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【成田実生×大橋悠依 特別対談 前編】水面下でつながる絆。2冠の女王から新星へ渡される「大舞台の心構え」 【成田実生×大橋悠依 特別対談 前編】水面下でつながる絆。2冠の女王から新星へ渡される「大舞台の心構え」

【成田実生×大橋悠依 特別対談 前編】水面下でつながる絆。2冠の女王から新星へ渡される「大舞台の心構え」

文 久下真以子
写真 落合直哉

バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形(クロール)の4泳法をすべて一人で泳ぐことから、王者を「キング・オブ・スイマー」と呼ぶこともある個人メドレー。そんな称号に相応しい活躍を見せてきたのが、2021年の東京で日本女子初の個人メドレー2冠(200m、400m)を達成した大橋悠依だ。

そして大橋が現役を引退するまで、その後ろ姿を追い続けた若きエースが成田実生。2023年の日本選手権・個人メドレー(200m、400m)で優勝し、2024年のパリでも6位入賞を果たした19歳は、今年8月のパンパシフィック選手権、9月のアジア大会でも注目選手に挙げられている。

今回、長く女子個人メドレー界をけん引してきた大橋悠依と、これからの活躍が期待されるニューヒロイン・成田実生の「先輩・後輩対談」が実現。ともにTeam Seikoメンバーであり、同じ種目の過酷な水面下で戦ってきた2人だからこそ分かち合える競技への想いや互いへのリスペクト、そして未来への決意を、前編・後編に分けてたっぷりとお届けする。

前半では、互いの第一印象やアスリートとしての凄さ、そして日本代表として大舞台に臨む成田の意気込みに迫った。

大橋選手、成田選手 画像

2021年・東京の大舞台で頂点に立った大橋(右)の第一印象を、「ザ・トップアスリート」と表現した成田(左)

写真 落合直哉

お二人は日本代表で一緒に戦ってきましたが、「対談」となるとまた新鮮なのではないでしょうか。こういった機会は過去にありましたか?

大橋:初めて対談したのは、今年3月に開催された日本選手権のテレビ取材です。なので、今回で2回目ですね。選手同士だったときは「誰が何秒で泳いだ」とか「どういうペースで泳ぐのか」といった話のやり取りは多少ありましたが、競技についてじっくり話すタイミングはそんなになかったのでとても新鮮です。こういう機会をいただくようになってから、実生ちゃんが何を考えているのかわかるようになってきました(笑)。

成田:私もだんだん成績が上がるにつれて、悠依さんに聞きたいことも増えてきました。じっくりお話ができる貴重な機会なので、とても嬉しいです。

背泳ぎから「キング・オブ・スイマー」へ。過酷な種目に魅せられた理由

インタビューの様子

もともとはどちらも背泳ぎの選手だった。大橋は、「総合力で戦う種目のほうに適性があった」という

写真 落合直哉

水泳人生において、個人メドレーという種目で戦おうと思ったきっかけはあるのでしょうか?

大橋:個人メドレーを選んだというか、選ばざるを得ない状況になったという感じですね。もともとは背泳ぎの選手だったのですが、そこでは芽が出なかったんですよ。でも、軽い気持ちで個人メドレーに出てみたら上に行けた。単一の種目よりも総合力で戦う種目のほうに適性があった、ということですね。

成田:私ももともとは背泳ぎが専門で、メドレーリレーでは背泳ぎ担当でした!その後、個人メドレーに出てみた時に当時のコーチから「前半のバタフライと背泳ぎは全国トップレベルだよ」と教えてもらって。「もしかして個人メドレーなら全国大会の決勝に行けるのかな」と思い始めたのが、小学校高学年の頃です。そこから個人メドレーと背泳ぎで全国大会へ出られるようになりました。

それぞれの選択があったわけですね。4泳法をすべて泳ぎきる個人メドレーは、非常に過酷なイメージがあります。

大橋:400mは本当にキツいですね。残念ながら私には適性があったのですが、400m個人メドレーという種目を思いついた“創設者”を恨んでいます(笑)。それくらい大変。

成田:確かにキツいんですけど、私は全部泳げるのがいいところだなって思うんです。

大橋:それはわかる!練習していて種目を変えられるのはいいよね。競泳は一つの泳ぎ方で「50m×8本を4セット」とか、同じ練習を繰り返すことが多いんです。でも、個人メドレーなら1セットごとに泳ぎ方を変えることができるので、身体的にも気分的にも切り替えやすいです。

