セイコー時間白書2026

タイパは意識も行動も定着し、急速に広がるAI活用で一層加速
一方、タイパ的ではない行動も重視され、時間の使い分けも

タイムパフォーマンス(タイパ)は時間の使い方として定着し、日常生活でのAI活用も増えています。効率化につながるタイパとAI、加速することで時間の価値がどう変化するのか、15歳〜69歳男女1,200人を対象に調べました。

タイパはもはや当たり前
生活者の6割以上が「タイパを意識して行動」「タイパ重視の考え方は社会に定着」と回答

まずタイパ意識について聞くと、61.0%が「タイパを意識して行動」し、65.8%が「タイパを重視する考え方は社会に定着」と答えました。昨年と比較すると、タイパ意識は60.4%から61.0%、社会の定着は62.1%から63.8%とどちらも微増傾向を示しています[図1]。個人的にも社会的にも、タイパの定着が認められているようです。

タイパ意識 グラフ

タイパは「豊かな生活時間の使い方」であり
時間効率を高められると「心が満たされる」がさらに増加


次に、時間の使い方についてAとBのどちらが自分の考えに近いか、選択してもらいました。
まず、①タイパを常に考えて過ごしたいか、タイパを考えずに過ごす時間も欲しいかと聞くと、タイパを考えず過ごす時間も欲しいと答えた人の方が41.2%と多いものの、昨年(43.2%)より2.0ポイント減少しています。タイパを常に意識して過ごしたいと答えた人は32.7%ですが、昨年(29.8%)より2.8ポイント増えています。 また、②タイパがよい過ごし方をすることが豊かな生活時間の使い方と思うか思わないかを聞くと、「豊かな生活時間の使い方」だと思うと答えた人が39.3%と、思わない(28.7%)と答えた人より10.7ポイント多く、昨年(37.0%)より2.3ポイント増えています。同様に、③時間効率を高められると「心が満たされる」と思うと答えた人は41.4%と、思わない(27.3%)と答えた人より14.2ポイント多く、昨年(37.8%)より3.6ポイント増えています[図2]。

時間の使い方 グラフ 時間の使い方 グラフ

プライベートでAIを利用する人が半数超え
AIは時間効率を高め、時間の使い方の相談相手にも

次にAIについて聞きました。①「AIは自分の日常に浸透している」と思うと答えた人は52.1%で、思わない(47.9%)と答えた人より4.2ポイント多く、昨年(46.3%)から5.8ポイント増えています。②「プライベートでAIを利用している」と答えた人は51.9%と半数を超え、昨年(31.8%)から20.1ポイントも増えています。また、③4割近くが「AI機能を使って時間効率を高めている」(38.3%)と答え、昨年(31.1%)から7.3ポイント増えています。昨今のAI利用の高まりを受け、今回新たに④予定の組み立て方や時間の使い方をAIに相談することがあるかと聞いたところ、30.1%が「相談することがある」と答えており、約3人に1人が日常的な意思決定の場面でAIを相談相手として活用していることが明らかになりました[図3]。

AI活用 ランキング AI活用 ランキング

利用するAI機能は「仕事の相談」「人生相談」「愚痴の相手」と多岐にわたる
利用するのは10代に多く、50代・60代は少ない

AI機能で利用したことがあるものを挙げてもらうと、「仕事の相談に乗ってもらう」(23.6%)、「人生相談に乗ってもらう」(23.0%)、「愚痴を聞いてもらう」(21.4%)が上位に挙げられ、仕事でもプライベートでもAIに気軽に相談しているようです。昨年と比較するとほとんどの項目でスコアが高くなっています[図4-1]。
上位項目を年代別に見ると、10代の利用率が高く、50代・60代は低くなっています[図4-2]。

利用したことがあるAI機能 ランキング 利用したことがあるAI機能 ランキング
年代別、利用したことがあるAI機能 グラフ 年代別、利用したことがあるAI機能 グラフ

