贈り繋ぎたいものを問う。WAKO Sustainability Month、3年目の深化

  • #
  • #

2025年7月17日(水)から8月20日(火)まで、銀座にある和光では「WAKO Sustainability Month」が開催されています。3回目となる今年は「WAKO SDGs Month」から名称を改め、より深く持続可能性の本質に向き合う企画へと進化しました。和光が育んできた循環を、次代に手渡していきたい。そんな思いが「GOOD LOOP」というキーワードに込められています。
2025年は「ひびき、ひとつずつ、次代へ」をテーマに掲げ、中央ウインドウをはじめとする館内各所にて、和光らしいサステナビリティのあり方を、五感で感じ取れる空間になっています。セイコーグループでウインドウデザインを統括する武蔵淳(むさし・じゅん)さんを訪ね、WAKO Sustainability Monthに込めた想いを伺いました。

未来を見据えた名称変更。和光にとってのサステナブルとは

WAKO Sustainability Monthはどのようなイベント月間なのでしょうか。

WAKO Sustainability Monthは、2年前にWAKO SDGs Monthとして始まったものです。当初はSDGsに関する私たちの取り組みをお伝えする目的でしたが、今年から「2030年のゴールよりも、さらに先の未来を考えたい」という想いで、名称を変更しました。

セイコーグループのなかでも和光は、時計の他に、ジュエリーやファッション、ライフスタイル、フードといったさまざまなお品を扱っています。誰かへの贈りものや、ご自分に向けた贈りものとして選ばれることも多く、我々はこうしたお品を末長く、ご愛用いただきたいと考えています。WAKO Sustainability Monthの会期中は、私たちがどんな想いをもって、どのようにサステナビリティに関する活動をしているのか、ご来店いただいたお客様が自然と体感できることを目指して企画しています。

「音」と「動き」で伝える中央ウインドウ

今年2025年の内容を、教えてください。

2025年のテーマは「ひびき、ひとつずつ、次代へ」です。和光はもともと、未来へ受け継いでいきたい価値として、「日本の美意識」「クラフトマンシップ」「サステナビリティ」という3つを大切にしています。今、私たちが将来世代のために出来ることは、和光が大切にしてきた価値観を、現代の感性で包み、未来へ手渡す”贈りもの”なのではないかと考えました。そこで着目したのが、音です。

贈りものって、込めた想いがひびき、相手からも想いが返ってくると嬉しいですよね。まるで「こだま」のように、音が響くと、そこに音が重なり、対話のように続いていくことをイメージしました。何かを贈った時の感情が、余韻のように記憶として心に留まり、また別の贈りものの機会へと広がっていく。そうした一瞬の高まりと、その後にも続く余韻が繰り返されることこそ、贈りものの本質なのではないでしょうか。
そこで会期中、中央ウインドウでは優雅に揺れるリボンのインスタレーションで、贈りものを開く高揚感を表現しました。60本のループ状になったゴールドのリボンは、実際に和光の包装に使用しているものです。

中央ウインドウ 画像

音とともに揺らめくリボンの動きはかわいらしくもあり、心の高なりや、感情の動きを重ねていただけると思います。また毎正時には時計塔のチャイムに呼応して、60本のリボンが動き出します。時を告げる音を可視化した、エレガントな美しさをご覧いただければ嬉しいです。
時計塔のチャイムは銀座の街中で反響し、実はかなり遠くまで響いています。賑やかな銀座ですので、耳を傾けている方ばかりではないと思いますが、時計塔は昔から、銀座の街に時を告げる音の贈りものを続けてきました。

リボン 画像

合わせて中央ウインドウの他に、店内一階にも、こだまのような音を楽しんでいただける場を用意しました。リボンと共に放たれた、たくさんの音が、銀座に一斉に返ってくる。そんなイメージで、全国各地の風鈴を集めました。和光とご縁の深い石川県の九谷焼や、岩手県の南部鉄器の他、全国から金属、陶器、ガラスなど、さまざまな伝統手工芸品である風鈴60個をご覧いただけます。音の違いを楽しみながら、涼をお届けしたいと思います。

風鈴 画像
風鈴 画像

またお買い物時に、「手提げ袋は使わない」とお申し出いただきやすいよう、ご案内のサインを掲示しています。和光のスタッフからお伺いするわけではありませんので、ご入用の方はお使いいただけますし、ご不要の方も自然とお申し出いただけると思います。

そして夜間には、時計塔のライトアップがお楽しみいただけます。セイコーグループではこれまで段階的にエネルギー転換を進めており、現在ではセイコーハウスおよび和光全館の電力が再生可能エネルギー100%に切り替わりました。WAKO Sustainability Month会期中は毎日22時まで、通常の白色光ではなく、CO2を排出しない再エネ電力を象徴したグリーンのライトアップをご覧いただけます。

本質を問う。和光が辿った3年間とこれから

この3年間を振り返って思うことや、次代に繋げたいことなどについて教えていただけますか。

1年目は、和光の以前からの取り組みをアルファベット26個のキーワードでご紹介しました。もともと実践してきていることを整理した内容で、急に始めた取り組みを声高にお伝えしたわけではありません。大事なことは、必要なアップデートをしながらも、ずっとやり続けることにあると思います。

元々セイコーグループは、創業者・服部金太郎による「服部時計修繕所」から始まっています。時計というプロダクト自体、電力は小さく、長く使えるという点でサステナブルなものです。生活の場面において美意識を持ち、必要なものを作り続ける。私たちのものづくりは、やはり大事にしている「美意識」「クラフトマンシップ」「サステナビリティ」の3つに帰着すると思います。

和光 画像

2年目は、元旦に能登半島で大きな震災があった年でした。和光は石川県の作家さんたちとご縁が多いため、その方々の作品と想いや現状を紹介したいと考えて、石川・能登と銀座の循環(GOOD LOOP)をご紹介しました。翌年1月にはセイコーハウス6階ホールでも美術展を開催し、今後も毎年継続することが決まっています。

3年目の今年がいちばん難しかったですね。普段から私たちが扱い、気持ちを込めて行っていることが、本質的にサステナブルな”贈りもの”であると気づいてもらうために、どう見せるか。半年くらいみんなで考えました。
贈りものが、未来の自分宛てであることは、今を生きる私たちみんなに共通する課題だと思います。未来の自分に、何を贈りたいのか。それは「今選ぶことが、未来にも意味を持つか」という、サステナビリティの核心を突いた強い問いです。

未来を考えることは簡単じゃないかもしれません。私自身、未来の自分に何を贈りたいか、まだ選べないでいます。しかし、考えることからGOOD LOOPが始まります。WAKO Sustainability Monthは期間が区切られたものですが、会期中にご覧いただいたことが記憶に残り、次世代に繋ぐ価値を考え続けるきっかけになれたら嬉しいです。

  • この記事をシェアする
  • facebook
  • x
  • line

おすすめの記事

Pick Up Contents

合わせて読みたい関連記事

セイコー サステナブル・ストーリー

About

サステナブル・ストーリーとは、持続可能な社会に向けて、
セイコーだからできるサステナブルな活動を発信していく
Webメディアです。