セイコー時間白書2025

2025年問題到来 長寿化による人生100年時代の捉え方
固定観念で語られがちな老後観や人生の節目への価値観は年代とともに変化

人生100年時代、老後が長くなったと言われますが、老後についてどんな意識を持っているのか? 15歳〜69歳の男女1,200人を対象に、人生100年時代における時間感覚について聞き、年代別の傾向を探ってみました。

人生100年時代、老後について「考え始める」40代、「準備を始める」50代

まず、老後に向けた意識や行動について聞くと、10代(75.0%)・20代(63.0%)では「特に考えたことはない」が最も多く、40代になると「具体的な行動はしていないが考え始めている」(41.0%)が4割、50代では「準備を始めている」(19.5%)が約2割と増えています。「既に準備を完了している」は60代で10.0%と高くなりますが、それでも10人に1人です[図1]。
人生100年時代、40代になると老後を意識し、50代で準備を始めるものの、60代で準備完了とまではいかないようです。

現時点での老後に向けた意識や行動 グラフ

将来について、20代から悲観的になるものの、60代になると楽観的に復調

将来に対する意識を聞くと、「以前より将来について楽観的になった」と思う人は全体の4割(42.2%)でした。
年代別に見ると、10代の58.5%が最も高く、20代は5割程度あるものの下がり始め、50代では30.0%にまで低下します。しかし、60代になると44.0%と復調し、20代と同程度まで楽観的に感じる人が増えています[図2]。
50代までは将来を悲観することが多いものの、60代になると、「なんとかなるさ、大丈夫!」と思えているようです。

以前より将来について楽観的になった グラフ

人生の節目と捉えるものは年代とともに変化。10代はこれからさまざまな節目が来ると予感

人生には進学や就職、結婚や仕事など人生の節目と言えるライフイベントがあります。人生の節目と思うものを聞くと、10代は「進学・卒業」(67.0%)、20代以降50代までは「結婚・離婚」が節目のトップとなりますが、30代は「出産」(51.5%)が2位となり、40代・50代では「定年」「人の死」が増え、60代では「定年」(55.5%)がトップとなっています。また、10代はほぼ全ての項目で節目とする割合が高く、これからさまざまな節目が訪れると考えています[図3]。

年代別 人生の節目 ランキング 年代別 人生の節目 ランキング

将来の予測が困難な不確実性が高まる中
「自分軸で生きられている」は約6割。若年層は他人の人生も気になる

「自分軸」とは、自分の人生の生き方・方向性を定める概念です。自分の価値観や信念に基づく「自分軸」を持つことで、他人に左右されず自分の考えで人生を選択でき、より充実した人生を過ごせるといわれています。

自分軸で生きられていると自覚しつつ、他人の人生も気になる若年層
自分軸を持ちながらも他人が気にならなくなるのは60代になってから。人生の積み重ねが必要に

自分軸で人生を生きられているかと聞くと、全体の59.0%が「自分軸で生きられている」と答えています。年代別に見ると、10代が70.5%と最も高く、20代、30代と低下し、50代では49.0%と自分軸で生きられていると自覚する人は半数以下に低下します。しかし、60代になると58.5%と復調し、自分軸で生きていると実感できる人が増えてきます[図4]。
一方、他人の人生が気になるかと聞くと、全体の43.8%が気になると答えています。年代別に見ると、10代が64.5%と最も高く、年代が上がるに連れ気になる割合は少なくなっています[図5]。
若い頃は自分軸で生きていると自覚しながらも、同時に他人のことも気になってしまうようです。年代が上がると自分軸の意識はやや希薄になるものの、他人のことも気にならなくなり、60代では自分軸が復活し、他人のことを気にせず自分らしく生きていると感じられているようです。

自分軸で生きられている、他人の人生が気になってしまう グラフ 自分軸で生きられている、他人の人生が気になってしまう グラフ

これからのライフイベントは自分らしく! 社会規範に縛られたくない

[図3]の通り、年代とともにさまざまな人生の節目を迎えますが、これらのライフイベントで社会規範に縛られる必要はないと思うかと聞くと、73.7%が「縛られる必要はない」と答えました。
年代差もあまりなく、今後は、社会規範に縛られないその人なりのライフイベントの迎え方が増えていくことが予想されます[図6]。

