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text by Naotoshi Tamaru
photo by Naotoshi Tamaru/Wataru Setagawa/Mai Motoni

アメリカ・フロリダ州にあるIMGアカデミー。陸上競技に限らず、様々なスポーツのトップアスリートが世界中から集うトレーニング機関を訪れた、日本を代表するスプリンターである山縣亮太と福島千里。2019年シーズンを直前に控えた2人は何を思い、どのようなスタートを切ったのか。

IMGアカデミーとは?

1978年にテニスアカデミーとしてスタート。現在はテニスのほかゴルフや野球、そして陸上競技など8種目を展開するスポーツ教育機関。長期留学生として中高生が在籍するほか、フィジカルやメンタルなども含めた総合的なトレーニング施設としてプロやオリンピック選手、大学生などトップアスリートも世界中から練習に訪れている。

IMGアカデミー 公式サイト

※別ウィンドウでIMGアカデミーのサイトへリンクします。

(上)IMGアカデミー外観、(下)IMGアカデミーで使用している陸上トラック 写真

次のステージに行くために過去の自分と決別する

ウォーミングアップをする福島千里 写真

今回のキャンプでは英語のレッスンもありました。成長度合いはどんな感じでしょう?

「まだ苦戦しています(笑)」

(笑)。

「でも、(試合などのインタビューを想定して)実践的な英語を勉強できました」

レース(ノースフロリダ大学で開催されたSpring Break Invitational)に出た直後ですが(※インタビューは2日後に実施)、どのような手応えでしたか?

「“結果”という意味で満足はしていないですけど、昨シーズンから現在までの流れで言えば、それなりに得るものはあったと思います」

2018年末にフロリダに来た際と今回を比べると、表情が明るくなった印象を持ちました。

「12月は怪我からトラックに戻ってきたばかりで、取り組める練習の種類も本当に少なかった。昨年は出場予定の試合も棄権しなければならなかったことを思えば、スタートラインに立てたことだけでも、いろいろな人に感謝しないといけないなと思っています。“ベストパフォーマンスを出すこと”が目的であれば、まだ試合に出られる状態にはなかったですが、シーズンの初戦で、その後に大きな大会が控えていることを考えると、気温が高い場所でトレーニングをして、実践も経験できたのはとても良かったです」

フロリダ滞在は他の場所で練習するのと違いはありましたか?

「日本からトレーナーさんや治療をしてくれる方も一緒に来てくれたのは本当に贅沢でしたし、トレーニングルームやトラックが宿泊場所から近いので、ストレスもありませんでした。この合宿では栄養士さんも滞在してくれて食事の時間もチームで一緒に集まっていろいろなコミュニケーションを取ることができて、すべてがトレーニングに繋がる環境にいられました」

トレーナーや栄養士とコミュニケーションを取りながら食事をする福島千里 写真
オフの日に、フロリダのローカル・カフェでリフレッシュ。ヘルシーな食材を使ったハンバーガーやオープンサンドなどアメリカならではの食事を楽しんだ。

集中できる反面、閉塞感などはありませんでしたか?

「それはないです。最終的には自由というか、自己責任だと思うんですね。練習メニューを提案してもらうけど、内容を選ぶのも、やるのも自分です。結果が出ても出なくても、責任は100%自分にあります。どんな環境でも自分がベストを出せるように適応しなければならない、という考えが基本にあるので、たとえ良くない状況でもそれを“タフになる力を身につける”機会にすることはできます」

以前からそのような考え方だったのですか?

「競技人生の中で、良いことよりも嫌なことの方が多い……人生って、そういうものじゃないですか(笑)? すべてが思うようにはならない中で、それでも結果を出さないといけない。その一つの方法として考え方をそうすることも有効なのかなと思います。いろいろな意見をコーチングの先生や様々な人から吸収しようとしています」

他人からのアドバイスも含めて、意識がより柔軟になったきっかけはありましたか?

