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突然ですが、「働く」って、めちゃくちゃ大事ですよね。

お金を稼いだり、やりがいを感じたり。理由は人それぞれですが、働くことは人生の多くの時間を占めています。少なくとも、まったく働かずに生きていける社会は、しばらくはやってこなさそう。すこし大げさに言えば、働き方を考えることは「どう暮らしていきたいか」を考えることなのかもしれません。

かくいう筆者はフリーランスとして活動しており、「何時から何時まで」というはっきりした就業時間がありません。がんばって朝起きなくても良い反面、深夜や休日までズルズル仕事をしてしまうことも。自由と言えば聞こえはいいですが、これでは本末転倒かもしれません。

昨今では、働き方の多様化がさかんに叫ばれていますが、多様化したぶん、それを管理する事務作業も大変になることを意味します。週5勤務と週3勤務、正社員にアルバイト。リモートワークで勤務地も人それぞれになるなど、今の多様な働き方に対応することは、なかなか骨が折れそうです。「働き方改革」なんて言葉もよく耳にしますが、そもそも本当にいい「働き方」とは何なのでしょう?

セイコーソリューションズ 画像

そのヒントを探して、セイコーソリューションズにやってきました。ここではデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、企業や自治体の働き方改革を支えているのだとか。

話によれば、セイコーソリューションズの提供する「トラストサービス」が、新しい働き方の推進に一役買っているそうです。あまり聞き馴染みのない言葉ですが、どんな役割を果たしているのか、じっくりお話を聞いていきたいと思います!

お話を聞かせてくれたセイコーソリューションズ DXソリューション本部 御三方。左から加納千穂さん、齋藤直美さん、古川祥子さん。

お話を聞かせてくれたセイコーソリューションズ DXソリューション本部 御三方。左から加納千穂さん、齋藤直美さん、古川祥子さん。

タイムカードもICに。勤怠管理で進むデジタル化

古川祥子さん 画像

セイコーといえば時計のイメージです。働き方にまつわるサービスを提供しているそうですが、勤務時間をしっかり計ってくれる、みたいなことでしょうか?

古川:勤怠管理も事業の一つですね。セイコーでは昔からタイムレコーダーを扱っていて、今でも根強い需要があります。紙のタイムカードを通して印字するものから、最近ではICカードやクラウドに対応しているものなど、いろいろな種類がありますよ。

タイムカードや勤怠管理にもデジタル化の波が来ているんですね。

古川:そうですね。ただ、デジタル化以前の問題として、紙の台帳に手書きしていたり、ハンコを押して管理していたり、そもそも記録自体をしていないという職場もありまして……。

働き方を改善する以前に、まずは勤務の実態を把握したいという目的でご相談いただくことも多いんです。

(ウッ!)自分の感覚に任せて働いている身としては、少し耳が痛い話です。あまり時間を気にせず仕事していると、いつの間にか生活リズムが崩れたり、どこかで無理が出てきたりしますよね……。

淺野義弘さん 画像

システムが新しくなることに対しては、どのような反応がありますか?

古川:実情を知りたい経営層と、業務フローを変えたくない現場とで、温度差があります。それぞれの職場に応じた調整が必要なので、ただハードやソフトを入れれば良いわけではありません。

法律や制度から見ても、客観的な時間管理はどんどん重要になっていくので、勤怠管理のデジタル化の流れはこれからも続いていくと思います。

たとえば、残業代の未払い問題などが取り沙汰される時、「残業」となるだけの時間を労働したことをなんらかの形で証明することが求められます。

自分の働きを証明したい従業員にとっても、訴えられるリスクのある会社にとっても、情報を正確に残すことはとても大切なんです。

複数でも、スマホからでも。多様な契約をまとめて管理

齋藤直美さん 画像

会社との付き合いと言えば、契約書をデジタルでやりとりすることも増えたように感じます。

齋藤:電子契約も進んでいますよね。入社手続きなどでは、住所や家族構成などの個人情報を預かることもありますから、それらを安心して管理するためのサービスもセイコーソリューションズでは提供しています。

古川:正社員だけでなく、業務委託や有期契約など、契約の種類もさまざまです。一人で複数の身分を持つ方もいらっしゃいますし、こうした新しい流れには、既存のシステムだけでは対応しきれないんです。

働く人との関係によって、伝えるべき情報や、更新のタイミングも変わってきますよね。自由な働き方が増えることは、管理する側としては対応が複雑になることでもあるのか……!

セイコーソリューションズの提供する「かんたん雇用契約 for クラウド」の管理ダッシュボード。一人ひとりの契約形態や状況が一目でわかる

セイコーソリューションズの提供する「かんたん雇用契約 for クラウド」の管理ダッシュボード。一人ひとりの契約形態や状況が一目でわかる

齋藤:通勤経路から交通費を自動で算出するなど、使いやすさも意識しています。本人確認書類なども、スマートフォンから登録できるんですよ。

へー!それならパソコンを持っていない学生さんなども、気軽に使えそうですね。

齋藤:未成年の方がアルバイトをするなら、親御さんの同意書も必要になります。紙の書類を集めて提出して、人事に回して、抜けがあったらやり直して……と時間がかかっているうちに、他のところに行ってしまうアルバイト候補の方もいるそうです。今はどこも人手不足なので、契約のつまずきは労働力不足にも繋がってしまうんです。

