セイコー時間白書2021

時間の多様性が加速
コロナ禍だからこそ気付けた、幸せな時間がある

コロナ禍で気付いた これからも維持したい時間は、「趣味の時間」と「家族との時間」

私たちの生活を大きく変化させたコロナ禍ですが、弊害だけではありませんでした。コロナ禍で増えて良かった時間を聞くと「趣味の時間」(39.4%)や「家族とのコミュニケーション時間」(36.1%)が挙げられました[図1-1]。また、減って良かった時間には「会社の飲み会・食事会の時間」(33.3%)や「通勤時間」(28.8%)が挙げられました[図1-2] 。

増えて良かった時間の中で、今後も維持したい時間を聞くと「趣味の時間」(38.2%)と「家族とのコミュニケーション時間」(36.8%)が選ばれました[図1-3]。コロナ禍という逆境だからこそ、気付くことができた大切な時間です。そこで、コロナ禍で生まれた「幸せな時間の使い方」を聞くと、[図1-4]のようなさまざまな時間の使い方が寄せられました。人それぞれが、自分のペースや趣向にあった豊かな時間の使い方に気づき、実践していることが感じられます。

コロナ禍で時間を「価値あることに使う」方向にシフト
時間の使い方をきちんと見直す“時律”のススメ

コロナ禍で「人生をより豊かにするための時間の使い方について」考えた人が2人に1人

次に、時間の使い方について考えた経験の有無を聞きました。コロナ禍による時間の過ごし方や使い方については52.2%、より効率的に生活するための時間の使い方については48.6%、人生をより豊かにするための時間の使い方については54.1%が考えたことがあると答えています。半数の人にとって、コロナ禍は時間について見つめ直すきっかけとなったようです。年代別に見ると10代や学生のスコアが高く、リモートワークをしている人の方がしない人より考えることが多くなっています[図2]。

半数が臨機応変にスキマ時間を活用
自らの時間を充実させるための“時間マネジメント”の意識が高まっている?

また、コロナ禍によるプライベートな時間の使い方の変化を聞きました。臨機応変に自らの裁量でスケジューリングしながら過ごしていると答えたのは46.8%[図3-1]、隙間時間も工夫しながら過ごしているのは46.1%[図3-2]と、半数の人がプライベート時間にも工夫を凝らしています。

コロナ禍で自由な時間はできたけれど… うまく使えないジレンマもあり

コロナ禍での時間の使い方について詳しく聞いてみました。55.6%がコロナ禍で「自分で使い方を決められる時間の増加を歓迎」していますが、「自由な時間を得ることは、自分で負う責任が強くなる」と、責任を自覚する人も51.3%います。一方、3割は「使い方を決められる時間は良いけれど持て余している」(31.3%)と困惑気味で、「人に委ねていた時間も今思えば良かった」(29.1%)と思いをはせる人もいます。属性別で見ると、一番はしゃぎそうな「学生」のスコアがいずれも高く、コロナ禍の学生への影響力の強さが感じられます[図4]。

現代人の時間価値はオンタイム4,253円、オフタイム12, 992円
オフタイム価値が観測史上最高に(17年調査開始)

オフタイムの時価がさらに上昇し遂に1万円超え! プライベートな時間がより一層大切に

自分の1時間の価値(=時価)を値付けしてもらいました。仕事や家事・勉強をするオンタイムは1時間4,253円となり、20年4,443円よりやや下がりました[図5-1]。一方、プライベートなオフタイムは1時間12,992円と、20年8,346円から+4,646円(2020年比155.7%)、17年6,298円から+6,694円(2017年比206.3%)と2倍以上も高くなっています[図5-2]。
オンタイムとオフタイムの価格差は年々広がり、17年は2,629円差、20年は3,903円差だったものが、21年には8,739円もの大差になっています。オフタイムの価値がそれだけ高くなり、大切な時間として認識されているようです。

