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スポーツクライミングの競技ルール・⾒どころを知ろう(2/4ページ)

頭を使う「ボルダリング」

日本では趣味として楽しむ方も多い「ボルダリング」は、「登った課題(コース)の数を競う種目」です。選手が登るのは4〜5メートルの壁で、ロープなどの安全器具は使わず、下にはマットが敷いてあります。壁にはさまざまなサイズ、形、配置の「ホールド」と呼ばれる突起物がついており、手足や体全体を使ってそれを利用し、頂上にあるゴールのホールドを目指して登っていきます。ゴールのホールドを両手でつかむことができれば「完登」となり、選手は次の課題(コース)へ。4〜5分間の制限時間内にいくつの課題をクリアできたかによって、勝敗が決まります。

完登数が同じ場合、次に勝敗の指標となるのは「ゾーン」の獲得数です。ゾーンとは、各課題の中間点に設けられているホールドのことで、ここをつかむとゾーンポイントが認められます。

完登数、ゾーンポイントがいずれも並んだ場合は、「アテンプト(トライ)」の数で勝敗が決まります。ボルダリングは、途中で落ちてしまっても、制限時間内なら何度でもチャレンジすることが可能です。ただし、完登までに挑戦した回数を「アテンプト」といい、この数が少ないほど評価が高くなります。つまり、理想は1回のトライで完登するクライミングで、これは「一撃」「フラッシュ」などと呼ばれます。

スポーツクライミング 写真

ボルダリングは「ホールド」と呼ばれる、さまざまな形状の突起物がついた壁を登り頂上を目指します。制限時間内に複数の課題(コース)をクリアした数で勝敗が決します。

◆ ボルダリングの見どころ

ボルダリングの最も面白いところは、体だけでなく“頭”も使う種目であることです。なぜかというと、選手は課題(コース)を競技直前まで見られないからです。他の選手のプレーも見られないため、自分がどんなコースを登るのかを事前に知ることができません。

そのため、スタート直前(もしくはスタート後)の短時間で登り方を考える必要があり、これを「オブザベーション」といいます。そして、このオブザベーションの力が、ボルダリングにおいて非常に重要な要素となるのです。

どのホールドを使って、どのルートで登っていけば完登できるか。最も効率的な方法を、瞬時にシミュレーションする力が求められるため、ボルダリングは「体を使ったチェス」とも言われます。ベストなプランは個々の身体能力によっても変わってきますし、確実に成功できる方法を取るか、失敗を恐れず大胆なトライをするかなど選手の性格もわかります。各選手のアイデアや戦略を感じられるのは、ボルダリングの大きな魅力です。

タイムを競う「スピード」

続いて「スピード」は、その名の通り「壁を登る速さを競う種目」になります。ルールは至ってシンプル。安全確保のためのロープの繋がったハーネスを装着した選手が2人ずつ一対一で対戦し、高さ15メートル、前傾5度、ホールドの位置も世界基準で同一と、まったく同じ条件の壁を登ります。頂上のパネルをタッチするまでのタイムを競うスプリント種目です。

スポーツクライミング 写真

スピードは「ホールド」がついた高さ15メートル前傾5度の壁を、いかに速く登るかタイムを競います。

◆ スピードの見どころ

スピードの見どころは、なんといってもコンマ1秒単位の差で勝負が決する“高速バトル”。陸上競技にも似たスリルを味わえるという点で、観戦初心者にもわかりやすく、観客の瞬間的な盛り上がりも非常に大きな種目となっており、若い世代にも大人気。

驚くのはそのスピード感。現在(2021年7月時点)の世界記録は、男子が「5秒48」(2017年更新)、女子が「6秒96」(2020年更新)で、選手はビルの3階くらいに相当する15メートルの高さをあっという間に上がっていきます。

加えて、陸上や競泳の同じスプリント競技と比べて、絶対優位と見られていた選手がホールドを踏み外して落下する、といったアクシデントが起こりやすく、ドラマや番狂わせが多く見られるのも魅力のひとつ。身体能力や技術だけでなく、選手には本番で失敗しないメンタルの強さも求められます。

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