タイパが定着しAIが急速に浸透する中、効率化を追わない“メンパ時間”を重視する傾向
タイパとメンパの“時間の使い分け”も

タイパが定着しAI利用が広がる中、何もしない時間について、74.3%が「必要だと思う」と答え、「不必要」(9.7%)と答えた人は1割以下でした[図5]。時間の使い方を聞くと、「時には立ち止まってひとつのことを考えたい」73.9%、「じっくりと考え事をするのが好きだ」74.9%と7割以上が賛同しており、時間の使い分けが進んでいると推測されます[図6]。
今回の調査では、心の充足感や納得感、人とのつながりなど、精神的な満足度を重視する時間価値を「メンパ(=メンタルパフォーマンス)」と定義しています。AIの浸透で効率化が進む中、何もしない時間や立ち止まる時間、じっくり考える時間などの“メンパ時間”を大切にする傾向も見られました。

何もしない時間について、時間の使い方について グラフ 何もしない時間について、時間の使い方について グラフ

“時間の使い分け”は年代によって違いも
好きなお店に並んだり、手間がかかることや、答えがないことを考える時間を求める10代・20代

また、タイパ的ではない時間の使い方は、年代による違いも見られました。「好きなお店に並ぶ時間は気にならない」と答えた人は、10代では59.5%と約6割が行列OKと答えていますが、50代では28.5%と少なく、行列NGの割合が高くなっています。「手間がかかるものごとに惹(ひ)かれる」のは10代(41.5%)、20代(47.5%)が多いのに対し、40代(28.5%)以降は少なく、「答えがないことをモヤモヤと考える時間が欲しい」のも10代(57.5%)、20代(58.5%)に多く、50代(37.0%)、60代(38.0%)は少なくなっています[図7]。

タイパ的ではない時間の使い方 ランキング タイパ的ではない時間の使い方 ランキング

進む!時間の使い分け 約6割が意識的に実践中
自分軸での時間の使い方が広がり多様化が加速

タイパを重視しつつメンパ視点でも選ぶ“時間の使い分け”傾向。具体的にどんな使い分けが行われているのか、 15歳〜69歳男女1,200人に高校生男女200人を加えた1,400人を対象に調べてみました。

意外な事実!実は高校生・10代の半数が「SNSやネットを見る時間」を短縮したいと望む一方、
「誰かと食事をする時間」は長くしたいと考えている

時間にまつわる行動を提示し、短縮したい時間を聞くと、1位「テーマパークの行列に並ぶ時間」(48.1%)、2位「人気の飲食店の行列」(44.9%)、3位「SNSやネットを見る時間」(43.0%)が挙げられました。年代別に見ると、人気の飲食店の行列を短縮したいのは50代(55.5%)に多い一方で、10代は少なく(34.5%)、逆に「SNSやネットを見る時間」は高校生(55.5%)や10代(52.5%)では半数以上が短縮したいと感じているのに対し、60代は30.5%と少なくなっています[図8]。
一方、長くてもかまわない時間は、1位「一人で過ごす静かな時間」(57.2%)、2位「誰かと食事をする時間」(46.5%)、3位「自分へのご褒美を選ぶ時間」(41.7%)の順となりました。年代別に見ると、「一人で過ごす静かな時間」は50代(62.5%)に多く、「誰かとの食事」や「自分へのご褒美」は高校生(「誰かとの食事」57.0%、「自分へのご褒美」51.5%)や10代(「誰かとの食事」52.0%、「自分へのご褒美」52.0%)に多くなっています[図9]。

短縮したい時間、長くてもかまわない時間 グラフ 短縮したい時間、長くてもかまわない時間 グラフ

約3人に1人(32.0%)が時間をお金で買う経験あり 20代では47.5%と約半数にも

[図8]の通り、行列に並ぶ時間は短縮したい時間の代表的なものですが、テーマパークにおけるファストパスや優先チケットなど、追加料金を払って行列を回避し、最速で目的を達成する方法も登場しています。
このような時間短縮のために追加でお金を支払った経験を聞くと、全体の68.0%が「ない」、32.0%が「ある」と答えました。年代別に見ると、20代で経験ありの割合が最も高く、47.5%と約半数がお金で時間を購入しています[図10]。

