

個人メドレーの女王・大橋悠依さんが直接指導!「時育®セイコーわくわくスポーツ教室」で学ぶ美しく速い泳ぎ
取材・文 大西マリコ
写真 落合直哉
ヘアメイク 長谷川真美
セイコーの次世代育成活動「時育®」の一環として、「時育®セイコーわくわくスポーツ教室 水泳編」がLOCOKウェルネスガーデン品川御殿山にて開催されました。講師はTeam Seikoでセイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)の大橋悠依さん。2021年の東京での世界の大舞台で200m/400m個人メドレーで2冠を達成した『個人メドレーの女王』であり、2024年に現役を引退するまで数々の国際大会で競泳日本代表を牽引した元トップスイマーです。わくわくスポーツ教室で講師を務めるのは、2024年1月に開催された「セイコーわくわくフェスタ」以来であり、約1年ぶりとなりました。
クロールで25m以上を泳げる小学4・5年生約20名が参加した今回のイベントのテーマは、「抵抗の少ない泳ぎ」。水の抵抗が少ない伸びのある美しい泳ぎに定評がある大橋さんが、自身の競泳スタイルを子どもたちに惜しみなく直接指導しました。また、セイコーの高精度計測機材を使った本格的なタイム計測も体験しながら、水泳技術とともに「時」の大切さも学べるイベントとなりました。司会を務めた元競泳日本代表の寺川綾さんを交えた教室の模様をお届けします。
大橋さんが現役時代に意識した「抵抗の少ない泳ぎ」

プールサイドに集まった子どもたちを前に、まずは司会の寺川さんがご挨拶。「時育®」や「セイコーわくわくスポーツ教室」の目的や狙いについて丁寧に説明してくれました。
寺川さんの説明を聞きつつ、講師を担当する『個人メドレーの女王』こと、大橋さんの登場を「まだか、まだか!」と子どもたちが待ちきれない様子でいます。

そして、子どもたちの熱気が高まる中、ついに大橋さんが登場。にこやかに「時育®セイコーわくわくスポーツ教室 水泳編」の開始の挨拶をします。
「みなさん、こんにちは!大橋悠依です。今日は私の特徴でもある『抵抗の少ない泳ぎ』を伝えたいと思っています。最後のタイムレースでは少しでもきれいに速く泳げるようにサポートしますのでよろしくお願いします!」
間近で世界一にも輝いたトップアスリートが自己紹介する姿に、子どもたちは目を輝かせながら、緊張と期待が入り混じった表情を見せます。
まず泳ぐ前に行ったのが、大橋さん主導でのストレッチです。脇腹を伸ばしたり、腕を前に回したりする基本的なストレッチで身体をほぐします。
大橋さんは「1、2、3、4!」と声を出し、子どもたちが自然に「5、6、7、8!」と続けられるよう促すと、緊張気味だった子どもたちの表情が身体とともに徐々にほぐれていくのが見て取れました。

準備運動の後は、大橋さんによる100m個人メドレー模範泳の貴重な時間です。まずは寺川さんからセイコーのタイマーとタッチ板についての説明。「タイマーはスタートピストルの音と同時に動き始め、選手がゴール時にタッチ板の中央を触ると、タイマーが止まる仕組みになっています」という解説に、子どもたちは真剣な表情で聞き入ります。

そして、いよいよ模範泳です。大橋さんは「水にやさしい、抵抗が少ない泳ぎがどういうものかを実際に見せます。しっかり目の前で見てくださいね!」と笑顔で子どもたちに語りかけます。

寺川さんの「Take your mark……」の掛け声の後、スタートピストルの音とともに大橋さんがスタート!バタフライから始まり、背泳ぎ、平泳ぎ、クロールと泳法を次々と切り替える姿に、子どもたちは釘づけです。

現役時代に意識した「抵抗の少ない泳ぎ」を惜しげもなく披露する大橋さん。水しぶきがほとんど立たない美しいその泳ぎに、子どもたちもちろん、会場にいるすべての人たちが見入ります。

陸に上がるとタッチ板の使い方についても丁寧に解説。「さっき、私がタッチ版を強く押したのが分かったかな?真ん中のあたりを押し込むように強くタッチするのがポイントです。ふわっと触るとタイマーが止まらないことがあるからしっかりとタッチしましょう!」と大会のレースなどを意識したアドバイスをしてくれました。
美しい泳ぎのコツは「身体が一直線になる姿勢を保つこと」

