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創業以来、100年以上にわたり「時」を伝え続けるセイコーグループ。その高い技術力や精密性は時計業界の枠を超え、医療現場のDXや、小さな子どもを見守るデバイスなど、身近な生活のあらゆる場面にセイコーの技術が息づいています。

2025年春に公開されたCMでは、「時計のセイコー」と「ソリューションのセイコー」というふたつの側面を、愛らしい双子を通して表現しました。CMのなかでふたりが積み木で街をつくり、おもちゃでソリューションを届けながら遊ぶ様子には、サステナブルな社会を目指すセイコーのメッセージが込められています。

【セイコー】企業CM「心を動かすソリューション」篇

銀座を彷彿とさせる街並みに使われたのは、約5,000個の積み木。担当した積み木アート作家・髙木美晴さんを訪ねて、CM制作の裏側と、積み木の魅力について伺いました。

積み木で描く街並み。CM制作の舞台裏

CM制作について教えてください。”双子のお子さんたちが遊ぶ積み木の街並み”というストーリーをはじめて聞いたとき、どのように感じましたか。

CMという多くの方が目にするものに積み木が使われるだけでも嬉しかったのですが、それがセイコーのCMとわかった時は、本当に嬉しく思いました。長い歴史を持ち、世界中でさまざまな世代に親しまれていることなど、セイコーと積み木には共通する親和性があると感じたからです。また、「ソリューション」という側面が表現されたことで、自身もセイコーの事業を幅広く知る良い機会になりました。

積み木で街をつくるストーリーもとても素敵だと思いました。と同時に、「制作スケジュールに間に合うかな」という心配もよぎりました。積み木は欧州のメーカーも多く、国産メーカーはいちから製造するので、相当な数の積み木を取り寄せる必要があるからです。そのため、制作に携わる皆さんにアトリエへお越しいただき、イメージを共有して、できるだけ早く必要な数の積み木を発注できるよう準備を進めました。

髙木さんのアトリエ

積み木や木のおもちゃ、ドールハウスなど、想像力をかきたてるものに溢れた髙木さんのアトリエにて

デザインや制作にはどのくらいの時間がかかりましたか。また、制作において一番大変だったことがあれば教えてください。

デザインが決まるまでは、約2週間かかりました。使用する積み木は、双子が制作したと思ってもらえるよう年齢に合わせて、大きいサイズのものを選びました。街並みの再現も細かく作り込みすぎず、ちょうどよいバランスになるよう工夫しました。CMに使われた銀座四丁目の街並み自体は、3日間で組み上げました。美術スタッフの皆さんの制作も含めると約2週間かかっています。もくもくと積み続けた作業は大変でしたが、どの積み木をどこに使うかを、デザインしながら考えること自体はすごく楽しかったです。

さまざまな国の積み木を組み合わせたいと思い、ドイツ、スペイン、オランダ、スイス、日本と5ヶ国のメーカーの積み木を使いました。時計塔にはコマを使い、先端には木のビーズを挿し込んでいます。このデザインがひらめいたときは、自分でもとてもうれしく感じました。

銀座のシンボル・時計塔の見た目をした木のおもちゃ

ドイツ製のおしゃれなコマも台座に乗せて、ビーズを挿し込んだら、銀座のシンボル・時計塔に。

想像力は無限大。積むだけでは、もったいない

積み木アート作家というお仕事について教えてください

普段は、積み木や木のおもちゃの遊び方をご紹介しています。例えば、お店で積み木だけを見ても、具体的にどういう遊び方ができるのか、想像し切れないこともあると思うんです。「積む」という言葉のイメージに引っ張られているようにも思うのですが、数パターンの積み重ねしか遊び方がないとしたらちょっと高額すぎる、と避けてしまう人も少なくありません。

実は積み木には、積む以外の遊び方もたくさんあるんです。実際、子どもたちも小さい時はうまく積めませんから、最初はテーブルや床の上など平面で、並べたり、目と鼻と口をつくって遊ぶ、といったことから始まります。積み木をいろんなものと組み合わせることも自由ですし、積み木は、遊び方に決まりがないおもちゃ『オープンエンドトイ』と言って、遊び方は無限にあるんですよ。

太陽や波のかたちをした木のおもちゃ

太陽や波のかたちをした木のおもちゃも…

木のおもちゃ

髙木さんの発想力にかかれば、

チューリップのような見た目をした木のおもちゃ

チューリップのようなかわいいお花に!