時間短縮のためにお金を使った経験 グラフ 時間短縮のためにお金を使った経験 グラフ

タイパ的な「効率」「合理性」より
「夢中」「没頭」「気持ちが整う」「納得感」が得られる“メンパ時間”が良い時間の使い方に

良い時間の使い方を聞くと、「夢中になったり没頭できること」(65.2%)、「気持ちが落ち着いたり整ったりすること」(59.0%)、「自分が納得できる選択ができていること」(58.3%)が上位となりました。「できるだけ早く効率よく終わらせられること」(46.4%)や「無駄がなく、合理的に進められること」(45.4%)といったタイパ的な時間の使い方よりも、自分の気持ちを優先する“メンパ時間”の方が良い時間の使い方と認識されているようです[図11]。

良い時間の使い方と思うもの ランキング

約6割が時間の使い方の変化を実感、納得できる選択や自分にとっての心地よさを重視
63.6%が“自分軸”でタイパとメンパの時間の使い分けを実践

また、この数年で時間の使い方・考え方が変わったかと聞くと、58.7%と約6割が「変わった」と答えています。具体的な変化としては「多少時間がかかっても、『自分が納得できる選択』をしたいと思うようになった」74.6%、「効率がいいかより、『自分にとって心地よいか』を基準に考えることが増えた」67.3%と、メンパを意識した、自分軸での時間の使い方が重視されているようです[図12]。
効率化したいタイパ時間とあえて効率を求めたくないメンパ時間を使い分けているかと聞くと、63.6%が「使い分けている」と答えました[図13]。タイパとメンパ、“自分軸での時間の使い分け”が着実に広まっているようです。

時間の使い方・考え方の変化、時間の使い分けをしている グラフ 時間の使い方・考え方の変化、時間の使い分けをしている グラフ

時間の使い分けが進み、時間感覚に揺らぎ
無理に合わせるのではなく、必要なときだけ共有すれば

“自分軸での時間の使い分け”が始まっている現在、時間の使い方の多様化により、時間の感覚にも違いが生じるようになるのかもしれません。時間の共通認識について調べました。

現代人の「少し早め」は10分前が大勢
一方、「5分前」「20分以上前」と感じる人も1割ずつと時間感覚のズレ発生

時間感覚の「少し早め」とは何分前を指すのか具体的に聞くと、「10分前」が52.6%と半数を占めています。一方、「5分前」(10.6%)や「20分以上前」(8.4%)と答えた人も約1割いることから、「少し早め」の時間感覚にもズレが生じています[図14]。

「少し早め」は何分前? グラフ

つい言いがちな「なる早で」、言われた人の約3人に1人はどうしていいか悩んでいる

また、「なる早」もよく耳にする言葉ですが、「なる早で」と言われた場合にどう感じるか聞きました。すると、「だいたいの緊急度は文脈から判断できる」(32.6%)、「相手との関係性や状況から大体察する」(30.8%)といった意見が多く、“なんとなくこれぐらいかな”と感覚的に捉える人が多いようです。
一方、「具体的にいつまでなのかわからず判断に迷う」(15.2%)、「急ぐべきなのか余裕があるのかわからない」(11.5%)、「自分のスケジュールをどう調整すべきか悩む」(11.4%)、「相手に確認しづらい」(8.7%)といった意見もあり、この4項目のうち一つでも該当する人は35.9%と少なくなく、「なる早で」は言われた人の約3人に1人が悩んでいるようです[図15]。

なる早で」と言われたら? グラフ

現代人の約9割が、他の人との時間感覚が合わない経験あり

自分と他の人との時間感覚が合わないと感じた経験を聞くと、13.1%が「よくある」、42.8%が「時々ある」、32.9%が「たまにある」と答え、合計で全体の88.7%が他人との時間感覚のズレを感じています[図16]。時間感覚が合わない経験がある1,242人に、時間感覚が合わないときの対応を聞くと、多くの人が「できるだけ周囲に合わせるようにした」(86.3%)と歩み寄り、「具体的な時間を伝えるようにした」(83.3%)、「お互いにすり合わせるようにした」(73.4%)といった対応を取っています。しかし、「合わない人だと思った」(85.1%)、「相手との付き合いを面倒だと感じた」(82.8%)、「相手と距離を置いた」(69.5%)という人も少なくなく、半数近くが「相手とケンカや言い合いになった」(45.4%)と答えています。相手とケンカになったと答えた人を年代別に見ると、高校生(52.0%)・10代(54.1%)・40代(50.0%)に多く、半数を超えています[図17]。

