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大橋悠依がフォーカスする自分の泳ぎ 世界選手権で放つ“個人メドレーの女王”の輝き 大橋悠依がフォーカスする自分の泳ぎ 世界選手権で放つ“個人メドレーの女王”の輝き

大橋悠依がフォーカスする自分の泳ぎ 世界選手権で放つ“個人メドレーの女王”の輝き

文 大西マリコ
写真 フォート・キシモト

世界水泳選手権2023福岡大会が2023年の7月に開催される。4月にはその選考会となる日本選手権水泳競技大会が行われ、22年ぶりに自国開催となる世界選手権への出場権をかけた熾烈な戦いが繰り広げられた。セイコーがオフィシャルタイマーを務める同大会では、“個人メドレーの女王”と呼ばれるTeam Seikoメンバー 大橋悠依が見事に福岡行きの切符を勝ち取った。

2021年に東京で開催された世界の大舞台では、女子の個人メドレーで200m、400mの2冠を達成し、2022年には日本女子競泳選手で初のプロ転向を果たした。日本が誇るトップスイマーは、今夏の競泳の祭典には200m個人メドレーで出場する。「代表権を獲得できたけど、泳ぎとしては50点。」とストイックに語る大橋に、日本人の歓声が飛び交うホームで迎える世界選手権での目標について聞いた。

代表権獲得も……2位でタッチした瞬間から反省会がスタート

セイコーの電光掲示板に表示されたタイムを見て悔しそうな表情を浮かべる大橋 写真

セイコーの電光掲示板に表示されたタイムを見て悔しそうな表情を浮かべる大橋

写真 フォート・キシモト

日本選手権の200m個人メドレーで2位、7月の世界選手権への代表権獲得、おめでとうございます!今大会は22年ぶりの自国開催(福岡)となりますが、代表権獲得へ向けてどんな思いでレースに臨みましたか?

「代表権を獲得すること」を目標にして臨みました。世界選手権への出場がかかったレースだったので、とにかくその目標を第一に考えていました。今大会に向けて2月にシンガポールで合宿をしたのですが、気候が温暖な場所で気分や調子を高めることができたと思います。ただ、それでも代表権をかけた選考会は、独特な緊張感があるなと感じましたね。

レース後のコメントで「自信はあった。」とお話ししていましたが、今大会の泳ぎは100点満点中で何点でしたか?

うーん、200m個人メドレーは50点くらいですかね。200mの前半100mは久しぶりに調子が良いと感じていたのですが、後半の平泳ぎに入ったところから少し慌ててしまって……。予選の平泳ぎの不出来を意識しすぎてしまった点は反省材料ですね。最後の自由形でも粘れずにタイム的にも2分11秒00でした。2分9秒台を目標にしていたので、個人的に悔しい結果にはなりました。代表権獲得は、自分の泳ぎとしての点数に入るものではないので50点かなという感じです。

平泳ぎで焦りが出たことを反省点に挙げた大橋。200mの後半で失速気味になった 写真

平泳ぎで焦りが出たことを反省点に挙げた大橋。200mの後半で失速気味になった

写真 フォート・キシモト

世界選手権出場の内定を勝ち取ったものの、ご自身では反省点もあったのですね。タイムや着順を知った瞬間はどんな気持ちでしたか?

タッチの時に「多分、負けたな。」と思ったので、2位という順位は分かっていました。実際に泳いでいる感覚も確かに2分11秒台の感覚だったというか、「スピードを出しきれていない……。」と感じていたので納得の結果でしたね。結果が分かった瞬間から頭の中ではもう“反省会”が始まっていました(笑)。「予選からこの決勝のレースまでにどこを変えれば2分9秒台を出せたのかな?」とひたすら考えていました。予選から決勝までの間の時間の過ごし方なども含め、常により良くなるためのアイデアをひねり出すことに注力しています。

フィニッシュ後すぐに反省会をしているなんて、ものすごくストイックですね。200m個人メドレーで16歳の新星・成田実生選手が優勝しました。次世代を担う有望選手や若手選手の台頭について思うことを教えてください。

成田選手は、シニアの世界大会出場は今回が初めてになると思うので、どういうレースをするか非常に楽しみですね。堂々として勝負強くもあり、これからのさらなる成長に期待しています。成田選手の他にも、高校生や大学1年生くらいの世代の若い選手がたくさん出てきてフレッシュな印象ですね!

日本競泳界全体としては、1人でも多く決勝に残ってメダルを獲得する選手が増えると良いなと思っています。自分が頑張って結果を出すのはもちろんですが、同じ代表の先輩としてサポートできることを積極的にしていきたいですね。私自身も清水咲子さんらをはじめ、個人メドレーやそれ以外の種目の先輩に面倒を見てもらってきました。自分も2017年に代表入りしてから6年くらい経つので、後輩たちにとっていい見本になれればと思っています。

22年ぶりの自国開催の世界選手権を選手も観客も楽しめれば

支えてくれるすべての人に感謝の意を表す大橋 写真

支えてくれるすべての人に感謝の意を表す大橋

写真 フォート・キシモト

日本選手権の激闘を終えて間もないタイミングではありますが、7月に世界選手権が福岡で開幕します。大橋選手にとって、世界選手権はどんな大会ですか?