ライフイベントで社会規範に縛られる必要はない間 グラフ

10代はこれからの人生の時間を楽しみに捉えている
世の中に追いつき成長し続けたい、前向きな世代

調査結果を年代別に見ると、10代がこれからの人生の時間を驚くほど前向きに捉えていることが明らかになりました。そんな10代の結果を深堀りしました。

これからの人生への期待が高く、時間の使い方をきちんと考えたい10代
それだけに、時間の使い方への悩みも大きい

今後の人生の時間について意見を聞きました。まず、今後の人生は楽しみか不安かと聞くと、「楽しみ」と答えたのは全体では47.3%ですが、10代は57.5%と10.3ポイント高く、全年代の中で最も高くなっています。また、「今も将来も時間の使い方を考えたい」と答えたのは、全体72.5%に対し10代は78.0%と5.5ポイント高くなっています。一方で、10代の4人に3人は「将来、人生の時間の使い方に悩みそうだ」(75.5%)と答えており、全年代の中で最も高くなっています[図7]。
これからの人生を楽しむために時間をどう使うかしっかり考えたい10代、それ故に使い方に悩みそうだと感じているようです。

今後の人生の時間に対する意見 グラフ 今後の人生の時間に対する意見 グラフ

将来に向け「世の中の動きに追いつきたい」「成長し続けたい」という熱い思いも10代が最多

また、これからの将来、自分自身の人生をどう生きたいかと聞くと、10代の前向きな姿勢が明らかになりました。
A:世の中の動きに追いついていたい B:自分の価値観を大事にしたい を2択で聞くと、10代は「世の中の動きに追いついていたい」(49.0%)と答えた人が全年代の中で最も多くなっています。A:年を経るごとに成長し続けたい B:ほどほどの成長で十分だ の2択も、10代は「年を経るごとに成長し続けたい」が70.5%と群を抜いて高くなっています。
また、「年齢に関係なく、自由に生きていいと思う」と答えた10代は88.0%と、全年代で最も高くなっています[図8]。

将来に対する意見 グラフ 将来に対する意見 グラフ

時間価値に関する年代別傾向

タイパの申し子、時間制限や分刻みのスケジュールに前向きな10代

タイパの申し子、時間制限や分刻みのスケジュールに前向きな10代

限られた時間の中でいかに効率的に物事を進め、満足度を得るかという「時間対効果」がタイムパフォーマンス(タイパ)。このタイパを小さい頃から実践しているのが今の10代です。「時間が制限された方が頑張れる」(61.5%)、「1分でも無駄にしたくない」(49.0%)と感じ、「1日の予定を、分単位で決めることも多い」(30.0%)のが10代です。また、10代の3人に1人は「せわしなく様々なことに追われることは楽しい」(36.5%)と感じ、その裏返しのように、2人に1人は「やることが無い時間が出来ると、つい不安になってしまう」(48.5%)と感じています[図9]。
タイパの申し子の10代、これからの長い人生を通して、自分に最適なより良いタイパのあり方を模索しているようです。

10代の時間価値 グラフ 10代の時間価値 グラフ

詰め込み過ぎがちょうどいい、今の時間をアクティブに楽しみたい20代

詰め込み過ぎがちょうどいい、今の時間をアクティブに楽しみたい20代

20代はとにかくアクティブ! 72.5%が「いろんなところに行きたい」と答え、76.5%が「老後の準備よりも、今の時間を楽しむことが大事だと思う」と答えています。また、「予定を詰め込んで忙しく過ごしたい」(22.0%)と答えたのも、全年代の中で唯一20%を超え、最も高くなっています[図10] 。
気力も体力も充実の20代。100年先のことより今を思いっきり楽しみたい、前のめり気味の元気さが感じられます。

20代の時間価値 グラフ 20代の時間価値 グラフ

「もっと時間を!」とにかく忙しい忙殺の30代

「もっと時間を!」とにかく忙しい忙殺の30代

結婚、出産、育児などライフステージが大きく変化する30代。とにかく忙しいのが特徴で、自分のためだけに使える時間は1日平均130.77分と最短、30代の9割ほどが「もっとゆっくり過ごしたい」(90.0%)、「もっと自分のために時間を使いたい」(87.5%)と感じています。また、これからもやりたいことを聞くと、「家族と家でゆっくり過ごしたい」(51.5%)、「家族と出かけたい」(52.0%)と答えた人が年代別で最も多く、半数を超えています[図11] 。2000年以降の新世紀に成人となったことに由来し、ミレニアル世代と呼ばれ、その中心に位置する今の30代。輝かしいネーミングの裏に、仕事でもプライベートでも忙殺されているリアルを垣間見ることができます。