時間感覚が合わない経験、時間感覚が合わないときの対応 グラフ 時間感覚が合わない経験、時間感覚が合わないときの対応 グラフ

時間感覚が人によって違うのはもはや「当然」、必要なときにすり合わせればOK

時間感覚が合わないと感じたりズレが生じたりしている現代。時間感覚が合わないことについて聞くと、80.8%が「時間の感覚が人によって違っていて当然だ」と思い、72.1%が「時間感覚が違う場合はその都度すり合わせればよい」と思っています[図18]。
全員が同じ時間感覚を持つことへのこだわりはなく、違って当然でその都度すり合わせればOKと捉え、時間感覚に“みんなの共通”を求めるのではなく、“人によって違う”ことを前提に考える人が多くなっています。

時間感覚の考え方 グラフ

みんなで一緒は過去形に リアタイじゃなくても一緒じゃなくても、それぞれ自分の時間軸で行動

時間に関する行動を挙げ、あてはまるものを選んでもらいました。すると、「ドラマや番組をリアルタイムではなく後から見ることが多い」(40.6%)、「休み時間や空き時間を誰かと過ごすより一人で使うことが多い」(39.5%)、「流行や話題をみんなと同じタイミングで追わなくても気にならない」(38.5%)といった意見が約4割と多くっています。また、約4人に1人は「一人でご飯を食べることが増えている」(25.1%)と感じ、「同時に集まらなくても、グループチャットやSNSなどで連絡が取れれば十分だと感じる」(24.6%)と答えています[図19]。
みんなが一緒に行動したり時間を共有することは、少なくなっているようです。

時間に関する今どきの選択 ランキング

共有する時間感覚も多様化
「世代間で違う」「みんなが同じ必要はない」と認めつつ、一抹の寂しさも

共有する時間の考え方を聞くと、「世代によって時間の共有に対する感覚は違うと思う」(73.4%)が7割を超え、「必要なときだけ共有できれば十分だと思う」(67.0%)、「自分のペースで使える時間が増えて心地よい」(61.0%)といった意見が多くなっています。また、半数が「以前は当たり前だった同じ時間を共有することが今は必ずしも必要ではなくなってきていると思う」(57.6%)、「人と共有する時間が減っていると感じる」(54.4%)と答え、時間感覚が人それぞれ違うことを認め、自分にも他人にも時間感覚の共有を求めないようになっています。
一方、「本当はもっと一緒に過ごす時間があった方がいいと思う」(49.4%)も半数近くあり、「以前より人との時間が減った気がして少し寂しい」(38.4%)と感じる人もいます[図20]。

現時点での老後に向けた意識や行動 グラフ

ムダに感じる時間は「ダラダラ時間」や「スマホ時間」

ムダにしたと感じる時間を聞くと、「なんとなくダラダラすごした時間」(42.3%)、「目的もなくスマホを見続けた時間」(39.8%)、「付き合いで参加したがあまり気が進まなかった時間」(38.1%)、「寝る前にスマホを見て睡眠時間が削られた時間」(35.7%)が上位に挙げられました。年代別に見ると、スマホに関わる時間をムダと感じるのは高校生や10代に多く、50代・60代は「移動や待ち時間が長かった時間」をムダに感じる人が多くなっています[図21]。