最も大切な時間は、「金・土夜」と「月朝」で変わらず

1週間の中で最も大切にしている時間帯は「土曜日22時台」「金曜日22時台」「金曜日21時台」「月曜日6時台」「月曜日5時台」の順となりました[図6]。プライベートを楽しむ週末の夜と、オンタイムに突入する月曜の朝の、切り替えの時間が大切な時間帯となっています。この傾向は、17年、20年とほぼ変わっていません。

コロナ禍で自分時間が増えた一方、コントロールの難しさを痛感する学生も

オフタイムの価値が高まる一方、時間の使い方で困っていることを聞くと、「他人がどのような時間・リズムで生活しているかがわからない」(46.2%)、「生活のメリハリがはっきりしなくなった」(42.3%)、「時間を自分で効率的に計画し、使うことが難しい」(41.8%)などが困りごととして挙げられました[図7]。
これを属性別で見ると、「学生」のスコアがいずれも高く、「時間を自分で効率的に使うことが難しい」(72.9%)、「生活のメリハリがはっきりしなくなった」(70.4%)など、自分で時間をコントロールすることに戸惑いを感じている様子がうかがえます。また、「リモート環境による怠け癖」(62.6%)を心配する声も上がっています。コロナ禍は、時間の使い方を再認識させる機会にもなっているようです。

リモートワーカー メリハリ問題のその後
2年目にしてやや緩和、うまく折り合いを付けられるように

リモートワーカーの仕事の裁量度80%に伸長 前年比4.4ポイントアップ

次に、有職者を対象に、重要なオンタイムとなる自身の仕事の進め方について聞きました。すると、「自分の裁量で時間をコントロールしながら進められる」24.5%、「業務量など、タスクによっておおよそ決まるが、ある程度自分で進められる」38.6%と、働く人の63.1%が自分の裁量で仕事がコントロールできる環境にいます。リモートワークする人では80.8%が自分の裁量でコントロールができ、リモートワークしない人 (56.5%)より24ポイントも高くなっています[図8]。
リモートワーク元年の2020年と比較すると、有職者全体の裁量度はほほ横ばい(62.3%→63.1%)ですが、リモートワーカーでは76.4%から80.8%へと4.4ポイント伸びています。

2年目でリモートワークのマイルールが確立か? メリハリの付けにくさがやや改善

自分の裁量で仕事を進められる人は増えていますが、メリハリのあるワークスタイルはできているのか、時間のメリハリについて聞いてみました。すると、有職者の6割が「時間のメリハリを付けにくい」と答えており、リモートワークする人は63.5%と、しない人(58.7%)よりメリハリの付けにくさを感じています。しかし、昨年はリモートワークする人の74.7%がメリハリを付けにくいと答えていたことから、11ポイント改善されています[図9]。
ウィズコロナ生活2年目となり、リモートワークする人もオンオフの切り替えができるようになってきたのかもしれません。

自己管理にも気を付けたい リモートワーカーの4割が「集中しすぎ」を経験

自分の裁量で仕事がしやすいリモートワーカーですが、それだけ自己管理も重要になります。
仕事に集中しすぎて気が付いたら日が暮れていた、そんな経験があるかと聞くと、20年は35.0%でしたが21年は40.4%に増えており、週に1日以上リモートワークする人では42.9%とさらに増えています[図10]。
集中しすぎや抱え込みすぎてオーバーワークにならないよう、メリハリのあるワークスタイルを心掛けたいものです。

コロナ禍での時間速度は例年の2倍以上に
若い世代ほど速く感じている

体感速度 2020年は例年の2倍の速さで過ぎ去ってしまった

2020年を振り返って、それまでの年に感じていた時間の速度を1倍速としたとき、2020年の時間の速度はどのくらいに感じたか聞きました。すると、2020年の体感速度は平均で2.03倍という結果になりました。
年代別で見ると10代2.66倍、20代2.31倍と若い世代の体感速度が速く、学生は2.57倍です。また、有職者1.88倍より専業主婦・主夫2.04倍の方が速く感じています [図11]。