独自の雰囲気や盛り上がりがありますよね。国柄にもよりますけど、2022年大会の開催地だったハンガリー(ブダペスト)は水泳が盛んなので、自国の選手の応援は会場が揺れるくらいすごかったですね。圧倒されるような熱気に、私も「よし!やってやろう!」と気合いが入りました。

2021年の世界の大舞台は東京開催でしたが、コロナ禍の影響で無観客でした。有観客の盛り上がりや声援の心強さを知っているので、福岡での世界選手権はとても楽しみです。しかも今回は22年ぶりの自国開催なので、日本の方々にはぜひ現地観戦で応援していただきたいですね。まだ自分の泳ぎを生観戦したことがない方も多いと思うのでぜひ間近で見てほしいですし、テンションを上げて応援してもらえたら嬉しいです。私自身もレースを楽しみたいと思っています!

大橋選手は2022年に続き、2年連続での世界選手権出場となります。2022年のブダペスト大会では惜しくもメダル獲得とはなりませんでしたが、今大会での目標を教えてください。

2022年の世界選手権では決勝に残れなかったので、今回はまずは決勝に残ってレースをすることを一番に考えています。また、世界の大舞台のパリ大会の前年ということで、しっかりと自分の泳ぎができるかを確認する場になるかと思います。メダルや順位といった結果はもちろん大事ですが、翌年に向けていかにレースで自分のベストを出し切れるかという点にフォーカスしていきたいですね。

銀メダルを手に笑顔の大橋。世界水泳ではより輝く色のメダルを目指す 写真

銀メダルを手に笑顔の大橋。世界水泳ではより輝く色のメダルを目指す

写真 フォート・キシモト

世界選手権までの期間をどう過ごし、どんな調整を行うお考えでしょうか?

日本選手権では自分の泳ぎを出し切れなかった部分があったので、量的にも質的にも鍛えていきたいですね。今後は長野県での準高地合宿も予定しています。世界選手権では決勝に残った場合は、200mを3本泳ぐ必要があるので、すべて高いレベルで泳げるようにベース作りに励みます。

世界選手権には同じTeam Seikoの佐藤翔馬選手も男子200m平泳ぎで出場されますね。普段から仲が良いイメージですが、ともに出場することについての感想をお聞かせください。

翔馬とはよく会いますし、日本代表合宿でも一緒でした。基本的にふざけた関係性で、会うと「よぉ~!」みたいな感じでダル絡みしますね(笑)。あまり真面目な話はしないのですが、Team Seikoの仲間とともに代表で戦えるのは非常に心強いですね!

それに翔馬は以前から腰を痛めていて思うようにトレーニングできなかったところをずっと見てきたので、世界選手権という大きな舞台を前に代表に帰ってきてくれてすごく嬉しいです。

自己ベスト更新に0.1秒でも近づけるように全力を出し切る

常に自身のベストを尽くすことにフォーカスする大橋。自己ベスト更新にも期待がかかる 写真

常に自身のベストを尽くすことにフォーカスする大橋。自己ベスト更新にも期待がかかる

写真 フォート・キシモト

2022年3月にTeam Seikoのメンバーとなり、1年が経ちました。4月の日本選手権ではセイコーがオフィシャルタイマーを務めましたが、 Team Seikoの一員としてどんな心境でしょうか?

チームメートが増えたのは大きいですね。会場のタイマーやタッチ版、ジャージのマークを見ると「サポートしてくれている人がいる。」「味方が増えた。」という心強い気持ちが湧いてきますし、気合いが入ります。陸上の山縣亮太選手やデーデー ブルーノ選手ら競泳以外の選手との交流や対談があるなど、応援する人、したい人が増えました。これからも競泳だけでなく他競技のチームメンバーとも積極的に交流や応援をしていきたいです!

セイコーは計時計測を通じてスポーツをサポートしていますが、記録への挑戦についてもお聞きしたいです。ご自身が持つ女子個人メドレー200mの日本記録2分7秒91の自己ベストを、世界選手権で更新する可能性はあるでしょうか?

自己ベスト更新ができたら最高ですね!ただ、そこに到達するには時間と鍛錬が必要なので、まずは0.1秒でも自己ベストに近づけるよう全力を尽くします。世界選手権ではメダルと記録の両方を狙っていきたいですが、まずは自分自身がベストを尽くすことが重要になります。

自分の持ち味は前半に強いことと175cmの高身長を生かしたダイナミックな泳ぎだと思っているので、観戦する方がワクワクできるレースをできるように頑張ります。福岡の会場に来られる方、テレビで観る方とさまざまだと思いますが、声援を送って応援することでぜひレースを盛り上げてほしいです!

2024年に向けても大事な1年となる今シーズン。大橋は世界の大舞台へのスタートをすでに切っている 写真

2024年に向けても大事な1年となる今シーズン。大橋は世界の大舞台へのスタートをすでに切っている

写真 フォート・キシモト

最後に、今後の目標やパリに向けての抱負を聞かせてください。

2021年の世界の大舞台で個人メドレー2冠を達成したことは、自分が思っている以上にプレッシャーになっている部分はあると思います。パリ大会にはディフェンディングチャンピオンとして臨むことになります。そのため、この1年間を大事に過ごして、どうすれば自分が良い状態でパリに挑めるのかをずっと考えています。

ただ、競泳は個人競技であり、相手が自分を上回ったら勝つことはできません。だからこそ、より良い順位やメダルを目指すのは大前提ですが、大きな舞台でしっかりと自分の泳ぎができるかどうかにはこだわりたいです。最近は個人メドレーでも、特に200mのレベルが世界的に上がっているので、まずはそこに何とか食らいついていきたいと思っています。

大橋悠依

競泳選手
大橋悠依

2021年の東京五輪女子200m・400mの個人メドレーで金メダルを獲得し、2冠を達成したトップスイマー。2022年には日本女子競泳選手で初のプロ転向を果たした。女子200m・400mの個人メドレーの日本記録保持者でもあり、個人メドレーの女王として君臨する。

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