ムダにしたと感じる時間 グラフ ムダにしたと感じる時間 グラフ

あなたの時間感覚はどのタイプ?
時間感覚4タイプ発表! 生活者の約3人に1人が「バランス型」

時間感覚にはどのようなタイプがあるのでしょうか? 時間学の専門家・一川誠先生監修の下、個人が時間の使い方の決定を他者や場に帰属させる「共有型」or自分に帰属させる「個人型」、時間の運用においてみんなでそろえる・守るを重視する「固定型」or組み替えたり調整したりを試みる「可変型」の組み合わせから四つの時間感覚タイプ(共有型✕固定型…シンクロ型 共有型✕可変型…バランス型 個人型✕固定型…マイルール型 個人型✕可変型…マイペース型)を設定しました。アンケートの設問で①を最も多く選択した人はシンクロ型、②はバランス型、③はマイルール型、④はマイペース型となります。分析の結果、最も多かったのが、人や場に合わせ時間を調整する時間感覚を持つバランス型(34.3%)で、高校生(40.0%)・10代(39.5%)に多くいます。次が自分の裁量で時間を組み替えるマイペース型(27.5%)で、50代(31.5%)・60代(33.5%)に多くなっています。年齢を重ねて時間的にも気持ち的にも余裕が持てることで、時間を自分のペースで味わう方が増えるようです。

4タイプ別時間感覚分布 グラフ 4タイプ別時間感覚分布 グラフ

時間感覚4タイプのペルソナ

コラムで紹介した時間感覚4タイプについて、各タイプ別のペルソナを導きました。

【シンクロ型】
みんなの時間を最適化したい 
気遣いタイパ人

シンクロ型 人物イメージ画像

時間はみんなでそろえるという意識の「シンクロ型」は生活者の約1割。時間は「自分のものではなく、みんなで成立させるもの」と捉えています。時間に追われながらも効率よく回すことを追求し、時間短縮にお金を使うこともいとわないタイパ人です。 その一方で、人と過ごす時間を大切にし、増やしたいと望んでいます。時間感覚のズレはすり合わせて調整し、みんなの時間を最適化したいという気遣いの人ですが、その反動からか、ひとりで過ごす時間が足りないと感じることも多いようです。

各設問ごとのシンクロ型の回答割合 グラフ 各設問ごとのシンクロ型の回答割合 グラフ

【バランス型】
空気を読みながら時間を編む 
令和バランサー

バランス型 人物イメージ画像

今回の調査で約3人に1人と最も多いのが「バランス型」です。時間は「周囲の関係性を心地よく保つために調整するもの」と捉えています。人と一緒に過ごす時間を重視し、増やしたいと望んでいるため、人と関わる時間が減っている昨今の状況に寂しさを感じています。一方、自分が納得いく時間の使い方を志向し、効率化する時間と効率化しない時間の使い分けを意識的に実践。周りとの時間の共有に気を配りつつ、自分の時間も大切にするバランスのとれた時間感覚を持っています。

各設問ごとのバランス型の回答割合 グラフ 各設問ごとのバランス型の回答割合 グラフ

【マイルール型】
成果と納得を追う 
ストイックなタイムマネージャー

マイルール型 人物イメージ画像

生活者の約2割は自分の時間を守る「マイルール型」です。時間は「自分の目的達成のために使うリソース」と捉え、タイパ優先で効率的に時間を使い、最短ルートでの達成に満足を感じるタイパの申し子です。常に時間に追われる感覚が強く、趣味や遊びの時間は全然足りないと不満気味。対人関係はクールで、時間感覚が合わない相手とは距離を置き、必要な関係だけ維持すればいいと徹底しています。自分時間は自分でコントロールしたい! ストイックにわが道を追求するタイプです。

各設問ごとのマイルール型の回答割合 グラフ 各設問ごとのマイルール型の回答割合 グラフ

【マイペース型】
時間に追われない 
おおらかな自分時間の達人

マイペース型 人物イメージ画像

自分の裁量で時間を組み替える「マイペース型」は、時間は「縛るものではなく味わうもの」が信条。タイパ重視社会の中で、時間に追われたり足りないと感じることも、タイパを意識して行動することも少なく、時短のためにお金を使うこともしません。合理化や時間効率ではなくゆとりのある生活を志向し、ムダな時間に幸せや満足感を感じる傾向があります。相手にそれを求めることもせず、時間感覚について話し合うこともしないようです。時間に追われずおおらかに過ごす自分時間の達人です。