約半数が時間がたつのが「速く感じる」 10代、20代、学生と若い世代は速く感じる人が多い

コロナ禍で生活時間に変化があったと答えた人に、生活に関する時間の速さの変化を聞きました。すると47.5%が「速く感じる」と答えており、前回(35.6%)より11ポイント増えています。年代別で見ると10代64.0%、20代52.5%に多く、学生は65.9%が「速く感じる」と答えています。上記の体感速度の感じ方と一致しています[図12-1]。
仕事に関する時間がたつ速度について聞くと、3人に1人は「速く感じる」(33.9%)と答え、リモートワークする人では40.7%が「速く感じる」と答えており、リモートワークしない人(30.5%)より10ポイント高くなっています。一方、前回は仕事時間が速く感じると答えたのは30.7%で今回より少ないものの、リモートワークする人では43.5%が速く感じると答えていました[図12-2]。リモートワークに対する慣れが、速さを感じさせないのかもしれません。

コロナ禍ダメージが大きい若者たち
SNSや倍速視聴で時間にもコスパを求める?

コロナ禍ダメージが大きい若者たち
学生の7割がオフィシャルな時間が減ったと回答

コロナ禍により、仕事や家事、勉強をするオフィシャルな時間が減ったかと聞くと、約半数(46.6%)が減ったと答えました。10代70.5%、20代46.0%、学生67.0%の若い世代やリモートワークする人59.6%がより強く感じています[図13]。

一方、「何もしない時間が増えた」と答える人は33.7%となり、約3人に1人が時間の使い方を持て余していることがわかります。特に学生では半数以上(55.7%)が「何もしない時間が増えた」と感じていることから[図14] 、これからどうすればいいのか、今どう過ごせばいいのか、時間の使い方がわからずぼうぜん自失となっている様子がうかがえます。人生の中で最も楽しく濃密な時間を謳歌(おうか)する世代だけに、非常に酷な環境に直面していることがうかがえます。

それ故か、10代62.0%、20代51.0%、学生60.1%が「コロナ禍後、もっと世の中と関わる時間を増やしたい」と望んでいるようです[図15]。

スピードアップ視聴が学生のスタンダード?
学校のオンライン講義は半数がスピードアップ視聴で受講中

若い世代に多いスピードアップ視聴。スマホなどで動画を見るときは学生の32.7%が、録画した番組を見るときは23.2%が倍速で視聴しています。学校のオンライン講義は51.2%と半数がスピードアップ視聴しています[図16]。

2021年のウィズコロナ生活を表現する言葉、昨年に続いて
1位「粛々」、アフターコロナは「のびのび」に

ウィズコロナ生活は今年も「粛々」と。アフターコロナ生活は「のびのび」に

最近3か月のウィズコロナ生活と、コロナ収束後のアフターコロナ生活を表現する時間にまつわる言葉を選んでもらいました。
ウィズコロナ生活は、昨年も今年も1位「粛々」(20年19.1% 21年17.3% -1.8ポイント)、2位「だらだら」(20年15.3% 21年13.8% -1.5ポイント)ですが、スコアはやや下がっています。逆に「ばたばた」(20年10.3% 21年13.0% +2.8ポイント)や「せかせか」(20年6.8% 21年10.2%+3.3ポイント) のスコアが高くなっています。息を潜める自粛生活から、動きだしたいという気持ちが表れているようです[図17-1]。
コロナ収束後は、昨年同様「のびのび」(25.7%)がトップで、「のんびり」(14.4%)、「てきぱき」(13.4%)の順になりました。昨年は「のびのび」(20.5%)に次いで、「てきぱき」(13.3%)「ばたばた」(13.1%)の慌ただしい言葉が選ばれています[図17-2]。今年の方があわてずゆっくり、という意識が強いのかもしれません。

