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文 富澤えいち
写真 “わ”で奏でる東日本応援コンサート実行委員会

日常が失われた被災地に日常を届ける ~“わ”で奏でる東日本応援コンサートに向けて~

2019.02.27

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2011年3月11日、宮城県沖を震源とする日本の観測史上最大規模の地震が発生した。時間とともに人々の関心が薄れるなかで、引き続き支援を訴えかけることの重要性も問われているのが、8年を経た現状と言えるだろう。

そうしたなかで、震災直後から活動を始め、全国に被災地応援を発信し続けている音楽のイベントがある。その名は「“わ”で奏でる東日本応援コンサート」。セイコーグループ株式会社服部真二グループCEOが実行委員長を務めるこの組織の運営に立ち上げから関わり、来たる3月11日に渋谷オーチャード・ホールで開催される「“わ”で奏でる東日本応援コンサート2019 in 東京」の企画・制作にも携わっている株式会社バルケニックの池田和一郎氏に活動の経緯をうかがいながら、被災地の支援について考えてみたい。

「前田憲男チャリティーコンサート ~絆~」写真
2011年8月23日に行われたイベント「前田憲男チャリティーコンサート ~絆~」

理屈ではなく情熱で動き始めた第一歩

「前田さん※にね、なぜこういうことやろうと思ったんですかって聞いたら、私は日常を持って行きたい、って言ったの。こんなすごいことはないよ。いちいち理屈こねて、支援はこうしなければいけないとか、音楽ならこうすべきだとか、そんな野暮ったい時代は終わってるんじゃないかと彼は思ってたわけ。そんなレベルじゃないよ、いまの時代って。もっと感覚的だよって。だから、四の五の考える前に、動くことができたんだと思うんですよ」

※ジャズピアニストでありポピュラー音楽界のレジェンド 前田憲男氏。“わ”で奏でる東日本応援コンサートでは音楽監修を務める

このプロジェクトは、震災発生から数週間を経ずにスタートしていた。セイコーグループでは、先行して物資支援の計画を進めていたが、服部CEOの「歌で被災地を励ますことができないか」というひと声から、モノだけでなくコトへと支援の幅を広げることになる。その“実行部隊の仕切り役”として打診されたのが、池田和一郎氏だった。

前田憲男氏直筆の貴重な譜面 写真
前田憲男氏直筆の貴重な譜面

“わ”というプロジェクト名に込めた支援の意味と想い

「“支援”という名で同じようなことをやっている会社はいっぱいあった。でも、セイコーグループがやるんだったらそれじゃダメだって、服部CEOも僕も思っていたんですよ。被災地に行ってなにかをやったり置いてくるだけじゃなくて、被災地の人と一緒になにかをやることが必要なんじゃないか、って。ただ、それは簡単なことじゃなかったんだけどね」

プロジェクトは、支援活動の“輪”、被災者と支援者で手を取り合うようすの“輪”、将来への希望や想いをつなぐ“輪”、一丸となって復興に取り組む調和の“和”、元気な日本の“和”──を理念に掲げ、それらを象徴する“わ”を名称に冠した。

上から2014年、2015年、2016年、2018年の被災者の思いと支援者の応援のメッセージ 写真
上から2014年、2015年、2016年、2018年の被災者の思いと支援者の応援のメッセージ

第1号イベントは、2011年4月2日に伊豆高原で開催。集まったペンションのオーナーたちは、同じ沿岸部で生活する者の想いを込めて寄せ書きを作成して、100枚近くのメッセージが被災地へ届けられることになった。この活動は現在も全国各地のイベント開催地で行なわれ、そのメッセージが記されたカードの総数は5,000枚を超えている。

“希望のさくら”をイメージしたさくらカード 写真
被災者と支援者をつなぐメッセージとして“希望のさくら”をイメージしたさくらカード

前田憲男氏が語った“日常を持って行く”の意味

「このプロジェクトは“被災地の人と一緒に”が重要だったから、バンドはその地元で組むことにしたんですよ。そう、現地調達。一生の想い出にしてもらおうと思って、一緒に練習しましょうって集まってもらうことにした。

