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文 大西マリコ
写真 落合直哉

スポーツを通して人々に感動を届け、“世界中が笑顔であふれる未来づくり”を体現する「Team Seiko」。そのメンバーが次世代の若手選手に会いに行くヤングアスリート対談企画が始動した。今回はTeam Seikoの中心メンバーの山縣亮太と、同郷の広島県在住の中学1年生・三好美羽による対談。

男子100m日本記録保持者・ 山縣亮太の大ファンだと公言する三好は、本人の前では極度に緊張してしまう、どこにでもいる中学1年生の女の子だ。しかし、陸上競技になると、途端に才能の片鱗を垣間見せる。2022年10月に愛媛・県総合運動公園陸上競技場で行われた第16回U18・第57回U16陸上大会では、当時12歳ながら12秒07(風力未測定のため参考記録)でU16女子100mを制するなど超新星ぶりを遺憾なく発揮した。果たしてファンであり、目標である山縣との対談で、三好は何を語るのか。また、山縣の目には三好選手がどのように映っているのか。逸材の今と今後の可能性について迫った。

今と未来の陸上界を担う2人、お互いが感じた印象とは

三好美羽 山縣亮太 写真

憧れの人にきちんと想いを伝えるために手紙を用意した三好。その様子を優しく見守る山縣

写真 落合直哉

直接お会いするのは4回目とのことですが、しっかりお話をするのは今回が初めてだと伺っています。まずはお互いの印象について教えてください。

山縣:三好さんは、会う度に感極まって泣いてしまうなど反応が可愛らしく、そういった部分は「中学生だな、可愛らしいな。」という印象です。でも走りのスケールはダイナミック。一歩一歩が大きく、中学生離れした走りをするので、そのギャップに驚きました。中学生くらいの年齢だと一生懸命走るものの、手と足がバラバラで合っていないケースも多いのですが、彼女は一歩一歩を大きなストライドで力強く進めるところがすごいですよね。

三好:私は、小学3年生の時に山縣選手に憧れて陸上を始めました。4年生、5年生で出場した織田幹雄記念国際陸上競技大会(織田記念)では、山縣選手が大会に出場しなかったため、会えずに悲しい思いをしたのを覚えています。

そして、私が小学6年生だった2021年大会では、ケガから復帰した山縣選手が出場したので「サインが欲しい!」と駆け寄ったのですが、係の人に止められました。泣いている私に、まさかの山縣選手から歩み寄ってくれたんです。写真撮影をしてくれて、サインも書いてもらいました。とても優しい人だと思い、その時からますますファンになりました。

三好美羽 山縣亮太 写真

嬉し泣きをしてしまった三好を、笑顔でフォローする山縣。こうした優しさが山縣の魅力だと三好は語る

写真 落合直哉

会うと泣くほど喜ばれる存在であり、また山縣選手をきっかけに陸上競技を始めたというお話を聞いてお気持ちはいかがでしょうか?

山縣:照れますけど、素直にうれしいですね。僕は競技を始めて20年経ちますが、次世代を担う素晴らしい選手に対して、自分が何か1つでも良い影響を与えられたのですから。それだけで「20年頑張ってきて良かったな!」と思います。それに若い選手と話をさせてもらえる機会があることで、「改めて僕ももっと頑張らなくては!」という思いになるんです。こちらこそ、お礼を言いたいですね。今日はどうもありがとうございます。でも、たくさんの陸上選手がいる中で、何で僕のファンになってくれたんですか?

三好:山縣選手は小学生で全国大会に出場するなど当時からすごい選手でしたが、その決勝の中で一番背が小さかったと聞きました。私も小学生の時は身長が低かったので、「身長が低くても走りで戦える!」と勇気をもらったことが陸上競技を始めるきっかけにもなったんです。その他にもピアノや料理など、自分の好きなことに常にアクティブなところが「すごいな。」と尊敬しています。

次世代を担うスター候補へ贈る、山縣からのアドバイス

三好美羽 山縣亮太 写真

徐々に緊張もほぐれたのか笑顔を見せる三好。山縣に直接、走りのアドバイスを求めた

写真 落合直哉

未来の女子陸上短距離界を担うであろう三好選手、男子100m日本記録保持者に直接聞いてみたいことはありますか?

三好:レース後半のスピードが落ちてしまうのですが、山縣選手がレース後半にどんなことを考えて走っているのかを知りたいです。

山縣:ちなみに、三好さんはどんなことを考えて走っている?何か後半で意識していることはある?