ウィズコロナ生活、先が見えずに「ぼうっと」しちゃうことも…、早く「ほっと」して「わくわく」したい

次に、コロナ収束後のアフターコロナ生活の心情を表現する言葉を選んでもらいました。
コロナ収束後は、昨年同様「ほっと」(24.8%)がトップですが、「わくわく」(23.8%)が2位に浮上し、1位とのスコア差もわずかです[図18]。ほっとしながらも、何をしようかわくわくする前向きな気分がより強く感じられます。

コロナが収束したら、「友人と外食」「配偶者と旅行」を堪能したい!

コロナが収束したら、誰と何をしたいか聞きました。外食は「友人」(55.6%)や「配偶者」(39.5%)や「子ども」(31.8%)、旅行は「配偶者」(40.2%)や「友人」(32.6%)、映画は「友人」(24.0%)や「配偶者」(21.8%)だけでなく「1人で」(18.7%)見たい人も。遊園地は「友人」(28.9%)や「配偶者」(25.6%)や「子ども」(23.3%)。スポーツは「友人」(20.8%)と一緒か「1人で」(20.4%)、コンサートは「友人」(24.8%)と楽しみたい、という結果になりました[図19]。

<セイコー時間白書 グローバル編>
〜アメリカ・中国の調査から見える、日本と海外で異なる時間意識〜

今回は海外との時間意識の違いを見るべく、アメリカ(ニューヨーク在住の10代~60代男女120人)と中国(上海在住の10代~60代男女120人)でも調査を行いました。日本での調査結果(全国の10代~60代男女1,200人)と比較します。

9割が時間に追われていると感じる中国人 時間に追われる感覚も8割以上が「強まった」と回答

まず、時間に追われている感覚について聞くと、日本は61.8%が「追われている」のに対し、アメリカ69.2%、中国90.8%となりました[図20-1]。その感覚は以前と比べてどう変化したかと聞くと、時間に追われている感覚が「強くなった」のは日本44.2%、アメリカ52.5%に対し、中国は85.8%と一層高くなっています[図20-2]。中国人は日頃から時間に追われる感覚が強く、さらに加速化しているようです。

2020年は3倍弱で過ぎ去ったと感じるアメリカ人 中国人の体感速度の約2倍という結果に

例年の時間の速度を1倍速としたとき、2020年の体感速度はどれくらいか聞きました。日本は2.03倍、アメリカ2.92倍、中国1.49倍という結果でした。新鮮な体験が少ない時間は、振り返った際、あっという間に過ぎ去ったように感じられるといわれていますが、国ごとにその感覚の違いが見える結果となりました。同様に2021年のこれまでの体感速度は、日本2.03倍と中国1.68倍は2020年と同程度の回答となりましたが、アメリカは2021年は3.39倍と2020年以上の猛スピートに感じているようです[図21]。

時間の使い方にもお国柄?
目安時間を計算して行動する日本人、効率を重視するアメリカ人と中国人

時間に関する行動17項目を挙げ、当てはまるものを選んでもらった結果、日本は「物事を始める前におおよその目安時間を計算して行動」(68.3%)がトップですが、アメリカ(83.3%)と中国(95.8%)は「なにごとも効率的に進められるよう工夫」がトップでした[図22]。
「時間を短縮するためにタクシーを利用する」は日本9.6%に対しアメリカ36.7%、中国63.3%、「朝活する」は日本28.0%に対し、アメリカ59.2%、中国85.8%と実践する人が多くなっています。

日米差が大きいのは「やることがない時間が出来るとつい不安」日本30.8%<アメリカ67.5%(36.7ポイント差)、日中差は「せわしなくさまざまなことに追われることは楽しい」日本25.5%<中国86.7%(61.2ポイント差)でした。
1日24時間、時間の長さは世界共通ですが、その使い方は国により大きく異なるようです。

