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Seiko Summer Jazz Camp 2026【前編】

Report

Seiko Summer Jazz Camp 2026【前編】

5日間にわたって開催された世界基準のジャズキャンプ

  • 2026/09/25
  • 2026/09/25

ジャズ・ミュージシャンを志す若者たちが、日本にいながら世界の一流プレーヤーから指導を受けられる本格的ジャズ・キャンプを実現したい——。Seiko Summer Jazz Camp(以下 セイコージャズキャンプ)は、事務局長を務める佐々智樹さん(株式会社スパイス・オブ・ライフ)のそんな長年の願いのもと、セイコーグループ株式会社の特別協賛により2016年にスタートしました。
その10周年となる2026年も、全国から40名超の受講生を迎えて開催されました。5日間にわたって尚美ミュージックカレッジ専門学校のキャンパスで行なわれた充実のキャンプの模様を前編、後編の2回に分けてお届けしましょう。

取材・文:早田和音
撮影:amigraphy
取材日:2026年8月10日・13日

10周年という節目を超えて、ジャズのさらなる未来へ

16歳から25歳の若者を対象にして、世界的ジャズ・ミュージシャンでもある講師陣から、演奏技術、理論、歴史、音楽との向き合い方などジャズの総合的な指導を無料で受けることのできる5日間の教育プログラム、Seiko Summer Jazz Camp。今年(2026年)7月に、公益社団法人企業メセナ協議会から、芸術文化振興による心豊かなより良い社会づくりの取り組みを示す「This is MECENAT 2026」にも認定され、さらに注目度を高めている同キャンプの今年のテーマは、「“Building the Future of Jazz, One Decade at a Time”~10年の時を超えて ジャズの未来へ~」というもの。10周年という節目を超えて、ジャズのさらなる未来に向かっていこうというスローガンに相応しく、今年は楽器演奏だけでなく作曲・編曲のコースを新たに開講。
また、大人気ジャズ漫画『BLUE GIANT』とのコラボレーションによる、ジャズの未来を担う若き才能を応援する“BLUE GIANT賞”も設けられ、よりスケールアップしたプログラムでの開催です。そしてその指導をしてくれる講師陣は、第1回から参加し、現在は講師陣のリーダーを務める世界的トロンボーン奏者のマイケル・ディーズ(Tb, Bs)を筆頭に、ディエゴ・リヴェラ(Sax)、ベニー・ベナックⅢ(Tp, Vo)、ダン・ニマー(P)、ジョセリン・グールド(G)、中村恭士(B)、クインシー・デイヴィス(Dr)、アリシア・オラトゥージャ(Vo)というトップ・ミュージシャン揃いの8人と、前述した作曲・編曲コースの講師として、世界的作編曲家の挾間美帆も加わる豪華な顔ぶれ。
さらに、國府方章弘(Tp)、橋爪亮督(Ts)、池田雅明(Tb)、鈴木瑤子(P)、松永加津子(P)、松原慶史(G)、大井澄東(Dr)という海外経験豊富な日本人ミュージシャンや、数多くの来日ミュージシャンの通訳を務めてきた渡瀬ひとみらが通訳講師として各クラスをサポート。何不自由なく意思疎通が行なえる万全の態勢が敷かれています。

ジャズキャンプ当日の様子
撮影:amigraphy
ジャズキャンプ当日の様子
撮影:amigraphy

「長所と個性を伸ばしてあげたい」 挾間美帆が担当する作曲・編曲クラス

その初日、8月10日の最初のプログラムは、5日間のメイン演奏会場なる尚美バリオホール(346名収容)でのオリエンテーション。
最初に登場した守屋純子・特別顧問から伝えられた、「世界でも有数のプログラムを持つこのキャンプの中で、講師陣からたっぷりジャズを吸収し、今後の人生の大切な友となるであろう仲間をたくさん作って、楽しい5日間を過ごしてください」という挨拶の後は、ベニー・ベナックⅢが受講生全員と交わすスキャット(歌詞の代わりに意味のない音節を使う歌唱法)の掛け合いや、講師陣8人によるブルースの模範演奏が披露されて楽しくフィニッシュ。いよいよレッスンのスタートです。
挾間美帆が講師を務める作曲・編曲コースでは、多数の応募者の中から選ばれた受講生3名が書きあげてきたそれぞれのオリジナル曲を聴きながら、スクリーンに映し出された楽譜を通して楽曲の構造や和声、メロディなどの意図を詳しく分析する授業が進められています。初日のレクチャーを終えた挾間さんにお話を伺ってみました。

「近年、ジャズ教育が広まってきましたが、演奏の指導が主な位置を占める現状の中、こうしてセイコージャズキャンプが作編曲教育へと間口を広げてくれたことにものすごく感謝しています。今回参加する受講生はそれぞれに個性的であり、非常に大きな才能の持ち主。彼らの長所と個性をこの5日間で伸ばしてあげたいと思っています。
作曲という創作活動は孤独な作業になりがちですが、3人とも互いに刺激を受けながら楽しく進めているようですし、私も3人から大きな刺激をもらっています」