三好:ピッチが落ちちゃうので、個人的にはそれが後半落ちる原因だと思っています。「ピッチを落とさない、落としちゃいけない。」と思いながら走っています。

山縣:なるほど。60mを過ぎるとどうしても足の回転は落ちてくるから、それはしょうがないことなんだよね。みんなそうなんだけど、そこからもう一段階ギアを上げようとすると、力が入って失速しちゃう要因になってしまいます。僕はむしろスッと力を抜くというか。諦めるわけじゃないんだけど「今のスピードを維持しよう。」という気持ちで手と足を回すと意外と後半伸びますね。スピードが落ちにくくなると思うので、ぜひ意識してみてください!

三好:ありがとうございます。山縣選手も同じ悩みを抱えていたことがあると知れてうれしいです。これから練習の時に意識して頑張ります!

山縣:今はどんな練習をしているの?

三好:ハードル練習です。ポンポンとリズムよく長い距離を跳びながら走ることを意識しています。

山縣:それは良い練習だね。僕も中学1、2年生のころに基礎体力を上げる目的で長い距離の練習を頑張ってやっていたよ。それが今のベースになっているところがあるので、ハードルを使った長距離練習をしっかり大事にして、これからも続けていってほしいですね。

山縣亮太 写真

山縣も中学生の逸材がどんな趣味があり、どんな時間の過ごし方をしているのかが率直に気になるようだ

写真 落合直哉

山縣選手から三好選手へ聞いてみたいことはありますか?

山縣:すでにU16の年上の高校生が出場するレベルの大会でもしっかり勝ちきって素晴らしい走りをしているので、陸上よりもプライベートなことを聞いてみたいですね。三好さんの趣味や好きなことは何ですか?

三好:部活が大変ですが、時間がある時は鉄棒をするのが好きですね。家では本をよく読みます。

山縣:読書が好きなんだ!僕も好きでよく漫画を読んでいるよ。三好さんはどんな本を読むの?

三好:小説です。なんて言えば分からないですが、変わった感じのものが好きです。

山縣:すでに小説を読んでいるなんてすごいなぁ。僕は漫画とか言って恥ずかしくなっちゃったな(笑)。

三好:山縣選手が好きな漫画や、今どんな漫画を読んでいるのか知りたいです。

山縣:いやいや、そんな教えるほど特別面白い話はないよ……!強いて言うならワクワクする少年漫画が好きかな。収集癖もあるので、集めているタイトルもあります。漫画には名言も多いし、心に響く言葉もたくさんあるからたまには読んでみてもいいかもしれないですね。

三好:ありがとうございます!山縣選手がおすすめの漫画も後で教えてください。

三好美羽 山縣亮太 写真

取材後に書いてもらった山縣のサイン。「Ryota」の文字が走っている人に見えるのがギミックだ。

写真 落合直哉

三好選手が公私ともに山縣選手に憧れていることが伝わってきます。三好選手、きっとたくさん聞きたいことがあると思いますので、この機会に自由に山縣選手への質問をお願いします。

三好:最近サインを求められることが増えてきたので、オリジナルのサインを作りたいのですが、どんなデザインにするかを悩んでいます。山縣選手のサインはとてもカッコいいですが、どうやって作ったのでしょうか?

山縣:サインのデザインは悩むよね。僕が初めてサインをしたのは大学1年生の時で、グランプリレースの大会で地元・広島の方に求められたんですよね。その時は普通に楷書というか、「山縣亮太」と漢字で書いただけでした(笑)。そこから、現在のサインのように「100mを走っている選手の形」に見えるデザインにしたんだけど、Team Seikoで一緒の偉大な先輩・福島千里さんのサインをヒントにしたんだよ。

三好:福島千里さんは女子100m、200mの日本記録保持者で、私も目標にしている憧れの選手です。

山縣:そうだね!僕も学生時代から今もずっと尊敬している先輩です。その福島さんのサインが平仮名で「ふくしま ちさと」って書くんだけど、人が走っている形になってるんだよね。それがとっても良いなと思って、自分はローマ字で「Ryota」なんだけど、走っている人風に崩した形にしたのが今の僕のサインなんです。

三好:とてもカッコいいです。初めてサインをいただいた時からずっと大切にしています。

「時」を通して競技をサポート。アスリートから見たセイコー

三好美羽 山縣亮太 写真

山縣は社員アスリートとして活躍する自身の会社「セイコー」の魅力を語る

写真 落合直哉

福島千里さんのお話が出ましたが、その福島さんと山縣選手がいる 「Team Seiko」や、セイコーという会社について三好選手はどんな印象を持っていますか?

