただいて、前田先生もお喜びになっているでしょうね」

服部CEO「きょう、この場に前田先生がいらっしゃらないのは本当に残念でしたけれど、こうしてこのプロジェクトを続けることができてよかったと思っています」

服部克久氏「実は私も、福島のしゃくなげ大使を引き受けたりして、少しでも復興の手助けができればといつも気にかけているんですけれど、今回はいい機会をいただいたと思っています。ぜひともお役に立ちたいと思って、今日はまいりました」

服部CEO「ありがとうございます。もう来年の会場も取ってありますので、この活動の熱を冷まさないように、続けていきたいと思っています。コンサートのラストにはみんなで歌える歌を用意するなど工夫して、次回に臨みたいですね」

服部克久氏「もう、やめられないですね(笑)」

服部CEO「はい(笑)」

9年目に向かって、さらなる一歩を踏み出した「“わ”で奏でる東日本応援コンサート」というプロジェクト。

蝉の鳴き声が虫の音に変わる初秋のころ、今年も東北各地でこれまでのようにコンサートを開催する予定。

そしてまた、各地で“日常であることの大切さ”を届けるための“想い”を繋いでいく──。

2019年度 コンサート情報

宮城県松島町

開催日

2019年9月8日(日)

開催場所

松島文化観光交流館「アトレ・るホール」

福島県相馬市

開催日

2019年9月22日(日)

開催場所

相馬市民会館大ホール

岩手県遠野市

開催日

2019年10月5日(土)

開催場所

遠野市民センター

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