30代の時間価値 グラフ 30代の時間価値 グラフ

「ペースは自分で決める」 固定観念に縛られたくない40代

「ペースは自分で決める」 固定観念に縛られたくない40代

「やることが無い時間が出来ると、つい不安になってしまう」のは、10代(48.5%)・20代(42.0%)に多いのに対し、40代(23.0%)からスコアが低下しています。同様に「せわしなく様々なことに追われることは楽しい」も10代(36.5%)・20代(30.5%)は多いのに、40代(16.0%)以降はぐっと低下します。
一方、「ライフイベントと年齢に関する固定観念に違和感を感じる」と答えた40代は61.0%と高めになっています[図12] 。就職氷河期で苦労した40代も人生の折り返し地点を迎え、上司と部下に挟まれた中間管理職世代に。年功序列がまだ強く残る時代にキャリアを築いた上司年代とは異なり、新しい働き方に適応した部下年代を前に、自分の立ち位置に悩むことも…。そんな時代の狭間にいるからこそ、固定観念に縛られず自分らしいペースを保っていたいという気持ちが強く表れるのかもしれません。

40代の時間価値 グラフ 40代の時間価値 グラフ

「こんなはずじゃなかった・・・」ゴールが見えない50代

「こんなはずじゃなかった・・・」ゴールが見えない50代

「自分軸で人生を生きられていると思う」と答えたのは全体では59.0%ですが、50代は49.0%と10.0ポイントも低く、年代別でも最低となっています。「自分の人生をうまく生きこなせている」(40.5%)という意見も、「時間を豊かに使いこなせている」(41.5%)も、ともに全年代で最も低くなっています。逆に、「今後の人生つらいことの方が多いと思う」(56.5%)や「今後の人生が不安だ」(59.5%)という意見は全年代で最も高くなっています[図13] 。
社会的に責任ある立場の50代ですが、昨今の急激な社会環境の変化に伴い、新しい知識やスキルの習得を求められます。それに加え親世代の介護やケアなど、家庭内での問題も抱えることで役割の多さにへきえきし、「そろそろ落ち着けると思っていたのに」とほぞをかむ人も少なくないのでは…

50代の時間価値 グラフ 50代の時間価値 グラフ

時間に追われることから解放、老後が楽しみな60代

時間に追われることから解放、老後が楽しみな60代

「時間に追われている気がする」と答えたのは全体では63.3%ですが、60代は40.0%と23.3ポイントも低くなっています。また、「なにもしない時間は必要」という意見も全体の73.1%に対し、60代は81.5%と全年代中で唯一80%を超え、最も高くなっています。また、「今後の人生、楽しいことの方が多い」という意見も60代は57.5%と全年代で最多です[図14] 。
24時間戦うバブル期から長引く不況を耐えてきた60代、定年という一つの区切りを迎え、時間に追われずなにもしないで過ごす贅沢を味わい、これからは楽しくやっていきたいと望んでいるようです。

60代の時間価値 グラフ 60代の時間価値 グラフ

タイパ意識が進みAIが拡張する時代
うまく共存することで、「幸福度」「満足感」も高まる傾向に

タイムパフォーマンス(タイパ)が時間の使い方の選択基準となり、日常生活でのAI(人工知能)活用も増えています。効率化につながるタイパとAI、加速することで時間の価値がどう変化するのか、調べてみました。

生活者の6割が「タイパを意識して行動」「タイパ重視の考え方は社会に定着した」と感じている
タイパ意識が最も高い10代は、「何事もタイパを高め、時間効率を優先したい」も最多

まずタイパ意識について聞くと、60.4%が「タイパを意識して行動している」と答え、「タイパを重視する考え方は社会に定着」と答えた人も62.1%とどちらも60%を超え、2024年の調査結果(意識して行動58.0%、社会に定着60.5%)から微増傾向を示しています。年代別で見ると、どちらも10代(行動69.5%、定着70.5%)が高くなっています。また、「何事もタイパを高め、時間効率を優先して生活したい」と答えた人は全体で54.3%ですが、10代は64.5%と最も高くなっています[図15]。