成田:いろんな種目の練習メニューをこなすのは楽しいですし、飽きないですね。

お互いに選手として「ここがすごい!」と感じる部分を教えてください。

大橋:泳ぎのセンスは間違いなくあります。しっかり水を捉えるのが上手な選手ですね。

成田:悠依さんの特長は、なんと言ってもダイナミックな泳ぎです。特に400mは体力勝負でもあるので、ひとかきでグーッと進める大きな泳ぎには憧れますね。身長が高く(174cm)、手足が長いので、海外の選手と並んでも引けを取らないのがすごいです。

大橋:ありがとう。でも、海外の選手は本当に大きいよ(笑)。

世界へ挑む夏。「自分を超える」挑戦と、頂点を知る先輩からの言葉

インタビューの様子

「自分に向き合える、悔しさを成長の原動力にできるのが実生ちゃん(成田)の強み」と大橋は分析する

写真 落合直哉

成田選手は今年8月のパンパシフィック選手権、9月のアジア大会と、国際大会を控えています。日本代表に内定したときはどんな心境でしたか?

成田:選考会ではうまくいかないこともたくさんあったので、まずは切符をつかむことができてよかったなと。嬉しいというよりは、ほっとした気持ちが一番でした。

大橋:それぞれの大会に向けて、具体的な目標やミッションはあるの?

成田:今は各国の選手のレベルがどんどん上がってきています。その中で結果を出すのは簡単なことではないのですが、自分の持っているものを高いアベレージで出したいですね。パンパシとアジア大会の間にはインカレ(日本学生選手権水泳競技大会)もあるので、連戦の中で自己ベスト更新を狙い、続く大会にいい結果でつなげられたらと思っています。

大橋:その中で、チャレンジしてみたいことはある?

成田:レース展開という点では、いろいろ挑戦してみる年にしてもいいのかな、と考えているところです。私は前半のレース運びが課題なので、最初から攻めてみるとか、そういうチャレンジができたらと思っています。

大橋:今年のような4年に一度の大舞台の間に当たる年は「中間年」と言うのですが、中間年は自分のやりたいことや得意・不得意、進化の可能性などを見極めて、新しいことに挑戦しやすい時期でもあるんです。だから、私としても実生ちゃんには今後に向けていろんな挑戦をしてほしいですね。

大舞台で金メダルを2つも取った大橋さんから、成田さんへ送る言葉はありますか?

大橋:東京の開催前によく考えていたのは、「メダルを取りたいのも、そのために何年も努力してきているのもみんな一緒」ということです。でも競技とは残酷なもので、スタート台に立った数分後には明暗が分かれてしまいます。そういう状況で、どれだけ冷静にいられるか。気持ちが先走りすぎてもだめだし、技術や論理ばかりに偏ってもよくない。どちらも噛み合った時にはじめて、最高の泳ぎができると思っています。

成田:ありがとうございます!今年のアジア大会は日本開催、競泳は東京でレースが行われるので、そこで最高の泳ぎを見せたいです。応援してくれている人がワクワクするようなレースができたらと思っています。

(後編へ続く)

【成田実生×大橋悠依 特別対談 後編】大舞台で戦ってきた2人の「時間の使い方」と、自分を超えるための「メンタルパフォーマンス」

成田実生

女子競泳選手
成田実生

2006年生まれ、東京都出身。2022年に400m個人メドレーで世界ジュニア記録を樹立。2023年の日本選手権では200m・400mの個人メドレー2冠に輝いた。同年7月の世界水泳選手権に日本代表として出場。9月のアジア大会では400m個人メドレーで3位と好成績を収めている。初の大舞台となった2024年のパリ大会では400m個人メドレーで6位入賞。日本競泳界の未来を担う存在として、今後のさらなる飛躍が期待されるニューヒロイン。

大橋悠依

セイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)
大橋悠依

1995年生まれ、滋賀県出身。2017年の日本選手権・400m個人メドレーで日本新記録を樹立し、同年の世界水泳ブダペスト大会・200m個人メドレーで銀メダルを獲得。2021年の東京では競泳日本女子史上初となる個人メドレー2冠(200m・400m)を達成した。同種目の日本記録保持者。2024年10月に現役生活を引退。現在はセイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)などを務め、次世代の育成や水泳の普及に貢献している。

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