岩手県宮古市に行ったときには1,200席の会場だったけど、ステージに250人も上がったんですよ。吹奏楽部やらブラスバンドやらの子どもたちが渡辺真知子さんのバックを務めることになったからなんだけど、それを前田さんに相談したら、俺がみんなの譜面を書くよ、って言ってすべてのパートを1つずつ書いて、練習してもらったんです」

宮古で開催された“わ”で奏でる東日本応援コンサート in 宮古 写真
地元の中学・高校吹奏楽部の皆さんが参加した2015年に宮古で開催された“わ”で奏でる東日本応援コンサート in 宮古

音楽による被災地支援プロジェクトの“バンマス”を任されたのは、後にSeiko Summer Jazz Campのチェアマンも務めることになるジャズ界&日本ポピュラー音楽の重鎮、前田憲男氏だった。

前田憲男氏がこのプロジェクトを引き受けるときに語った「日常を(被災地に)持って行きたい」という言葉には、音楽を“癒やしの道具”として使うのではなく、音楽が奏でられる場としての“日常”こそが被災地を支援するきっかけになり得るものだという、音楽で日本の戦後を切り拓いてきたと言っても過言ではない第一人者ならではの信念があったに違いない。

「前田さん、無愛想だからね。昔から他人に対してヘイコラすることがなく、いつもブスーッとしてたでしょ(笑)。でもね、その内側では、すごく熱いものをもった人だった。まぁ、不器用だったのかもしれないけれど、それが天才の生き方だったんだろうね」

ピアノを演奏する前田憲男氏 写真

“日常”であるからこそコンサートは今年も続く

“わ”で奏でる東日本応援コンサートのキーパーソンだった前田憲男氏は、2018年11月25日に惜しまれて逝ってしまった。

しかし,彼がこのプロジェクトに注いでいた“熱さ”はそこで途絶えることなく、当たり前の日々が続く“日常”のように、2019年3月11日も渋谷オーチャード・ホールで開催されるはずだ。

「前田さんが言っていた“日常”って、実はすごく大変なことなんですよ。当たり前の日々を当たり前に送るって、普通なら意識しないじゃないですか。でも、いったんその当たり前を失ってしまうと、取り戻すことがどれほど大変かがわかる。だからこそね、僕らは前田さんがいなくなっても、いつもどおりにこのプロジェクトを続けていくだけ。それが“当たり前”であり、被災地を応援するための“日常”を届けるという活動なんだからね」

上から岩手県釜石市、福島県喜多方市、宮城県多賀城市の3ヶ所で開催された「“わ”で奏でる東日本応援コンサート2018」の模様 写真
上から岩手県釜石市、福島県喜多方市、宮城県多賀城市の3ヶ所で開催された「“わ”で奏でる東日本応援コンサート2018」の模様

東日本大震災から8年を迎える今年、「“わ”で奏でる東日本応援コンサート 2019 in 東京」が、3月11日(月)にBunkamuraオーチャードホールで開催される。前田憲男の遺志を継ぐ彼のパーマネント・バンド“ウィンドブレイカーズ”を含めたビッグバンドを中心に、東日本応援コンサートの支援アーティストである渡辺真知子、サーカス、辛島美登里のほか、五輪真弓、タイムファイブ、サラ・オレインといった豪華ゲストも登場。

特別な日の特別なコンサートではなく、自分の日常の一コマとしての“応援”を送るきっかけとして、「“わ”で奏でる東日本応援コンサート 2019 in 東京」を体験しに来てほしい。

“わ”で奏でる東日本応援コンサート2019 in 東京

※本公演のチケットは既に完売しております。

日時

2019年3月11日(月)
開場-18:00 開演-18:30

会場

Bunkamuraオーチャードホール

出演

サラ・オレイン/ウインドブレイカーズ/東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団弦楽アンサンブル/五輪真弓/タイムファイブ/渡辺真知子/サーカス/辛島美登里/山口マリー/くるみee
司会 宮本隆治

主催

セイコーグループ株式会社

共催

株式会社バルケニック

企画・制作

“わ”で奏でる東日本応援コンサート実行委員会 実行委員長 服部真二

本公演に関するお問い合わせ: 株式会社バルケニック

TEL

03-3470-1155 (受付時間:平日12~18時)

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