模範泳の後は、3つのコースを使って3つのグループに分かれてプールに入り、本格的なレッスンです。そして、その際に、大橋さんは自身が現役時代から意識する「抵抗の少ない泳ぎ」のポイントについて動作を交えながら説明します。

「クロールでは、手先から足先まで一直線になるイメージを持つことが大切です。棒が頭から一直線に身体に刺さっている感覚のようなまっすぐな姿勢を保ちましょう。腕を回す時も、まるで2本のレールの上を動かすように、一定のラインを保つことが大切です。手は水中で内側にも外側にもブレないように入れることがポイント!また、力を入れすぎず身体を自然に浮かべること、手先の形も反りすぎたり丸まりすぎたりしないよう注意してください。自宅でも鏡で見て練習してみましょう!」
子どもたちは大橋さんの一言一句を逃すまいと、真剣な表情で聞き入ります。

最初のメニューは、ウォーミングアップとしてのクロール25m×2本。各参加者の泳力を見ながら、大橋さんは的確なアドバイスをします。

続いて行われたのは、水の抵抗を最小限にする姿勢「ストリームライン」の練習。壁をキックして蹴伸びだけで進む練習です。大橋さんが手本を見せると、子どもたちは真剣な表情で見入り、自分の番が来ると必死に真似します。
さらに「キックを入れて25m」のメニューでは、先ほどのストリームラインで意識した姿勢のまま、キックを入れて前に進む練習に挑戦。大橋さんは各レーンを回りながら、一人ひとりに声をかけて細かい技術指導を行いました。
高精度タイム計測でレベルアップを実感&世界女王と夢の対決!

休憩を挟んだ後、いよいよセイコーのタイマーとタッチ板を使ったタイム測定の時間です。タイム計測に向け、大橋さんはレッスンを通して見つけた改善点をアドバイスしました。

「みなさんの泳ぎを見ていると、手が水中に入るときに水しぶきが立ってしまう場合が多いようです。これは抵抗を生む原因の1つになります。手先をやさしく水面に入れて、そのままスムーズに前に伸ばしていくと、より効率的に進むことができますよ」とアドバイス。子どもたちはタイム計測でその点を意識すべく頷いていました。

測定前に「ここまでの練習を踏まえて、力を出し切りましょう!」という大橋さんの言葉に、子どもたちは気合十分。さらに、記録上位者2名が大橋さんと対決できるというサプライズを聞くと「わぁー!」と歓声が上がり、会場の雰囲気は一気に盛り上がりました。

2人ずつ名前を呼ばれた子どもたちがレーンに入り、大橋さんがスターターを務めます。

緊張した面持ちでスタートを待つ子どもたち。親御さんたちが見守る中で自分の泳ぎを出し切ることはできるのでしょうか?

そして、計測が始まると子どもたちは全力で25mを泳ぎ切ります。タッチ板にタッチした瞬間、タイマーが正確に記録を刻みます。

全員の測定が終わり、1位の男子が15秒64、2位の女子が15秒9という好記録を出しました。「みなさん、最初よりもきれいに泳げて、タッチもしっかりできましたね!」と大橋さんは子どもたちを褒めます。
そして、いよいよ上位2名の子どもたちと大橋さんとの対決の時間です。「私もガチでいくのでついてきてくださいね!」と大橋さんはやる気満々。当初はバタフライで泳ぐ予定でしたが、子どもたちから「今日練習したクロールで対決したい!」という熱い要望があり、クロールでの勝負となりました。

3人がスタート地点に並ぶと、会場は一気に緊張感が高まります。

「Take your mark……」の掛け声の後、スタートピストルの音で一斉にスタート。子どもたちも全力で泳ぎます。ほぼ横一線のデッドヒートを繰り広げます!


