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2022年11月、千葉県市川市のぴあぱーく妙典内に「妙典少年野球場」が完成しました。両翼70m、バックスクリーン85mの広さの球場は、外野に人工芝が敷かれ、ベンチや観客席、BSOランプもあり、本格的な設備が話題になりました。この場所でひときわ目を引くのが、セイコータイムクリエーションが手がけた大きな野球スコアボード。実は市川市にある国府台球場で使用していたスコアボードをReuse(再利用)しています。

「野球スコアボードはどのように再利用されるのだろうか」という疑問に答えてくれたのが、セイコータイムクリエーション株式会社 首都圏営業部で野球スコアボードのReuseの提案をしている山本航平さん。市川市の野球少年たちの聖地となった妙典少年野球場の中でもスコアボードは存在感を放っている。セイコータイムクリエーションのサステナブルな考えを聞くと同時に、子どもたちに夢を与える野球スコアボードReuseへの熱い思いを語ってもらいました。

スコアボードのお引越し?!セイコータイムクリエーションが提案した驚きのReuse

スコアボードを背に語る山本さん 写真

自身が手がけた妙典少年野球場のスコアボードを背に語る山本さん。このスコアボードはReuseだというから驚きだ

写真 落合直哉

妙典少年野球場の中でもひと際目立つ本格的なスコアボードですね!

山本:市内の国府台球場で8年ほど使用していたスコアボードになります。妙典少年野球場に移設の際には一部の鉄骨など塗装を直しましたが、ほとんどそのままの状態で引っ越しました。つまり、野球スコアボードをReuseしているんですよね。

近くで見るとかなり大きくて、ひときわ存在感を放っていますね。

山本:移設の際にずっと現場に立ち会っていて、最初はこの球場には大きすぎるのではと懸念していました。ただ、完成してみると「想像以上にいいな~。」と思いました。もともとセイコーが取り扱う電光掲示板は陸上や競泳などの競技で使われることが多いのですが、同じ1枚での掲示でも、どういうレイアウトにするか、どんな文字の大きさにするかという見やすさにはこだわりを持っています。

球場に来た瞬間、思わず「わぁ!」と叫んでしまいました!スコアボードを筆頭に少年野球場とは思えないくらい設備が整っています。

山本:一般の方がスコアボードを見る機会は、プロ野球中継のテレビ越しなどでしかないと思います。プロとはスコアボードの規模感が異なりますが、こうして間近で見られて非日常の空間に浸れるのが、野球場のいいところですね。野球を始めたばかりの子どもたちにとっても、「ここで試合したい!」というワクワクした気持ちになると思いますし、設備を整えるのはいいことばかりなんですよ。

記録室での文字入力の様子 写真

記録室での文字入力で、多彩な掲示を可能としている。フルカラー表示なので非常に鮮やかだ

写真 落合直哉

そもそも電光掲示のスコアボードってどんな仕組みで表示されているんですか?

山本:記録室で文字を入力すると、スコアボードの裏側にある電源盤のケーブルに信号が伝わって表示される仕組みになっています。この妙典球場では、得点経過だけでなく、バッターの選手の名前、BSO、ヒット・エラー・フィルダーズチョイス、また任意のメッセージや動画まで表示できるようになっています。フルカラー表示なので、関係者の方にもご好評いただいています。

スコアボードの引っ越しには、どれくらいの手間がかかるものなのでしょうか。

山本:一からスコアボードを作るとなると、設計で1年、設置に1年弱で2年くらいの期間がかかります。資材や部品を手配しつつ、工事する時間もありますからね。大きいタイプだと3~4年かかることもあります。今回はReuseなので、工事に着手してからは3~4ヶ月くらいで完成しました。国府台球場を知っている人からすれば「あのスコアボードが再利用されているんだ!」と驚くかもしれませんね。

すべてに優しい「スコアボードのReuse」が始まったきっかけ

山本さん 写真

お客様だけでなく、地球環境にも優しい点が「スコアボードのReuse」における大きな利点だ

写真 落合直哉

セイコータイムクリエーションで野球スコアボードのReuseが始まったきっかけは何だったのでしょうか。

山本:市川市からお話をいただいたこともありますが、まだ使えるものは再利用した方が地球に優しいという“エコの観点”での発想が大きいですね。また、完全な刷新を行う場合と比べ、約半分のコストで改修できるため、費用を抑えることも可能です。

もちろん、会社的には新規での受注も目指していますが、まだ使えるものを再利用してリーズナブルにお客様に喜びを提供できたら、それは素晴らしいことだと思います。お客様だけでなく、地球環境にも優しい――そう考えた時に、Reuseはすごく意義がある取り組みだと考えています。

野球スコアボードのReuseの事例は、今回初めて聞きました。

山本:確かになかなかないですよね。骨組みの部分だけ残して、手差しで行っていた表示部分をLED表示にするなどのリニューアルはありましたが、まるごと移設するのは、初の事例だと思います。この野球スコアボードを何も知らない方が見たら、新しく建てたと思うかもしれません。日本全国、北から南までさまざまな野球場がありますので、これからどんどんReuseの納入実績も増えていくと考えています。

