Magazine ジャズコラム
Report
Seiko Summer Jazz Camp 2026【後編】
5日間にわたって開催された本格的ジャズキャンプ
- 2026/10/06
- 2026/10/06
ジャズの本場ニューヨークで活躍するトップ・ミュージシャンから直に指導を受けられる本格的ジャズ・キャンプ、Seiko Summer Jazz Camp 2026もいよいよ5日目の最終日。ガラコンサートの開催です。これまで4日間にわたって切磋琢磨してきたアンサンブル・クラスの仲間たちとその成果を発表する大切なステージ。そしてその最後には、キャンプ中に大きな成果を挙げた受講生を表彰する授賞式も行なわれます。その模様をリポートしましょう。
取材・文:早田和音
撮影:amigraphy
取材日:2025年8月14日
晴れ舞台に向けた入念なリハーサル
8月10日から楽しく、かつ真摯な雰囲気の中で進められてきたセイコージャズキャンプ 2026。
その最終日14日のプログラムは、受講生の皆さんがキャンプの成果を披露するガラコンサートと表彰式です。
この日も9時の始業とともに会場入りした受講生さんたちは、楽器のウォーミングアップと譜面の確認に余念がありません。
その後、会場となるバリオホールでは、機材の確認や音響チェックなどを含めたリハーサルもスタート。それぞれの所要時間や動きの確認などが、講師陣や受講生の皆さん、スタッフの方々とともに入念に進められていきます。そこには、最高のガラコンサートにしようというセイコージャズキャンプファミリー全員の強い意志と結束力が感じられます。
溌溂とした演奏を繰り広げた5組のアンサンブル・クラス
午後1時からスタートするガラコンサートは、アンサンブル演奏、ビッグバンド演奏、講師陣による作曲・編曲コース作品演奏、そして授賞式と講師陣のスペシャルセッションに分かれています。
最初に行なわれるアンサンブル演奏は、トランペット/サックス/トロンボーン/ピアノ/ギター/ベース/ドラムス/ヴォーカルの受講生8名で編成された5組のアンサンブルが各2曲を披露するプログラム。キャンプ初日から一緒に学んできた皆さんにとっての晴れ舞台です。
それぞれのバンドが、司会の八雲ふみねさんからのコールを受けて元気に登場。軽やかなリズムを刻む「バプリシティ」と、ヴォーカルとホーン・セクションのキレの良い掛け合いを伴った「ザ・キッカー」の2曲で先陣を切った最初のアンサンブルグループ〈The Kickers〉から、ニューオーリンズ・テイストの薫る「アフター・ユーヴ・ゴーン」と、スキャット(歌詞の代わりに意味のない音節を使う歌唱法)とホーン陣(金管楽器・木管楽器のグループ)の美しいリフ(短くて印象的な定番のフレーズメロディ)をフィーチャーした「フライ」で会場を沸かせた最終組〈Q.D. Street〉まで熱演が繰り広げられました。
その中で強く感じられたのが、メンバー間のケミストリーの豊かさ。互いのプレーに反応し合いながら伸びやかな演奏を聴かせてくれました。
各グループの演奏曲のタイトルと、演奏後に贈られた講師からのメッセージをお伝えしましょう。
Group 1 〈The Kickers 〉 演奏曲:「バプリシティ」、「ザ・キッカー」
担当講師のアリシア・オラトゥージャ&ダン・ニマーからのコメント
アリシア 「皆さんが成長していく姿を見て、私たちもたくさんのことを学ぶことができました。皆さんに心から感謝します」
ダン 「このキャンプで皆さんが大きな成果を得ることができましたし、僕もたくさんインスパイされました。これからもスウィングし続けてください」
Group 2 〈 New-Timers 〉 演奏曲:「ザ・プリーチャー」、「イマジン」
担当講師のベニー・ベナックⅢのコメント
「セイコージャズキャンプの10周年に参加した皆さんは、まさに新たな世代を代表する〈New-Timers〉。今後の活躍を楽しみにしています」
Group 3 〈 Eight Steps to Heaven 〉 演奏曲:「枯葉(Autumn Leaves)」、「アイル・リメンバー・エイプリル」
担当講師のディエゴ・リヴェラからのコメント
「皆さんがすごく楽しく、とてもシリアスに取り組んでいた成果が出ました。最高のコンボ演奏をしてくれた皆さんのことを誇りに思います」
Group 4 〈 Fantasm 〉 演奏曲:「ユー・アー・ドライヴィング・ミー・クレイジー~エミリー(メドレー)」、「ファンタズム」
担当講師のジョセリン・グールド&中村恭士からのコメント
ジョセリン 「皆さんは、演奏だけでなくアレンジにも一生懸命に取り組んでいて、それがコンサートでとてもいい形で表れました。とてもうれしいです」
