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文 大西マリコ
photo by AFLO SPORT

また、国立に陸上の熱狂が帰ってきた――。GW最終日の5月8日、「セイコーゴールデングランプリ陸上2022東京」が東京・国立競技場で開催された。2年ぶりの開催となった今大会は有観客での実施。実に8983人の陸上ファンが、聖地・国立での久しぶりの生観戦に酔いしれた。

世界の大舞台のメダリストや世界記録保持者ら、国内外問わずトップアスリートが集結したセイコーゴールデングランプリ。トラック9、フィールド5の全14種目で、ハイレベルな戦いが繰り広げられた。Team Seikoからは4月に新加入したデーデー ブルーノが男子100mに登場。また、大会後には、2022年1月に現役生活を引退し、セイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)に就任した福島千里の引退セレモニーが行われた。

有観客の国立に世界のトップアスリートが集ったセイコーゴールデングランプリ

セイコーゴールデングランプリ 写真

2年ぶりの開催となったセイコーゴールデングランプリには約9千人の観客が国立に集結した

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2021年夏に行われた世界の大舞台以来、初の国立での陸上の国際大会となったセイコーゴールデングランプリ。大会名に冠がつく今大会では、セイコーが特別協賛とオフィシャルタイマーを務める。ワールドアスレティックス(世界陸連)が主催するワンデイ大会のグローバルツアー「ワールドアスレティックスコンチネンタルツアーゴールド」に認定されているだけに、国内トップ選手をはじめ、海外招待選手も多数出場した。

2年ぶりの開催、有観客は実に3年ぶりということもあり、大会前から話題が尽きなかったセイコーゴールデングランプリ。当日は8983人の陸上ファンが集結し、世界トップレベルの陸上競技を間近で堪能した。「熱狂、再び。」の大会コピーの通り、選手のパフォーマンスの1つひとつに拍手喝采にわき、好記録にはどよめきが起こるなど、会場は終始熱気に包まれていた。

一方の出場した選手たちも口々に、「お客さんからパワーをもらった。」など有観客の良さを実感。手拍子を求めると、観衆からのレスポンスがある環境のありがたさを噛みしめていた。選手たちが好記録を出すなど躍動することで、今後はスタジアムに足を運ぶファンの数も増えていくことだろう。

また、大会を支えるスタッフたちも有観客の試合で本領を発揮。セイコーのタイミングチームは正確な計時・計測で、選手が刻む記録を観衆に伝え続けた。

デーデーは日本選手権での活躍と昨年の再現に期待

デーデー選手 写真

Team Seikoの一員としてセイコーゴールデングランプリに臨んだデーデーだったが、惜しくも予選敗退となった

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多くの種目が行われる中、一際大きな盛り上がりを見せたのが男子100mだった。2019年ドーハ世界選手権金メダリストのクリスチャン・コールマン(アメリカ)が初来日し、セイコーゴールデングランプリにも参戦。その他にも国内外のトップスプリンターが数多く参加していることはもちろん、セイコーがオフィシャルタイマーを務めるオレゴン州ユージーンで開催の世界陸上競技選手権大会を7月に控える。各選手の参加標準記録「10秒05」への挑戦も焦点となった。

世界陸上の代表メンバーが決定する日本陸上競技選手権大会や各国の代表決定戦を控える中で、優勝したのは10秒09を記録したコールマン。慣れない日本の環境でまずまずの仕上がり具合を見せた。一方、Team Seiko加入以来、初めてセイコーの冠大会に挑んだデーデー ブルーノは、残念ながら予選2組目・8位で決勝進出はならなかった。

次の大会は国内最高峰の日本選手権。昨年、デーデーは100m、200mともに自己ベスト記録と準優勝という成績を収めている。相性も良い大会なだけに、昨年の再現を期待したい。そして、オレゴンの地で、世界を舞台に戦うデーデーの勇姿がぜひ見たい。

デーデー選手 写真

電光掲示板に掲載されたタイムを確認するデーデー。この悔しさは日本選手権で晴らしたい

photo by AFLO SPORT

引退セレモニーで魅せた!福島千里、笑顔のラストラン

福島千里 写真

全種目終了後に、日本陸上界の女王・福島千里が笑顔で登場した

photo by AFLO SPORT

トップアスリートによるハイレベルな大会は全種目が終了。熱狂から静寂への移ろいの最中で、フィナーレとしてあるイベントが行われた。女子100m・200mの日本記録保持者であり、今年1月に現役引退を発表した福島千里の引退セレモニーだ。

盛大な卒業式のスタートは、福島も一員であるTeam Seikoの応援ソングによって幕開け。4月に完成したばかりの「素晴らしき仲間たち」を歌手の平原綾香さんが熱唱。会場も再び盛り上がりを見せたところで主役の福島が登場した。日本陸上短距離界の女王を見送ろうと、大きな拍手が沸き起こる中、この瞬間を噛みしめるように観客席の隅々まで手を振ったりお辞儀をしたりしながらステージへと向かった。