タイパ意識 グラフ タイパ意識 グラフ

一方、「じっくり考え」「没頭したい」という意見もあり
生産性や効率化だけではない、時間の使い分け傾向も

タイパ優先がスタンダードとなる一方で、「答えがすぐ出ないことでも、自分なりに考えたい」(74.3%)、「じっくりと考え事をするのが好き」(74.0%)、「時間を気にせずに没頭できる」(67.6%)といった、時間的な効率追求とは逆行する意識も見られました[図16]。
生産性を上げ効率化を図るべきこととじっくり時間をかけたいことを区分し、使い分けをする様子がうかがわれます。

アンチタイパ意識 グラフ アンチタイパ意識 グラフ

AIが身近になった2025年 生活者のおよそ3割がAI機能を利用

次にAIの活用について聞きました。「AI機能を使って時間効率を高めている」と答えたのは全体の30.3%、「時間効率を高めるためにChatGPTを使ったことがある」は31.1%で、いずれも前年の調査結果(AI機能22.2%、ChatGPT22.4%)より約8ポイント程度増加しています。また、「プライベートでAI機能を使っている」と答えたのは全体の31.8%となり、AIが普段の生活でぐっと身近になっているようです。年代別に見ると、「時間効率を高める」(57.0%)、「ChatGPTを使用」(64.5%)、「プライベートでAIを利用」(60.0%)といずれも10代のスコアが高く、AIとの親和性の高さが感じられます[図17]。

AI活用 グラフ AI活用 グラフ

AI活用TOP3「仕事の相談」「人生相談」「イラスト生成」、10代の半数はコミュニケーションに活用

AI機能を活用した経験があるものを聞くと、「仕事の相談に乗ってもらう」(11.0%)、「人生相談に乗ってもらう」(10.8%)、「イラストやイメージ動画を生成する」(10.7%)が上位に挙げられました[図18] 。

AI機能を使ったことがあるもの 表

上記の中からコミュニケーション領域でのAI利用を見ると、全体の利用率24.3%に対し10代は49.0%とほぼ半数が“AIソロトーク”(AIとの個人的な会話)を実践しています。項目別に見ると、10代は「優しい言葉をかけてもらう」(30.0%)、「人生相談に乗ってもらう」(27.5%)、「愚痴を聞いてもらう」「慰めてもらう」「恋愛相談に乗ってもらう」(いずれも22.5%)など、スコアがずば抜けて高くなっています[図19] 。

コミュニケーション領域でAI機能を使ったことがあるもの 年代別 グラフ コミュニケーション領域でAI機能を使ったことがあるもの 年代別 グラフ

AI機能により「生産性が上がった」と実感。一方で「自分の存在意義に疑問を感じる」ことも

AIに対する考え方について、A or Bで答えてもらいました。自分の日常生活でのAIの浸透について聞くと、全体では「浸透している」46.3%:「浸透してない」53.8%ですが、10代では71.0%が「浸透している」と答えています。
生産性については、全体の68.8%はAIの機能のおかげで生産性が「上がった」と答えていますが、10代は78.5%、20代は75.5%と8割近くなっています。また、AIによって自分の存在意義に「疑問を感じる」は全体で43.1%ですが、10代は61.5%と多くなっています。AIが身近なだけに疑問を感じることも多いのかもしれません[図20]。

AIに対する考え方 グラフ AIに対する考え方 グラフ

若い年代は、AI活用で時間の「幸福度」が、タイパで「満足感」が上がる

AIによって自分の時間の幸福度は上がったかと聞くと、全体の58.5%が「上がった」と答え、10代〜30代では60%を超えています[図21]。
また、最短で成果や結果を出すタイパにより「無駄なく時間を使えることに幸せ・満足感を感じる」と答えた人は全体では61.1%ですが、10代は70.0%と高くなっています[図22] 。
AI機能の効果を活用・実感し、タイパで無駄なく時間を使いこなす若い年代にとって、AI活用は幸福度を、タイパは満足感を上げると認識されているようです。

AIによって時間の幸福度は上がる、タイパによって時間の満足度を感じる グラフ

「人にしかできないことに時間を使う」がAI時代の人間らしい時間の使い方に
時間を使うことがより貴重で価値あるものへと昇華

AIの利活用が加速する今の社会において、人間らしい時間とはどのようなものと思うか自由回答で答えてもらいました。AIにより自分の幸福度が上がると答えた若い年代からは、「誰でも行えることはAIに任せればいい。友達との時間や家族との時間はAIでは代えが利かない」(男性20代)、「AIに基礎的なものをやってもらって、人が具体的なものへと作り上げる。AIを頼りながらも、絶対に人間にしかできないことがある。人との関わりを大事に自分の経験を高めていく時間」(女性10代)といった意見が寄せられました[表1]。AIにできることはAIに任せて時間の効率化を図り、そこで生まれた貴重な時間を人にしかできないことに有効的に活用する、そのことがAI時代の人間らしい時間の使い方と認識されているようです。