各設問ごとのマイペース型の回答割合 グラフ 各設問ごとのマイペース型の回答割合 グラフ

10年間、時間に追われっぱなしの現代人
やることがないと不安になる一方、「何もしない時間」は大切にしたい

2017年にスタートした「時間白書」は今回で10回目になります。これまでの定点観測から、時間の使い方や時間感覚の変遷を見てみましょう。

この10年、生活者は「時間に追われ」「1日24時間では足りない」と感じ続けている

普段、時間に追われていると感じるか聞くと、今回は63.4%が「感じている」と答え、昨年(64.0%)と大きな差はありません。コロナ禍後の2024年は70.8%と7割を超えましたが、過去10年、時間に追われていると感じる人は6割台で推移しています。
時間に追われる感覚が「強くなった」(50.6%)も昨年(49.2%)と大差なく、2020年から徐々に増えた後5割前後で定着しています。また、1日24時間では「足りない」と感じる人も、昨年(56.9%)とほぼ同水準の56.7%で、こちらも10年間、5割台後半をキーブしています[図22]。生活者の半数以上が日々時間に追われ、24時間では足りないと感じる10年でした。

普段の時間の感覚 グラフ 普段の時間の感覚 グラフ

「1分もムダにせず」「朝活」に勤しみ、「やることがないと不安」に感じてしまう生真面目な日本人

また、時間の使い方を見ると、今回は「朝活に取り組んでいる」(29.8%)、「1分でもムダにしたくない」(37.7%)、「やることがない時間が出来るとつい不安になってしまう」(33.2%)が過去最も高い数値となっています[図23] 。 1分もムダにしないよう朝活に勤しみ、やることがないと不安に感じてしまう生真面目な日本人像が浮き彫りになっています。

時間の使い方 グラフ 時間の使い方 グラフ

自分の1時間の価値、この10年で値上がりするも、プライベートの時価はここ数年は減少傾向

仕事・家事・勉強をするオンタイムとプライベートなオフタイムの時間について、自分にとっての1時間の時価をそれぞれ値付けしてもらいました。その結果、平均でオンタイムは1時間4,836円(昨年4,780円 +57円)、オフタイムは11,305円(昨年12,727円 −1,423円)となり、オフタイムの時価が値下がりしています。 2017年と比較するとオンタイム(伸び率31.8%)もオフタイム(伸び率79.5%)も値上がりしているものの、ここ数年はオンタイムは横ばい、オフタイムは減少傾向を示しています[図24]。

自分の1時間の価格(平均) グラフ 自分の1時間の価格(平均) グラフ

「何もしない時間」を大切にしたい人が増加、1週間の中で最も大切にしたい時間は「華金22時台」

[図23]の通り、やることがないと不安に感じてしまう現代人ですが、一方で、「何もしない時間」を大切にしたいと答えた人は56.1%、増やしたいと答えた人は50.0%と、2021年から増加傾向を示し、今回が最も高くなっています[図25]。 そこで1週間の中で最も大切にしたい時間を聞くと、1位「金曜日PM10時台」(4.3%)、2位「土曜日PM9時台」(3.8%)、3位「土曜日PM10時台」(3.3%)の順となりました。オフタイムが始まる金曜日の夜が、昨年に引き続き最も大切にしたい時間となっています[図26]。