時価比較 オフタイムの価値が高い日本人、オンタイムを重視する中国人、どちらも同じアメリカ人

大切な時間 「睡眠・休憩」の日本人、「趣味・遊び」のアメリカ人、「仕事・家事・勉強」の中国人

次に、オンタイムとオフタイムの自分の1時間の価値(=時価)を値付けしてもらいました。日本は前述図5の通り、オンタイム4,253円、オフタイム12,992円でしたが、アメリカはオンタイム8,590円(78.98ドル) 、オフタイム8,561円(78.71ドル)、中国はオンタイム2,319円(136.55元)、オフタイム1,751円(103.15元)となりました。日本はオン・オフの差が大きくオフタイムが断然高いのに対し、アメリカはほぼ同じで、中国はオンタイムの方が価値が高いと値付けされています[図23]。

そこで、大切にしている時間を選んでもらうと、日本は「睡眠・休憩の時間」(76.6%)、「趣味・遊びの時間」(75.7%)、「ひとりで過ごす時間」(73.5%)とプライベートな時間が上位に挙げられました。アメリカも同様にプライベートな時間が大切な時間の上位に挙げられていますが、「睡眠・休憩の時間」(88.3%)よりも「趣味・遊びの時間」(89.2%)の方が上位で、よりアクティブにプライベートな時間を楽しみたいという意向が感じられます。一方中国は、「仕事・家事・勉強をする時間」(96.7%)のオンタイムがトップとなりました。オフタイムよりオンタイムの時価が高い中国、納得の結果です[図24]。

時間の効率や合理化をより推進したい中国
適度に推進したいアメリカ、よりあいまいな日本

時間の使い方に対する意見を聞きました[図25]。
①時間を効率的に使うことに関しては、3カ国とも「意識する」が多く、中国では76.7%が意識すると答えています。
②普段忙しい人が休む時に時間を贅沢(ぜいたく)に使うと表現することは、「共感する」が多くなっていますが、中国は共感するも共感しないもどちらも3カ国で最多です。
③無駄な時間を排除して効率性、生産性向上、時間を管理することを重要視する傾向も、3カ国とも「共感する」が高く中国では67.5%と最多です。
④時間の合理化は「進めたい」が3カ国とも多いものの、日本は42.8%と半数以下で、中国は66.7%と7割が合理化推進派です。

時間の使い方の自己採点 中国78.4点 アメリカ64.5点 日本58.8点

「自由な時間には責任が伴う」と考える日本と中国 「選択肢の中から自由に選びたい」アメリカ

時間をうまく使いこなしている度合いを100点満点として、自分の時間の使い方を自己採点してもらいました。その結果、日本は平均58.5点、アメリカは64.5点、中国は78.4点という結果になりました[図26]。
そこで、時間の使い方についての価値観を聞いてみました。すると、日本のスコアはアメリカや中国に比べて総じて低い結果となり、2国に比べて時間への関心がやや低いようです[図27]。

内容を見ると、日本(55.6%)もアメリカ(84.2%)も中国(88.3%)も「自分で使い方を決められる時間の増加を歓迎」がトップですが、日本(51.3%)と中国は(81.7%)は「自由な時間を得ることは、自分で負う責任が強くなる」が2位で、自由は責任感の下に獲得できるという考え方が強いようです。ちなみに、自由の国アメリカでは最下位(60.8%)でした。
日本と中国はスコアこそ違えど順位は同じで、時間に対する自己評価には差があるものの、捉え方は似ているようです。

コロナ禍による生活変化、日本人は半数が考えているが、アメリカ人7割、中国人8割とより真剣に

では、コロナ禍による生活変化について考えたかどうか聞くと、日本は前述図2の通り、半数程度が考えたと答えましたが、アメリカでは7割超、中国では8割以上が考えたと答えています[図28]。
ウイルスの抑え込みやワクチン接種の進み具合など、各国の新型コロナとの関わり方の違いが、意識の差にもつながっているのかもしれません。

コロナが収束したら、ウィズパートナー!