平原綾香 写真

平原綾香さんがTeam Seiko応援ソング「素晴らしき仲間たち」を熱唱。美声を国立に響かせた

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引退後、初めて多くのファンの前に立った福島。現在の心境を静かに語り始める。

福島「この国立をはじめ、競技場のトラックをいつも全力で走ってきました。今、こうして立ち止まってみると、“たくさんの歓声の中で走っていたんだな”と実感し、とても幸せに感じました。常に応援していただき、苦しい時も背中を押してくれたファンのみなさま。長い間応援してくださってありがとうございました!」

Team Seikoメンバー 写真

セレモニーには山縣を筆頭にTeam Seikoのメンバーが集結。イベントに花を添えた

photo by AFLO SPORT

会場にはTeam Seikoの仲間である陸上の山縣亮太、さきほどまで大会に参加していたデーデー ブルーノ、競泳の坂井聖人、トランポリンの棟朝銀河も駆けつけ、セレモニーは大盛り上がり!チームメイトのサプライズ登場に福島の笑顔が弾ける。

Team Seiko加入のきっかけを作り、公私共に仲の良い山縣は、「現役生活お疲れさまでした。現役中は本当にたくさんのことを学ばせていただきました。今日はこれからの福島さんにとって記憶に残るセレモニーになるよう、全力を尽くしたいと思います。」とコメント。

また、デーデーからは、「自分が陸上を始める前から活躍していた偉大な選手。僕自身もたくさんの刺激をもらい、非常に感謝しています。これからも(Team Seikoの仲間として)一緒にさまざまな取り組みにチャレンジしていけたらと思っています。お疲れさまでした!」と、熱いメッセージを送った。

Team Seikoメンバー 写真

100m往復リレーでは、山縣vs.福島vs.デーデーの夢のカードが実現!会場は大いに沸いた

photo by AFLO SPORT

セレモニー中盤では「福島選手引退記念・スマイルシャトルリレー」と題して、子どもたちとの100m往復リレーを開催。5人の子どもがゴール地点から走り、スタートで待つTeam Seikoメンバーのもとへ辿り着いたら各選手がスタートするという往復スタイルの勝負だ。福島は5人中最後のスタートとなったものの、山縣やデーデーをも抜き去り、見事優勝!どんな時でも勝ちにこだわる福島らしくトップでラストランを駆け抜けた。ただ、その表情は現役時代のレースではなかなか見られなかった満面の笑顔。最後を飾るにふさわしい晴れやかな表情だった。

フォトフィニッシュカメラによる福島千里のラストラン 写真

セイコーの精密なテクノロジーである「フォトフィニッシュカメラ」が1位で駆け抜けた福島のラストランを記録した

「トラックでも、トラック以外でもずっと走り続けたい」

福島千里 写真

最後のスピーチでファンへの感謝を語る福島。そして、自身の日本記録11秒21の更新を次世代に託した

photo by AFLO SPORT

セレモニーの最後は福島のスピーチ。これまでの感謝と日本陸上界の未来への期待を述べた。

福島「本日はこのような機会をいただき、とても幸せです。最後に引退レースで山縣さんや、チームメイトのみなさんと走れて幸せでした。今後は、今までお世話になった陸上に恩返しの気持ちを持ってさまざまなことにチャレンジしていきたいと思っています。

1人でも多くのアスリートが日本国内に留まらず、世界の舞台で活躍することを楽しみにしています。そして、私の持つ日本記録が更新されることを心待ちにしています。最後になりますが、本日まで応援してくださったみなさん、本当にありがとうございました。今後は“トラックでも、トラック以外でも” ずっと走り続けたいと思います!まだまだこれからもよろしくお願いします。本当にありがとうございました!」

日本陸上短距離界の女王として、トラックを誰よりも速く走った福島。今後のフィールドは指導者としてか、はたまた別の道なのか――。ただ、唯一はっきりしているのは、トラック以外でも福島は全力で日々を走り抜けるということだ。

福島千里 写真

福島の“トラック以外での活躍”やいかに。今後も全力で走り続ける

photo by AFLO SPORT

スピーチ後は、女子100m日本記録「11秒21」が刻まれたパネルを福島自ら子どもたちに贈呈。12年以上たった今でもいまだ破られていない自身の記録を未来に託し、新たな道を走り始めた福島。これからの“トラック以外での彼女の活躍”からも目が離せない。

福島千里

セイコースマイルアンバサダー
福島千里

北京・ロンドン・リオデジャネイロと3大会連続で世界の大舞台に出場。女子100m、200mの日本記録保持者。日本選手権の100mで2010年から2016年にかけて7連覇を成し遂げ、2011年の世界陸上では日本女子史上初となる準決勝進出を果たした。引退後は「セイコースマイルアンバサダー」に就任。「セイコーわくわくスポーツ教室」などの活動を通じて次世代育成に貢献している。

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