書類を印刷して印鑑を押すのって、けっこう手間ですもんね。デジタルでサクサク進められるなら、それに越したことはないかも。

齋藤:システムですべて管理すれば、書類の抜け漏れもあらかじめチェックできるので、最初からやり直す必要もありません。紙の書類をやりとりするのと、デジタルで管理するのでは、やはりスピード感が変わってきます。

「いつ」や「誰」を証明するトラストサービス

そういえば、雇用契約などの大切な情報って、電子データでもちゃんと効果があるのでしょうか? なんとなくですが、印鑑の押された紙が必要な気がしてしまいます。

齋藤:社会のデジタル化が進むにつれて、あらゆる情報が電子化されていきます。それは同時に、改ざんや情報漏洩のリスクも抱えるということですから、当然その対策も必要になります。

たしかに。データの見た目だけなら、画像加工ソフトを使えば誰でも簡単に書き換えられますもんね。

齋藤:そこで私たちは「タイムスタンプ」と「電子署名」という技術で、それぞれ「いつ」「誰が」合意したのかという情報を、電子データに紐づけて証明しているんです。こうした技術によって、流通する情報の信頼性を担保する取り組みのことを、広く「トラストサービス」と呼んでいます。

タイムスタンプの仕組み 図

タイムスタンプの仕組み

電子データは実体がないからこそ、改ざんのリスクも高い。正しいデータであることを裏付けるために、電子的な信頼(トラスト)が必要なのですね。

齋藤:たとえば雇用や労働にまつわるトラブルでは、どのような契約を交わしていたかがポイントになります。トラブルが起きた後で過去の情報を辿ろうとしたときに、紙で何枚も契約書が残っていたとしても、正確な日付の記載がなく、どのタイミングで更新されたかが分からなければ、正当性が証明できません。

紙の契約書があるからと言って、安心できるわけではないのか……!

齋藤:逆に電子契約では、タイムスタンプと電子署名を付加したデジタルデータを管理することによって、どれが正式な契約なのかをしっかりと担保できるんです。

時に関わる企業として、タイムスタンプに関わらない選択肢はない

加納千穂さん 画像

ところで、時計を製造していたセイコーが、どうしてデジタルのトラストサービスに取り組み始めたのでしょうか。

加納:会社の事業として、物理的に時刻を刻むことから、データ流通における時刻の保証へと繋がっていったのだと思います。2005年に日本データ通信協会による認定業務が始まった翌年には、タイムスタンプを提供できる事業者として認められていますから、かなり早くから先を見越していたようです。

古川:これは個人の見解ですが、セイコーには「正確な時を扱っている」という自負や、ブランドとしての責任感もあったのでは、と。タイムスタンプという概念が出てきた時に、自分達が関わらないという選択肢はなかったのではないでしょうか。

オフィスの入り口 画像

オフィスの入り口には、時を刻む企業であることを象徴するようなからくり時計が。

加納:グローバルブランドとして、世界の動きも見ていたのだと思います。データは文字通り世界中を巡りますから、整備の進む他国についていけず、日本だけが置いていかれるわけにはいきません。

トラストサービスは、国という単位でも必要になっていくんですね。

加納:一社だけでできることには限界もあります。たとえば、サービスのベンダーごとに仕組みが大きく違うと、利用者さんは困ってしまいますよね。今でも他の事業者さんたちと協業しながら、プラットフォームの構築や実証実験を進めている最中です。

トラストサービス前提の「人間らしい」働き方へ

トラストサービスをうまく活用すれば、契約手続きがシンプルになったり、会社への貢献がしっかり記録されたりするわけですよね。その結果、働く側が、より安心して新しい働き方を選べるようになると感じました。

齋藤:内閣府が提唱する「Society 5.0」(※) というビジョンでは、デジタル技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れることで、より人間が人間らしく豊かに生きる社会を目指しています。

働き方という視点から見ると、大きな枠組みの中でなんとなく頑張って働き続けるよりも、細やかな状況に合わせて個人の価値を発揮する方が、より「人間らしい」あり方だと思います。

※ 狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会像。高度なAIやロボットなどの端末を活用し、情報空間と現実空間を融合させ、社会に新たな価値を生み出していくことを目指す。

加納千穂さん、齋藤直美さん、古川祥子さん 画像

齋藤:ペーパーレス化は環境配慮にもつながりますし、労働人口が減る中での業務効率化は「3. すべての人に健康と福祉を」や「8. 働きがいも経済成長も」といったSDGsの目標にも関わってきます。トラストサービスが果たす役割は、さまざまな観点において大きくなっていくと思います。

セイコーが培ってきた技術やサービスが、時代の流れとシンクロしてきたのですね。

齋藤:Society 5.0 や SDGs という流れは、あらゆる企業にとって無視できないものになっています。人事システムやサービスに求められるものも、どんどん変わっていくでしょう。私たちはお客様の課題を深掘りして、そうしたニーズに答えられるようにしていきたいです。

おわりに

時代の変化と共に、多様になっていく働き方。時間や場所など、物理的な制約が取り払われつつある今だからこそ、デジタルの情報には高い信頼性が求められているようです。

どのような条件で、どのように働いているのかが、しっかり把握できるトラストサービス。わかりやすさと正確性を備えたデータの存在は、今後の働き方を考える一つのヒントになるかもしれません。

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