AI時代の「人間らしい時間」とは… 表 AI時代の「人間らしい時間」とは… 表

去年と変わらず、「ばたばた」で「イライラ」の2025年
とはいえ、時間に追われる感覚はやや緩やかに

コロナ禍生活も過去の記憶となり、いつもの日常となった2025年。時間の感覚はどう変わったのか? これまでの調査結果から振り返ります。

引き続き「時間に追われ」「1日24時間では足りない」現代人、とはいえ昨年よりも緩やかに

普段、時間に追われていると感じるか聞くと、64.0%が「感じている」と答え、昨年(70.8%)から6.8ポイント減っています。時間に追われる感覚の変化を聞くと、49.2%が「強くなった」と答え、昨年(53.9%)から4.8ポイント減っています。1日24時間であることに対しては、56.9%が「足りない」と答え、昨年(60.8%)から3.8ポイント減っています[図23]。
コロナ禍から解放された実感の強かった2024年はそれまでの揺り戻しから時間に追われている感覚が強まり、1日24時間では足りない人が増えましたが、2025年はコロナ禍後の日常、まさに通常運転に戻ったと言えそうです。

普段の時間の感覚 グラフ 普段の時間の感覚 グラフ

自分の1時間の価値、オンタイムは昨年より高値の4,780円、オフタイムは昨年より安値の12,727円

仕事・家事・勉強をするオンタイムとプライベートなオフタイムの時間について、自分にとっての1時間の時価をそれぞれ値付けしてもらいました。その結果、平均で、オンタイムは1時間4,780円(昨年4,672円 +108円)、オフタイムは12,727円(昨年12,974円 −246円)となりました[図24]。オンタイムに比べオフタイムの価値がおよそ2.7倍と高いものの、今年はわずかながらもオンタイムの価値が上昇しています。

自分の1時間の価格 グラフ 自分の1時間の価格 グラフ

2025年の生活を象徴する言葉は「ばたばた」。「粛々」に代わり3年連続「ばたばた」が1位に

最近3カ月の生活を象徴するのにふさわしい言葉を、時間にまつわる言葉の中から一つ選んでもらいました。その結果、3年連続「ばたばた」(16.9%)が1位に選ばれました。コロナ禍では3年連続「粛々」がトップでしたが、2023年の規制緩和以降「ばたばた」がトップとなり、2025年のTOP3は「ばたばた」「だらだら」「のんびり」と昨年と同じ顔ぶれでした[図25]。

最近の生活を象徴する時間にまつわる言葉 ランキング 最近の生活を象徴する時間にまつわる言葉 ランキング

「イライラ」の毎日が続く中、「ぼうっと」した気分の人も増加

同様に、最近の生活を象徴する心情にまつわる言葉を一つ選んでもらうと、昨年に続き「イライラ」(15.3%)が1位、昨年2位の「ぼうっと」(15.3%)が同率1位と追い上げています。昨年3位の「すっきり」は6位に後退、一方昨年5位の「ハラハラ」は3位へ上昇しています[図26]。
何かと「イライラ」しがちな毎日、「ぼうっと」して心身を休めたり日々を振り返ったりすることも必要かもしれません。3位の「ハラハラ」がつらい状況ではなく、楽しいハラハラだといいですね。

最近の生活を象徴する心情にまつわる言葉 ランキング 最近の生活を象徴する心情にまつわる言葉 ランキング

今回の調査結果について、「時間学」が専門の一川誠先生にお話をうかがいました。

人生100年時代、将来に対する捉え方の年代格差はなぜ生じるのか?