しかし、僅差での勝利に大橋さんは「本気で泳いだから足が死にそうです。でもみんなと泳げて楽しかった!」とビッグスマイルを見せました。
質問コーナーで聞けた世界一の泳ぎについての豆知識

イベントの締めくくりには、子どもたちからの質問に大橋さんが答える時間が設けられました。最初は緊張していた子どもたちも、大橋さんの親しみやすい対応に徐々に打ち解け、多くの手が挙がりました。
Q:大会などで緊張してしまいますが、どうしたら良いですか?
A:「私も世界大会の際などはすごく緊張していました。でも緊張は悪いことではなく、みんなするものです。しっかり練習していれば、その努力は必ず力になります。緊張することはいいことなので、それをわくわくに変えて、楽しい気持ちで泳いでいました!」

Q:200mの個人メドレーはどうしたら速く泳げますか?
A:「個人メドレーは複数の種目を泳ぐので、まずは自分の得意種目をさらに得意にすることが大切です。苦手な種目は、人の泳ぎをよく観察してどこが違うのかを考えながら、苦手なポイントを少しずつ改善することが大事です!」
Q:試合前の食事は何を食べますか?
A:「私は好きな食べ物を自由に食べることが多いですね。ハンバーガーや白いご飯など。水泳はエネルギーをたくさん使うスポーツなので、エネルギー源となる炭水化物を摂ることが大切です。和菓子も好きで、大福やようかん、どら焼きなどを食べることもあります。緊張して食欲がない時は、特に好きなものを食べるようにしています!」
イベントに参加した子どもたちの歓びの声

今日の「時育® わくわくスポーツ教室 水泳編」はいかがでしたか?大橋さんから指導を受けた感想を教えてください。
男子児童「大橋さんの泳ぎを見て、自分もああいう泳ぎができるようになりたいと思いました。特に水の抵抗を受けないように流れるように泳ぐという説明を聞いて、なるほどと思いました。手をやさしく水面に入れるという動きが勉強になりました。タイム測定では静かに手を入れて水しぶきをあげないことを意識して泳げました!」
女子児童「セイコーのタッチ板でタイムを計れて嬉しかったです。大橋さんの泳ぎは水しぶきが全然出ていなくてすごかったです。『頭に棒が一直線に刺さっている感じで泳ぐ』というアドバイスが特に参考になりました!」
大橋さんの泳ぎや技術で特に印象に残ったことはありますか?
女子児童「大橋さんと隣で泳いで対決できたことがすごく心に残っています。これまでガシャガシャと激しく泳いでいましたが、大橋さんのアドバイスで真っすぐ泳ぐことを意識したら、すごく進みやすくなりました!」
男子児童「大橋さんは手をゆっくり丁寧に回しているのに、すごいスピードがあって驚きました。全国大会で上位を目指せるような選手になりたいです。今日の教室で水泳への熱がさらに高まりました!」
大橋悠依さんに聞く「時育®」と水泳指導の魅力

今回の「時育® わくわくスポーツ教室 水泳編」の講師を務めた感想をお聞かせください。
大橋さん「泳げる子が多く参加してくれて、少しでも上達したいという真剣な姿勢で話を聞いてくれました。そういうまっすぐで純粋な子どもたちだったのですごく教え甲斐がありましたし、指導できてとても嬉しかったです!」
現役引退後、コーチという立場での参加でしたが、何か心境の変化はありましたか?
大橋さん「指導する側に立っても、自然な気持ちで臨むことができました。競技で培った『抵抗の少ない泳ぎ』という自分の強みを伝えることに集中できたので、新鮮でありながらも楽しく指導できました。ただ、自分の泳ぎが少し遅くなったなと感じましたね(笑)。」

小学生への指導で意識されたことはありますか?
大橋さん「相手は小学生なので、ポイントを絞って分かりやすい言葉で伝えるよう心がけました。イメージしやすい表現を使い、一方的に話すのではなく、問いかけながらコミュニケーションを取ることで、子どもたちがリラックスできるよう工夫しました!」
次世代育成の一環として今後どのような取り組みをしていきたいですか?
大橋さん「イベントを通して水泳の楽しさを伝えることはもちろんですが、私は食事や休養などにも興味があるので、「水泳×●●」のような掛け合わせた活動や知識の啓蒙もできればと思っています。速くなる、強くなるためには練習だけでなく、食べること、寝ること、休むこと、そして自分で考える力も必要です。これからはそうした総合的な成長も視野に入れた次世代育成に貢献していきたいと思います!」

セイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)
大橋悠依
2021年の東京五輪女子200m・400mの個人メドレーで金メダルを獲得し、2冠を達成した元トップスイマー。2022年には日本女子競泳選手で初のプロ転向を果たした。女子200m・400mの個人メドレーの日本記録保持者でもあり、個人メドレーの女王として君臨した。現在は、大学院に通いながら指導者の道を志す。