中村 「素晴らしい演奏でした。10年間このキャンプに携わってきて、毎回、皆さんのような新しい才能に出会うのがとても楽しみです」
Group 5 〈 Q.D. Street 〉 演奏曲:「アフター・ユーヴ・ゴーン」、「フライ」
担当講師のクインシー・デイヴィスからのコメント
「5日間、全員が真面目に音楽に向き合い、心をひとつにした素晴らしい音楽を作りました。これからも皆さんの成長をずっと応援しています」


受講生全員参加のビッグバンド演奏と、講師陣が奏でる作曲編曲コースの作品披露
その後ステージは、総勢15人のホーン奏者の受講生が一堂に会したホーン・セクションと、1曲交替でメンバーを入れ替えるリズム・セクションが一緒になってのビッグバンド演奏。
ディエゴ・リヴェラが作曲した軽快なラテン曲「ブラセロ」から、チャチャチャにアレンジされたマイケル・ディーズの作品「セイコー・タイム」まで大迫力の5曲が披露された後は、
作曲・編曲コースの受講生3人が書きあげた楽曲を講師陣が演奏する特別演奏に入ります。
中山優響さん作のグルーブ感ゆたかな楽曲「Sumeragi」、鈴木鵬生さん作の爽やかなフュージョン・テイスト曲「The Mellow Sunshine」、広大な音空間を描き出す上岡一輝さん作「Nameless」という、個性ゆたかで完成度の高い楽曲に大きな拍手が湧きあがりました。
喜びがはじける授賞式
受講生全員の演奏と作品が発表された後は、5日間に目覚ましい成果を挙げた受講生を讃える授賞式です。
参加者中でもっともすぐれたプレーヤーに贈られる最優秀賞をはじめ、特別賞、優秀賞(3名)、もっとも優れた演奏を行った管楽器奏者に贈られるヤマハ賞(3名)、さらに今年から新設されたSHOBI賞、BLUE GIANT賞、作曲・編曲コースの最優秀作品に贈られる作曲・編曲賞の受賞者が次々に壇上で表彰されていきます。作曲・編曲コース講師の挾間美帆、漫画『BLUE GIANT』の作者である石塚真一氏からのメッセージと受賞者の喜びの声をお届けしましょう。
石塚真一 「皆さん、本当に素晴らしいです。できれば、みんなにBLUE GIANT賞を贈りたいくらい。若い皆さんが表現の枠をどんどん突き破っていくのを楽しみにしています」
挾間美帆 「とてもレベルの高いオーディションから選ばれた3人が非常に素晴らしい作品を生み出してくれました。皆さんと御一緒できたことを誇らしく感じます」
【最優秀賞 / Most Outstanding Student Award】
ピアノ 吉澤果穂さん
(吉澤さんのGraduatesページはこちら)
ジャズキャンプ参加者の中でもっとも優れたプレーヤーひとりに授与。賞品および副賞としてトロフィー、そして講師陣も付けている腕時計「キングセイコー」、2027年7月にアメリカ ノースカロライナ ブリバードで開催される約2週間の教育プログラム「Jazz Institute at Brevard Music Center」への参加権が贈られました。
吉澤さん 「名前を呼ばれた時は本当にビックリ。まるで夢のようでした。ダン・ニマー先生から毎回、的確なアドバイスをいただけたおかげで、すごく成長できたと思います。心から音楽を楽しめるような音楽家を目指して頑張りたいと思います」
●作曲・編曲賞 / Best Composition & Arrangement Award
作曲・編曲 上岡一輝さん
作曲・編曲コース受講生の中から、もっとも優れた作品を書きあげた受講生に授与。賞品および副賞としてトロフィー、セイコー「マルチサウンドクロック」が贈られました。
上岡さん 「憧れの挾間美帆先生に教えていただき、そのうえ賞までいただいてうれしい限りです。自分に欠けていた部分を指導していただけたおかげで、ヴォイシングとオーケストレーションの点でレベルアップできたと感じています」
●特別賞 / Special Recognition Award
サックス 中村響さん
将来のジャズ・シーンを担うニュー・ホープに授与。日本を代表する今は亡き音楽家でSeiko Summer Jazz Campの名誉チェアマン、前田憲男氏をしのんで創設された賞。賞品および副賞としてトロフィー、腕時計「セイコー5スポーツ」が贈られました。
中村さん 「素晴らしい受講生さんが大勢いるなかで自分が受賞できるなんて本当に光栄です。講師陣の演奏の中にあるタイム感や音量感を直に感じ取ることができたのは自分にとって大きな収穫になりました」
●優秀賞 / Spirit of Jazz Award
ギター 安東拓海さん