スコアボードの裏側 写真

スコアボードの裏側には「SEIKO」のロゴが存在感を示す。さまざまなReuseを提案できる技術力を備えている

写真 落合直哉

Reuseの提案が、これからどんどん増えていくのですね。

山本:提案することが多いのは、骨組みの部分はまだしっかりしているものの表示に不良が出た場合や、人の手でボードを差し替える昔ながらのタイプを使用している場合ですね。そんな野球スコアボードに関しては、「新しいものを作りましょう!」というよりは、「使えるところは生かしてReuseしましょう!」という提案をセイコータイムクリエーションとしても注力しています。

スコアボードに使われていた部品を他の商品に展開することもできるんでしょうか。

山本:時計に関しては、Reuseしようと思えばできます。塔時計と呼ばれる建物の壁面などを文字板にした時計がまさにそうです。学校の壁面なんかにもありますよね。まだスコアボードがReuseされている事例を知らない方々もたくさんいると思いますので、「こんなこともできるんだ!」ということをしっかり事例としてシェアしていきたいです。

支える側になって気づいた、「当たり前」を提供し続ける大切さ

山本さん 写真

もともと競泳の選手だった山本さんは、支えられる側の選手から支える側に活躍の場を移した

写真 落合直哉

山本さんがセイコータイムクリエーションに入社したきっかけについてもお聞かせください。

山本:私は実は大学までずっと競泳をしていて、スポーツ系の学部で学んでいました。競泳といえば、セイコーがオフィシャルタイマーを務める大会も多いですよね。就職活動をする中で、選手から支える側の仕事に就くのも素敵だなと思って入社を決めました。

実際に支える側の仕事に就いてみて、価値観が広がるなどの新しい発見はありましたか。

山本:大会が開催されて、タイムが表示されて――という運営は、選手時代は当たり前だと思っていました。もし不具合があったら選手もびっくりします。もっと言えば、タイムがきちんと計測されていなければ、選手人生にも関わってきますよね。でも実際に支える立場になってみると、当たり前を提供するのがいかに大切で大変なのかを改めて感じました。そんなに技術的にシンプルなシステムでもありませんし、不具合を発見したら本番に必ず間に合わせないといけないですからね。

スコアボード 写真

山本さんは支える側として「当たり前であり続ける」難しさを日々、実感しているという

写真 落合直哉

だからこそ、やりがいも大きいですよね。

山本:営業担当なので、利用者や選手が野球スコアボードで喜んでくれているとの評判を聞いた際は、「この仕事をしていてよかった!」と胸が熱くなりました。あって当たり前なんですけど、「当たり前であり続ける。」ために何ができるかを常に追求し、提案し続けたいですね。

「自分の名前が!」野球少年の夢を叶えるスコアボード

スコアボード 写真

野球スコアボードに名前が表示されることを喜ぶのは、選手以上に親御さんだという

写真 落合直哉

自分の子どもの名前がこのスコアボードに表示されるシーンを想像したら、ジーンとしてきました……。

山本:野球に限らず自分の名前が表示される瞬間は、本人にとっても親御さんにとっても嬉しい瞬間だと思うんですよ。特に親御さんは我が子の成長を間近で感じることができるはずです。スコアボードの存在価値の大部分は、存在を知らしめることができる点だと言っても過言ではないと思います。だからこそ、単に表示するのではなく、かっこよさも追求する。少年野球場でフルカラー表示は珍しいかもしれませんが、セイコータイムクリエーションの自慢です。

スコアボードに名前が出たり、アナウンスで名前が呼ばれたりするのは、一生の思い出になりますね。

山本:高校野球でいえば、勝ち進むと大きな野球場開催になり、立派なスコアボードがあって……と戦うステージが上がっていくと思います。スタメンとしてスコアボードに名前が表示されるのは、選手たちにとってモチベーションアップにつながります。そういう意味では、スコアボードは人の心を動かす力があるのでしょうね。

スコアボード 写真

妙典少年野球場で活躍した野球少年から将来のスターは生まれるのか。スコアボードは静かに活躍を見守っている

写真 落合直哉

近年は野球人口の減少も危惧されています。でも「あそこで野球をやりたい!」という子どもたちも増えそうな気がします。

山本:きっかけになってほしいですよね。野球に限らず、「あの場所でプレーをしてみたい!」という想いは子どもたちにとってスポーツを始める大きなきっかけの1つになると思います。妙典少年野球場にもたくさんの子どもが集まることを信じています。

この妙典球場からも、将来のプロ野球選手が生まれるかもしれませんね!

山本:未来のスターがすでにここでプレーしているかもしれませんね!セイコーの大きなスコアボードが、子どもたちの夢の後押しになることを願っています。

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