「何もしない時間」の価値、1週間の中で最も大切にしたい時間 グラフ 「何もしない時間」の価値、1週間の中で最も大切にしたい時間 グラフ

今回の調査結果について、「時間学」が専門の一川誠先生にお話をうかがいました。

「効率だけじゃない! 主観的満足度(気持ちの充足感)も重視する“時間の使い分け”が広まる」

今回の調査結果から、現代人の時間の捉え方が多様化し、一層柔軟になっていると感じられました。効率を重視するタイパはすっかり定着していますが、同時にあえて効率を追求しない時間の使い方も増えています。
本文ではメンパと定義していますが、効率だけでなく、気持ちの充実を優先し主観的満足度を高めることを重視する傾向がより強くなっていることが見られました。タイパとは単に時間的な効率を追求することだけではなく、作業の時間効率を上げることによって時間的なゆとりを生み出すことも目論まれる行動パターンだと思います。ここ数年で多くの人がタイパを実践することを通して、時間効率を高めることよりも、より主観的な満足感・充足感を大事にしたいという意識を強くしたように思われます。タイパとメンパはタイパ対メンパという対立構造ではありません。時間をムダにしないというタイパ的な効率基準に、どの時間に何を求めるかを主体的に選ぶ気持ち基準が加わったと考えられます。個人の価値観に根差し、気持ちの充足度を高めることを重視する、効率だけじゃない時間の使い分けが広がっているようです。

急速に広まるAI活用でタイパは加速 そこで生まれた余白時間がメンパ時間の充実に

今回の調査結果で特に注目したいのがAIの普及です。「図3②」の通り、プライベートでAIを使う人がたった1年で20ポイントも増えています。AIは今まさに急速に使われ始めた新しい道具です。ここしばらくは利用が増え続け、あれこれ使っていくことで問題点が明らかになり、試行錯誤を重ね、もっといい使い方ができるようになるでしょう。
AIの活用によって効率化が進み、日常の意思決定やタスク処理にかかる時間は短縮されています。その一方で、何もしない時間や考える時間などのメンパ時間も重視されています。AI利用でタイパが加速し、そこで生まれた余白時間が効率基準ではないメンパな時間として大切にされるのかもしれません。

時間感覚は人それぞれの時代へ 共有体験をどう創りコミュニティーを維持するか?が社会課題に

また、約9割が「時間感覚が合わない」[図16]、約8割が「時間の感覚が人によって違っていてのが当然」[図18①]と答えたのも驚きでした。時間がもはや共有前提のものではなく、個人差のある主観的なものとして広く理解されていることが伺われます。自分のペースでいろいろなことができるようになったことはメリットだと思いますが、逆に言えば、同じ体験を同じ時期にする共有体験が減ってしまうことになり、個人の体験がどんどん細分化され、コミュニティーからだんだんと切り離されてしまうことが懸念されます。コミュニティーを共同体として維持するためには、お祭りや万博やオリンピックのような特別なイベントでみんなが同じような経験をする機会が重要です。体験の豊かさや文化的豊かさは、エントロピー増大の法則※が当てはまり、乱雑にバラバラになりやすいものです。それをどう工夫していくか? これからの社会課題となりそうです。
※エントロピー増大の法則=物事は自然に任せる限り時間の経過とともにだんだんと乱雑になっていくとする法則。

あなたはどのタイプ? 「時の記念日」に自分の時間感覚タイプを探ってみましょう

今回提示した時間感覚4タイプは、時間の使い方・感覚が多様化していることを示すものです。個人の時間の使い方の決定を他者に帰属させる「共有型」、自分に帰属させる「個人型」と、時間の運用の際にあらかじめ決めたスケジュールを守ることを重視する「固定型」、状況に合わせて調整する「可変型」の組み合わせから4タイプを設定しました。設問に①〜④の選択肢から選んで答えます。選んだ回数の多い番号が自分のタイプに対応します。回答数が同数や割れる場合は、予備設問で判断しますが、それでもタイプが定まらない境界型の人もいます。今回の調査では、人や場に合わせ時間を調整する「バランス型」が多く、年代的には高校生や10代に多くなっています。一方50代・60代は、自分の裁量で時間を組み替える「マイペース型」が多くなっています。年齢やライフステージによっても時間感覚は変化していくようです。さて、あなたの時間感覚はどのタイプでしたか?

一川 誠(いちかわ・まこと)先生

一川 誠(いちかわ・まこと)先生

千葉大学大学院 人文科学研究院教授
専門は実験心理学。実験的手法により、人間が体験する時間や空間の特性、知覚、認知、感性の研究に従事。
現在は、視覚や聴覚に対して与えられた時空間情報の知覚認知処理の特性の検討を行っている。「大人の時間はなぜ短いのか」(集英社新書)、「時計の時間、心の時間-退屈な時間はナゼ長くなるのか?」(教育評論社)など著書多数。

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