「出会う人に恵まれていて、アドバイスをくださったり、きっかけをもらったこともありました。記録が伸びていた時期でも、そうでない時も“何か変えていかないと”と常に思うようになりました」

成功した方が、さらに変化を求めるのは大変に思います。

「結果が出ても、過去のことに捕らわれていると頭打ちになります。体は慣れてしまうので、新しい刺激を入れないといけない。一生懸命やらないとできなかったことができるようになったとき、達成感というか満足はするんですけど、今度は“一生懸命さに欠けている”状態になる。だから、常に新しいことに挑戦しないといけないと気づきました。それから、次の目標設定をどこにおくのか。それが決まると、やり方が見えてきます」

スタートの位置にスタンバイしている福島千里 写真

現在の目指すゴールは?

「2020年です」

明確ですね。2020年を目標として、変化は必須だということですか?

「2016年は“終わったらやめてもいい”という、ある種の覚悟を持って練習しました。私なりにやれることはやって臨んだ大会だった。そこからさらに東京を目指すとなると、やりきったことをもう一度やるのは意味がありません。モチベーションを保つためにも、何かを変えないと前に進めなかったんです」

目標の2020年に向かって慎重に、そして大胆に挑戦する

スタートの位置にスタンバイしている福島千里(別角度) 写真

今シーズンがスタートを切りましたね。

「切っちゃいましたね(笑)」

もう少し待ってほしかったですか?

「可能ならば(笑)。でも、長ければ長いで“早く終わってほしい”という気持ちもあったりするから」

2020年に向かって準備する時間としては十分ではない?

「出られる大会も決まってますし、一つ一つ結果も出さないといけない。選択肢が多くはない中でベストを選ばなくてはならない。見極めて、決断する力も大事。ただ練習するだけでなく、その日の調子次第で想定と違うことも起こるので、一日一日が決断の連続になります」

それは楽しいですか? それともプレッシャー?

「“楽しい”というのとは違う気がします。でも“面白い”と思えることが大事かもしれません。楽しいというのは結果的な感情なのでどうしようもないですが、“これをやったらどうなるだろう?”とか、ある意味で“実験”というか面白がりなから進んでいけたらと思います……けど、まだまだできていないんですけどね(笑)」

私たちには想像もつかない状況というか、世界の舞台でスタートに立つことを想像すると、自分ならプレッシャーで死ぬ気がします(笑)。

「いや、私も似たようなものです。だから、早くゴールしたい。死にそうなプレッシャーから逃げて、走り切れば終わりますから(笑)」

(笑)。今年はどのように過ごす予定ですか?

「2020年のプレシーズンとしては、覚悟をもって、気を引き締めてやっていきます。昨年はケガがあったので、その間は自分の中で戦わないといけませんでしたが、回復してからは外のことも考えないといけない。今回の大会も、いくらケガから復帰したばかりだと言ってもタイムを縮めてくれるわけでもないですし、何が良くて何が悪かったのか、冷静に受け止めて次に活かす作業をしていきます」

山縣亮太らと集合写真をとる福島千里 写真
選手のほか、トレーナーや管理栄養士、鍼灸師などチームとして合宿に滞在。アクティブレストとしてIMGアカデミーのコーチとともにテニスを楽しんだ。

シーズン初戦、100メートルの結果は11秒96(+1.5)でした。

「私が初めて12秒を切ってから(最高記録の)11秒21にするまで6年掛かりました。それを数週間でやると考えるとお先真っ暗です(笑)。でも、出したことがないタイムではない。経験もあるし、新しい挑戦もしています。だから、チャンスもあると思うし、それを掴むために日々の1分、1秒を大切にしていきたいですね」

レースに出て、道筋は見えましたか?

「もし私が天才だったら、今回の大会で良い記録が出たかもしれません。期待はしていなかったのですけど、予想通り、そうはならなかった。結局、コツコツやらないといけないことが分かっただけでも収穫だったかもしれません。きっかけやチャンスはどこかにあると思うので、見逃さないように、じっくりいきます。そして“ここ”と決めたところでは力を出せるように、挑戦したいと思います。慎重に、そして大胆に」

山縣亮太「僕はまだ、やり尽くしていない。」

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福島千里 写真

福島千里(Chisato Fukushima)

1988年、北海道生まれ。女子100m、200mの日本記録保持者。日本選手権の100mでは2010年から2016年まで7連覇を達成。2008年の北京、2012年のロンドン、2016年リオとオリンピック日本代表として出場を果たした。

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