三好:陸上競技場で「SEIKO」と書いてある電光掲示板をよく見るので、セイコーさんは時計を作る大きな会社だと思っていました。Team Seikoには2人の日本記録保持者がいるので、その点でもすごい会社だなと思っています。私も、私の先輩たちもセイコーさんに入ることを夢見て頑張っています。

山縣:おぉ〜!将来が楽しみですね。社員だから言うわけじゃないんだけどセイコーは本当に良い会社だよ。アスリート支援にすごく理解を示してくれて、本当に色々な面で活動をサポートしてもらっています。あとは、「タイムを測る」「時を刻む」のが陸上競技のイメージとピッタリな会社だと思うからそこも素敵だなと思ってるんだよね。僕は陸上でタイムを競うことで「セイコーと競技を通してともに世界で戦う」という気持ちでいます。将来、三好選手とTeam Seikoの仲間として過ごせたら嬉しく思うので、ぜひよろしくお願いします!

三好美羽 写真

Team Seiko には女子100m・200m の日本記録保持者・福島もいる。三好もセイコーへの憧れを語る。

写真 落合直哉

将来、Team Seikoの仲間になったお2人の対談が今から楽しみですね。三好選手が「時計」の印象を強くもたれているように、セイコーは「時」を通してさまざまな商品や技術を提供している会社です。これにちなんで、中学1年生の三好選手が今大切にしている「時間」について教えてください。

三好:中学生になり習い事や提出物など時間が足りなくなってきて、時間の大切さを知りました。部活動などは無駄な時間がなくせるように集中して取り組んでいます。友だちとはわずかな休憩時間やLINEのやり取りを大切にして良い関係を築いています。

山縣:無駄だらけだった自分の学生時代を反省するわけじゃないですけれど、三好さんは本当に偉いと思います。陸上競技は個人での戦いが中心だけど、チームメイトや周囲との関係を大事にしているのが伝わって来たし、時間を大事にすることはとてもいいことだと思う。勉強や部活動の時間、遊ぶ時間も疎かにせずに「競技へのヒントにつながるものはないかな」と考えていく、「すべての時間を無駄にしない!」という姿勢は後々になってすごく生きてくるというか、競技につながってくる部分なので、今の姿勢を大事にして友たちとの時間も大切にしてくださいね。

三好:ありがとうございます。学校と部活と陸上と毎日大変ですが、無駄な時間は一瞬たりともないことを聞いて、また新たに頑張ろうと思いました。

憧れの山縣の前で宣言した「日本記録の更新」

三好美羽 山縣亮太 写真

最後にはお互いの今後の目標を誓い合った山縣と三好。その宣言を叶える「時」を心待ちにしたい

写真 落合直哉

最後に、お2人の今後の目標について聞かせてください。

三好:私は全中(全日本中学校陸上競技選手権大会)では100分の1秒差でA決勝に残ることができませんでした。次はA決勝に残り、今年の目標である11秒台を出して優勝したいです。

山縣:優勝を堂々と宣言してカッコいい!自分は、2023年、2024年と世界陸上など大きな大会が続くので、そこで活躍するために日々、頑張っていきたいです。2022年は1年間お休みをいただき、三好さんの活躍にも大いに刺激を受けて充電することができました。まずは2023年の日本選手権を勝つことで復活を遂げたいですね。

三好選手は「次世代のヤングアスリート」として憧れの山縣選手と対談を果たし、夢を持つこと、叶えることの素晴らしさを教えてくれました。せっかくの機会なので、最後に憧れの山縣選手と未来の自分に何か「約束」をしてみませんか?

三好:えっ……どうしよう!それでは……まだ先のことですが、いつか世界の大舞台で活躍できる選手になって、福島さんや山縣選手みたいに100mで日本記録を出せる選手になります!

山縣:力のある若い選手がそうやって目標を持つことはとても心強いですね!僕も福島さんの近くで一緒に練習をしてきて記録の素晴らしさを知っているし、また、三好さんはそれを超える可能性を十分に秘めている選手だと思うので、ブレずに真っ直ぐ頑張ってね。

三好:ありがとうございます。頑張ります!

山縣:そうだ!日本記録を出したら……何かプレゼントをあげようかな。三好さんが喜んでくれるものを。何が良いんだろう?

三好:…………!(嬉しさのあまり言葉を失って目を大きく見開く)どうしよう!今は何も考えられないです。山縣選手からなら何でもうれしいです。

山縣:その日を楽しみにしてます!

山縣亮太

陸上短距離選手
山縣亮太

長年にわたり日本男子陸上界を牽引してきたトップスプリンター。2021年6月に自己ベスト9秒95で日本新記録を樹立。国内・世界の大舞台で活躍を続けている。幾多の困難から復活してきたその姿から、”ミスター逆境”の異名を持つ。

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