もっともジャズ・スピリットにあふれた演奏を行ったプレーヤーに授与。賞品および副賞としてトロフィー、腕時計「セイコー5スポーツ」が贈られました。
安東さん 「(中村)恭士先生とジョセリン(・グールド)先生に、笑顔で演奏している点がよかったと言っていただけたのうれしかったです。これまで、音楽を楽しむという気持ちを大事にしてきて本当によかったと思います」
●優秀賞 / Most Improved Award
トランペット 神字真緒さん
ヴォーカル 寺澤楓さん
(寺澤さんのGraduatesページはこちら)
ジャズキャンプ5日間で成長が著しい2名に授与。賞品および副賞としてトロフィー、セイコー「マルチサウンドクロック」が贈られました。
神字さん 「参加できただけでもうれしかったのに、講師の皆さんから、成長していると言ってもらえたうえに、賞までいただけてビックリです!4日目に受講生みんなでスキャットを歌ったのがすごく楽しかったです」
寺澤さん 「アリシア先生に、これまでの自分の枠を超えたような歌い方を指導していただけたのがものすごく印象に残っています。この経験をもとに、作曲もいっぱいして活動の場所を広げていきたいと思います」
●BLUE GIANT賞
トロンボーン 澤田愛菜さん
(澤田さんのGraduatesページはこちら)
セイコージャズキャンプの10周年を記念して新たに創設。ジャズの未来を担う若き才能を応援する賞。賞品および副賞として、特製のゴールドディスクをあしらったトロフィーが贈られました。
澤田さん 「まさか自分が!という感じです。素晴らしい講師の皆さんに指導していただき、素敵な仲間もできました。ジャズに向かう気持ちがいっそう強まったし、これからも魂を込めて演奏していこうと思っています」
●SHOBI賞
トロンボーン 辻谷寛大さん
(辻谷さんのGraduatesページはこちら)
学校法人尚美学園/尚美ミュージックカレッジ専門学校の創立100周年を記念して創設。10代もしくは現役の学生に授与。賞品および副賞としてトロフィーとヤマハの商品券10万円が贈られました。
辻谷さん 「最初は、うれしさよりも驚きの方が強かったですけど、今はとてもハッピー。賞金はアメリカに行く資金にさせていただこうと思います。ディーズ先生の技術にはただただ驚きでした!」
●ヤマハ賞
サックス 青木謙斗さん
トランペット 小川哲平さん(小川さんのGraduatesページはこちら)
トロンボーン 定久慎平さん
もっともすぐれた演奏を行なった、サックス奏者、トランペット奏者、トロンボーン奏者に授与。賞品および副賞としてヤマハ ワイヤレス・イヤホン「YH-E700B」が贈られました。

10周年を越えて、さらなる未来へ
歓喜にあふれた表彰式の後は、講師陣8人の演奏がスタート。会場にいるすべての人を祝福するような楽しい演奏がセイコージャズキャンプ 2026のフィナーレを飾りました。全プログラムが終了したところで、2016年の第1回から講師を続けているベニー・ベナックⅢにお話を伺いました。
――セイコージャズキャンプが10周年を迎えたお気持ちをお聞かせください。
2016年に、プロデューサーの佐々(智樹)さんやセイコーグループの皆さんと手を携えてSeiko Summer Jazz Campを始めた時は、手探りの中でのスタートだったけど、スケールの大きなキャンプにしていこうという夢を持っていた。その後、年を追って応募する受講生の数も増え、それと同時にレベルも上がっていき、理想的なキャンプを築くことができたと実感している。
――講師の皆さんはSeiko Summer Jazz Camp All Starsとして、今年2026年は日本で5回のコンサートを開催。アメリカでも3回のコンサートを行なったそうですね。
イエス! 実は、セイコージャズキャンプはアメリカのミュージシャンの間でかなり話題になっているんだ。
これまで数多くの優秀な卒業生を送り出し、その中にはアメリカを拠点に活躍している人もたくさんいるからね。だから、来日前の7月30日にニューヨークのジャズアットリンカーンセンター・ディジーズクラブで開催したコンサートも大反響だった。ものすごく盛り上がったよ!これも10年という積み重ねがあったからこそ。
このキャンプをずっと特別協賛してくれているセイコーグループ、そして事務局や学校関係者、スタッフの皆さんにはものすごく感謝している。11年目の来年はさらに良いキャンプを目指すよ。
――来年のキャンプ参加を考えている若い人たちにメッセージをお願いします。
皆さんの熱意と音楽愛を込めたオーディション音源を送って応募してください。セイコージャズキャンプファミリーの一員になって2027年のキャンプを一緒に楽しく過ごしましょう!