2024年はコロナ禍が収束して「やったー!」という感じでしたが、今年はそんな浮かれた気持ちも落ち着き、いつものばたばたした毎日で、ぼうっとしたいという願望が高くなっているようです。そんな2025年ですが、今回の調査を見て、若い年代のポジティブさと中高年代のネガティブさの対比が気になりました。
学生たちを見ても感じますが、就職活動で売り手市場なこともあり、若い年代は将来に対して前向きです。AIなど新しい技術が登場し社会が大きく変わることも、自分たちにとってはプラスの追い風と捉えているようです。一方、40代・50代は、将来に対し不安を感じています。就職氷河期世代の40代は、経済的な影響が今でも大きいといわれますが、その40代より50代の方がより悲観的です。彼らは高度経済成長の良い時代を子どもの頃から知ってはいるものの、自分たちはバブル崩壊後に就職、これまでの良かった時代がどんどん失われ、確実だと思っていたことが不確実になっていく、その過程を体験しているから、将来を悲観的に捉えがちなのではないでしょうか。さらに定年延長や老後2000万円問題が叫ばれ、人生のゴールポストを勝手にずらされたように感じてしまう。手本とすべきロールモデルもないまま、いつまで働けばいいのか、でも働かないと先が見えない、と強く不安を感じるのが50代です。40代はまだ定年を実感しないのでその辺りの不安はやや低く、逆に60代は現役をやり切った余裕があるので、世の中をポジティブに捉えることができるのかもしれません。

ゆとりを生み出すタイパ術、AI活用でゆとりの時間を生み出せば時間の幸福度は高くなる

時間効率を高めるタイムパフォーマンス(タイパ)は、世の中にすっかり定着しました。かつて、優先順位付けのフレームワークで全てが時間効率優先のタイプAという行動パターンが取りざたされましたが、今はタイパを高めることで、じっくり考えるための時間やプライベートの時間などの時間的ゆとりを生み出すことが重視され、時間の使い方がちゃんと考えられています。そんな中に登場したのがAIです。AIを使えば時間効率は非常に高くなります。自分がやりたいことに時間を使えるようになれば、幸福度も満足度も高くなりますよね。
調査結果にも出ている通り、AIを使う若い年代、特に10代はその傾向が顕著です。一方、40代以降は幸福度も満足感もやや低くなっています。ここには、今まで築き上げてきたものがあるかないかで違いが出るのだと思います。上の年代からすれば、これまでの自分の実績がAIに取って代わられるかもしれない、ひょっとしたら今の仕事はAIがするようになるかもしれないと不安に感じ、科学技術の進歩を必ずしもポジティブなこととして捉えられない。一方、築き上げたものがまだない若い年代は、AIがあれば効率的に仕事ができ自分の時間を有意義に使えると、ポジティブに受け止めるのだと思います。

とはいえAIはまだまだ発展途上ツール、AIにコントロールされないようリスク管理も身に付けて

今回の調査では、10代の半数がAIでのコミュニケーションを実践していることが分かりました。人生相談や恋愛相談など、かなり個人的な相談にAIを利用しています。若い年代は悩みも多いので、AIに尋ねたいことも多いのでしょうが、心理学的にはちょっと心配なこともあります。例えば、人間のカウンセラーであればカウンセリングする指針が確立されていますが、発展途上のAIにはそんな指針はなく,現時点では野放し状態です。AIは相談者にとって都合が良く、聞き心地の良い言葉を最適なアドバイスのように、もっともらしく提示してくれます。AIだけとコミュニケーションすることで、悩みが深くなったり、周囲の人とのあつれきが大きくなってしまうケースが報告されています。今の若い人たちは、自分の愚痴に付き合わせるのは相手の時間を奪ってしまうと感じることから、手軽なAIとソロトークしやすいのかもしれません。ですが、誰かに話を聞いてほしいとき、AIだけでなく身近な人とも会話をして、時には自分と違う意見にも耳を傾けてみてはいかがでしょうか。AIの言うことをうのみにしない、これからのAI社会ではそんなリスク管理を身に付けることも大事になってくると思います。

一川 誠(いちかわ・まこと)先生

一川 誠(いちかわ・まこと)先生

千葉大学大学院 人文科学研究院教授
専門は実験心理学。実験的手法により、人間が体験する時間や空間の特性、知覚、認知、感性の研究に従事。
現在は、視覚や聴覚に対して与えられた時空間情報の知覚認知処理の特性の検討を行っている。「大人の時間はなぜ短いのか」(集英社新書)、「時計の時間、心の時間-退屈な時間はナゼ長くなるのか?」(教育評論社)など著書多数。

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コミュニティ活動

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課題解決に向けたこれまでの活動記録を発信しています。
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セイコーグループの技術を結集して製作した「UNI2031」。
プロジェクトの象徴として、「未来への挑戦」そして「時間の多様性」をコンセプトに誕生したマスコットキャラクターです。

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