ジャズキャンプ当日の様子
撮影:amigraphy

講師陣のアドバイスによって演奏の精度がぐんぐん上がっていくアンサンブル・クラス

その作曲・編曲クラスと並行して行われているのは、トランペット、サックス、トロンボーン、ピアノ、ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルの受講生がひとりずつ配置されたスモール・コンボのレクチャー。ダン&アリシアが受け持つGroup 1、ベニーが教えるGroup 2、ディエゴが指導するGroup 3、中村&ジョセリンのコンビが授業をするGroup 4、クインシーが担当するGroup 5という5グループに分かれ、実際に演奏しながらアンサンブルの大切なポイントを学んでいきます。
演奏が終わるごとに講師から、「リズム・セクションは全体のバランスを感じ取ってみよう」、「リフ(楽曲の中で繰り返し使われる印象的な短いフレーズ)を演奏する際、ホーン・セクションは互いの音をしっかり聴き合いながら自分の音を出してみよう」、「自分のソロではもっと自信を持ってもいいよ」などの具体的な助言が与えられ、演奏を重ねるごとに、アンサンブルの完成度がアップ。
講師陣からの的確なアドバイスと、それをすぐに演奏に反映させる受講生たちの吸収力の高さに驚かされます。講師のクインシー・デイヴィスとジョセリン・グールドのおふたりにお話を伺いました。

「このキャンプは私にとっても本当に素晴らしい経験。技術的なことだけでなく音楽の奥深い部分までお伝えしようと思っています。受講生の皆さんも目覚ましい成長を見せてくれることでしょう」(クインシー・デイヴィス)

「教える際に私が最も大切にしているのが、ポジティブな気持ちで音楽に接するということ。音楽を学ぶ喜びを分かち合いながら楽しくキャンプを進めていこうと思っています」(ジョセリン・グールド)

クインシー・デイヴィス
クインシー・デイヴィス 撮影:amigraphy
ジョセリン・グールド
ジョセリン・グールド 撮影:amigraphy

さまざまなアプローチで進められる多角的なカリキュラム

セイコージャズキャンプの4日目までの基本的なカリキュラムは、午前中が楽器別のマスタークラスと、バンド別のスモールアンサンブルクラスという2コマ。そして午後は管楽器(ビッグ・バンド)、リズム楽器、ヴォーカルの3グループに分かれてのワークショップ授業と、講師陣がジャズの楽しさについてレクチャーするマスタークラスの2コマという構成。さまざまなアプローチでジャズを学ぶことのできる多角的なプログラムになっています。
4日目に再び訪れた時に気づいたのは、受講生の皆さんの長足の進歩でした。楽器別マスタークラスでは、フレーズをさまざまなコードの中で展開させることの大切さを学ぶジョセリンのギター・クラス、声の響きを豊かにする呼吸法のエクササイズが紹介されたアリシアのヴォーカル・クラスなど多彩な内容が展開され、スモールアンサンブルの授業でも、バラード演奏の展開法を探るベニーのクラスや、ソリストとホーンアンサンブルのバランスを考えていくディエゴのクラス、エンディングの精度を上げていくクインシーのクラスなど、それぞれのグループで明日のガラコンサートでの演奏を想定した入念なチェックが進められています。
初日に比べて格段にレベルの上がった授業が行われているのですが、受講生の皆さんは講師やクラスメイトとこの数日間ですっかり打ち解けており、積極的に話し合いながらどんどん演奏の精度をアップ。気心も知れ、分かり合えた中でも切磋琢磨していることが伝わってきます。4日目の手ごたえを受講生さんたちに伺ってみました。

「今までの自分は、自分のプレーばかりを考えて、他人の音を聴くことがあまりできていなかったんですけど、このキャンプを通じて、バンド全体を意識し、自分の役割をちゃんと理解しようという気持ちを持てるようになりました」(中村響・Sax)

「ジョセリン先生に感謝しています。今まで自信を持てないまま弾いていた部分に対して、“それはとても良いプレーだから自信を持って大丈夫”と言ってくださって。前向きな気持ちで演奏できるようになりました」(佐藤俊介・G)

「技術的なこともたくさん教えていただけましたが、僕の心にもっともしみたのは、作曲をする際の気持ちの持ち方や精神的なあり方。自分の中で鳴っている音に対して誠実であろうという気持ちを新たにしました」(鈴木鵬生・作曲・編曲)

「大編成の譜面を書く際、演奏者が把握しやすくすることが大事だということを、挾間先生から御指導いただけました。明日のガラコンサートでは自分の曲を講師の皆さんに演奏していただくことになっているので、いまからワクワクしています」(中山優響・作曲・編曲)

こうした受講生の皆さんの5日間の成果が発揮されるガラコンサートと授賞式の模様は後編でリポートいたします。

【DAY1】初日の授業の様子はこちら

【DAY4】挾間さんの授業の様子はこちら

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