例えばこの5色の積み木は、ドイツ製の昔からある積み木です。5本の棒がついた台に、ドーナツ型の積み木が10個ずつセットになったシンプルなつくりで、0歳から遊ぶことができ、大人も一緒に楽しめます。乳幼児にとって、棒に通す手の運動は発達に良く、少し大きくなったら、輪のところに紐を通して繋げたり、高く積み上げたりと、遊び方が広がります。手先の発達を促すだけでなく、集中力や想像力を育み、付属の紐やサイコロを使って、ひも通しや簡単なゲームなど、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に遊ぶこともできます。

虹色の積み木


こちらの虹色の積み木も、バラバラにしていろんなものがつくれます。丸みをいかして果物や、逆さにして端午の節句の兜(かぶと)に見立てたり。あと揺れるので、この上に積み上げるゲームは大人だって楽しめます。

虹色の積み木の赤いパーツを逆さにして積み木を乗せていく遊びの様子

虹色の積み木の赤いパーツを逆さにして、不安定な上にひとつずつ積み木を乗せていく遊びは、崩れるまでどきどきする面白さ。アクリル素材で光を通す積み木なども見せていただきました

積み木アート作家になった経緯を教えてください。

出産後、子どもたちと一緒にどう遊んだらいいのか分からない、という経験をしたんです。その頃、お下がりでたくさんのおもちゃをいただき、音が鳴るおもちゃに喜んだので与えていました。でも我が家も双子なので、一つしかないと取り合いになってしまうんです。それで、同じかたちがある積み木を渡してみたら、ふたりでずっとおだやかに遊ぶようになりました。

調べてみると積み木には185年もの歴史があり、環境配慮があって、保育の現場では昔から使われているなど、良いことばかり。我が家でも、積み木でごっこ遊びをしたり、物語をつくったり、家族で出かけた先の思い出を再現したり、どんどんのめり込むようになりました。

成長記録のように、子どもたちと一緒につくった積み木をブログに公開していたところ、多くの反響をいただき、遊び方を紹介する『積み木手帖』というブックレットを刊行したんです。その後、積み木の写真でカレンダーをつくることになりました。

つくってみたら一般のご家庭だけではなく、おもちゃ屋さん、幼稚園、保育園、子育て支援センターなどにも置いていただき、毎年制作しています。6年前、積み木の輸入代理店さんに勧めていただいたことをきっかけに考えたのが、「積み木アート作家」という肩書きです。最近はイベントに呼んでいただいたり、講師や講演会、木のおもちゃと一緒に楽しめる絵本を選書したり、お仕事の幅も広がりました。

赤鬼と青鬼のような見た目をした積み木が記載されているカレンダー

虹色の積み木が、ここでは赤鬼と青鬼に。その月を表す積み木の作品と、自然のなかで楽しむ季節の遊びも紹介されているカレンダー

世界は多様だからこそ。積み木を通して見る未来

積み木や木のおもちゃにおけるサステナビリティについて、どのようにお考えですか。

積み木に魅力を感じた理由のひとつが、使い捨てではない、ということでした。三世代に引き継がれている積み木もあると聞き、なんて素敵なんだろうと思ったんです。うちにある積み木も、古いものは12年以上使っています。お下がりを含めれば20年以上です。ゴミを出さずに半永久的に使えることはとても重要だと思います。

あと、木のおもちゃをお子さんの成長に合わせて借りられるレンタルサービスもあって、私もセレクトに関わらせてもらっています。

髙木さんインタビューの様子

「積み木に年齢制限はない」と髙木さん。「我が家の双子は中学生になりましたが、小さい時と同じ積み木を使っていて、最近では自分たちで物語をつくり、撮影してアニメーションをつくったりしています」

メーカーの多くが環境に配慮していて、持続可能な森の木材を使ったり、プラスチックフリーのパッケージ、あと、木材の節目もそのまま個性としていかされています。人のかたちをしたおもちゃも、多様な姿がつくられるようになりました。体型や木肌の色がさまざまで、顔も描かれていないので性別もジェンダーフリー。どんな子も安心して、自分を投影しやすいよう配慮されています。

木材の節目がある積み木

個性として生かされる木材の節目。「このおもちゃで遊ぶあなた自身の個性も同じだよ、と伝えてくれている気がします」

積み木

「こういうおもちゃを通して、自然と世界にはいろんな人がいる、ということが理解できると思います」

積み木を通して、髙木さんご自身にも変化はありましたか。

子育てにおいて、「待つ」ということができるようになったと思います。急かしたり、口出しすることなく、見守っていれば大丈夫、と思えるようになったのは積み木で遊んでいたおかげですね。はじめは難しくて「出来ない」と言っていたことも、2週間も経つとできるようになっている、と分かったんです。また、主体的に遊べるようになる、ということも実感しました。

子どもたちとのコミュニケーションになってくれた積み木が楽しくて、ただ楽しいままに発信してきたんですけど、積み木について発信する意義を考えた時、思ったことは世界のことでした。家庭内で育まれるコミュニケーションはやがて、ひとりひとりの力になり、社会にでた時に生かされます。日々のやりとりの中で生まれる、小さな幸せ、良いコミュニケーションが広がれば、世界はより良くなるはず。平和でおだやかな世界になることを願って、この先も積み木の魅力を伝えていきたいです。

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