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【NPB元審判・坂井遼太郎さん監修】野球の1イニングに制限時間はある?試合の時短の狙いとは 【NPB元審判・坂井遼太郎さん監修】野球の1イニングに制限時間はある?試合の時短の狙いとは

【NPB元審判・坂井遼太郎さん監修】野球の1イニングに制限時間はある?試合の時短の狙いとは

文 田中凌平

野球は攻守が明確に入れ替わるスポーツです。両チームが攻撃と守備を行う「イニング(回)」が存在し、先攻の攻撃時を「表」、後攻の攻撃時を「裏」と呼びます。野球の1イニングにかかる時間は、表裏のそれぞれのチームの攻撃の長さによって異なり、短時間で終わることもあれば、長時間の激闘を演じることもあります。他のスポーツと比べて野球は試合時間が長くなる傾向があり、そのため試合の時短は常に議論の的です。では、試合時間を短くするためにはどのような工夫が必要なのでしょうか。1イニングにおける制限時間の観点で、試合時間短縮の動きについて紹介します。

社会人・大学野球ではイニング間での制限時間が存在する

野球の各リーグにおいては、1イニングでの制限時間は設けられていません。人で攻撃が終われば短時間での攻守交代となり、打者の出塁が続けば3アウトとなるまで攻撃が続きます。日本野球機構(NPB)の「2024年 セ・パ公式戦 平均試合時間」によると、9回試合のみ(延長無し)の平均時間が182分であり、1イニングの平均時間は20分22秒程度という計算です。

野球以外の北米4大プロスポーツは、バスケットボールが48分(12分×4クォーター)、アメリカンフットボールが60分(15分×4クォーター)、アイスホッケーが60分(20分×3ピリオド)と試合時間が決まっています。インターバルやハーフタイムショーを考慮しても、他のスポーツと比較すると野球の試合時間は長いと言えるでしょう。そのため、1イニングの制限時間はないものの、試合時間を短縮する目的で米大リーグ機構(MLB)などではピッチクロックの導入によって投手の投球間隔に制限が設けられています。

【NPB元審判・坂井遼太郎さん監修】野球のピッチクロックとは?“間のスポーツ”に設ける時間制限

一方、NPBでピッチクロックは導入されていませんが、オーナー間での努力義務の域ではあるものの、打者間のインターバルを30秒以内にして試合時間の短縮を目指す動きがあります。また、攻守交代時には経過時間を掲示し、2分15秒以内でのプレー再開を目指すなど、さまざまな施策が行われています。

日本の社会人および大学野球では、公益財団法人日本野球連盟と公益財団法人全日本大学野球連盟によって、イニング間の時間を2分10秒以内とすることを制定。計測の開始は、1回表であれば先発投手がボールを受け取った時点で始まり、以降は3アウト目が宣告された時点で始まります。計測の終了はいずれの場合も球審がプレーを宣告した時です。

このように、長い試合時間という野球の課題に対し、テンポアップするための試みが各リーグでなされています。

イニングの時間が長くなる場合と短くなる場合の条件とは

野球ボール 画像

イニング間には制限時間が定められているリーグもありますが、どのリーグにも1イニングの時間に制限はありません。そのため、1イニングの時間は試合状況によって短くなったり長くなったりします。

まず、1イニングの時間が短くなる場合に考えられるのは、少ない球数で3つのアウトを取るシチュエーションです。特に3球で1イニングを終えることを「スリー・ピッチ・イニング」と呼びます。これは、3人の打者が初球で凡退したり、1人の打者が初球で安打を放った後の打者が併殺打に倒れ、もう1人の打者も初球で凡退したりする場合に起こります。

一方で1イニングの時間が長くなる場合には、攻撃側の猛攻が止まらずアウトがなかなか取れない時や、投手交代の頻度が多い時などが考えられます。「スリー・ピッチ・イニング」では3人の打者で攻撃が終了しますが、9人の打者が一巡するほど攻撃が続いた場合、必然的に1イニングの時間は長くなるでしょう。

また、イニング途中で投手交代が発生した場合、投手はマウンドでも投球練習を行います。NPBでは、球審が交代を告げたタイミングから2分45秒以内のプレー再開を目標としており、投手が交代する度に1イニングに要する時間は増えると考えられます。

サッカーやバスケットボールなどと異なり、野球は試合時間が決まっていません。緊迫する投手戦でテンポよく試合が進むこともあれば、激しい打撃戦となって試合時間が長くなることもあります。時間の制限がなく試合の流れによって試合時間や展開が大きく変わる点は、野球の魅力の1つだと言えるでしょう。

坂井遼太郎さん 写真

元NPB審判員・
審判系YouTuber

坂井遼太郎
(さかい・りょうたろう)

1985年、大阪府生まれの元プロ野球審判員。金光大阪高卒業後、アメリカのジム・エバンス審判学校での研修を終え、2007年にセ・リーグ審判員に。2010年にはわずか4年目で1軍戦に出場した。2017年にオールスターゲームも経験し、翌2018年にプロ野球審判員を引退。現在は起業し、全国の大学野球リーグ戦を無料配信する野球事業や、元NPB審判員としての知識を活かし、SNSなどを通して正しい野球ルールの普及に努めている。

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