コロナが収束したら誰と何をしたいか、日本は前述図19の通り「友人と外食」(55.6%)、「配偶者と旅行」(40.2%)が上位に挙げられましたが、アメリカは「配偶者と旅行」59.2%、「配偶者と外食」52.5%が高く、中国も「配偶者と旅行」70.0%、「配偶者と外食」50.0%が高くなっています[図29]。
アフターコロナのお楽しみはまずは配偶者と!がお約束のようです。

今回の調査結果を基に、心理的なアプローチによる「時間学」を提唱されている
千葉大学の一川誠先生にお話を伺いました。

コロナ禍で時間の体感速度が逆行 長くゆっくり感じるはずの学生の体感速度が最速に

今回の調査では、若い世代へのコロナ禍の影響の大きさが浮き彫りになっています。2020年の体感速度は平均2.03倍と誰もが例年より速いと感じていますが、特に学生は2.57倍と非常に速く過ぎたと感じています。「感じられる量は参照される物理量の対数に比例して変化する」という知覚の一般的特性(フェヒナーの法則)は時間の感覚にも当てはまり、年を重ねるごとに時間経過は速く感じるようになります。しかし、今回の調査では、若い人ほど速いという逆行する結果となっています。こうした傾向があることは学生と接していても感じていましたが、予想以上に大きな影響を受けていたことがわかり、驚いています。入学式も授業もサークル活動もコンパも、期待とは懸け離れた現実で、振り返るとぼんやりとした1年。思い出に残ることが極端に少ない時間を過ごすと、そのときは長いと感じても、振り返るとあっという間に感じがちです。本来は時間の経過が速く感じる上の世代よりも学生の世代の方が大きな影響を受けたのは、この世代が本来体験すべきことの多くが失われてしまったから、と考えられます。

何もできない今しか経験できないことが、「豊かな時間」と「ポジティブな人格形成」につながる

これからもウィズコロナ生活は続きますが、今の環境下でも「豊かな時間」を過ごす方法があります。特別な体験をしたという記憶は自己評価を高め、ポジティブな人格形成につながります。それが今回のコロナ禍というつらい経験だったとしても、その中で思い出すことがあれば、その後の自分の人格や生活につながっているとポジティブに捉えられ、豊かな時間と感じられるのです。例えば、海外の美術館のライブビューイングに参加したり、当大学でも開催されているような、オンラインサークルで友達と一緒に活動したり、今だから体験できる、今しか体験できないようなことをやってみることが有効だと思います。今の時代、手軽に参加できる環境も道具も調っているので、コロナという禍を生かしてチャレンジすることが、アフターコロナにも役に立つ有意義な時間となると思います。

リモートワークでのメリハリ付かない問題は、「時間」「空間」「気持ち」を区切る自分サイズのマイルールで改善を

昨年の調査で、時間のメリハリが付けにくいリモートワーカーという課題が浮かび上がりました。今回も解決されてはいないものの、改善の傾向が見られます。おそらくは、リモートワーク生活も1年が過ぎ、働き方のペースができてきた人が多いのではないでしょうか。家の中で仕事をする場所が確保できたとか、○○したら休憩するとか、空間や時間を分けるマイルールが定まってくると、メリハリが付けやすくなります。仕事するときはこの机!と決めてみるのも有効です。時間、空間、気持ちの区切りを心掛けてみてください。

コロナ禍で経験した「多様な時間の使い方」「能動的な働き方」を社会のナレッジとして生かしたい

コロナが収束した後、私たちの生活はコロナ前にただ戻るのではなく、コロナ禍で得た知識や経験、事例やノウハウ、スキルなどをナレッジとして生かし、有効活用できる社会になるといいですね。
今回の調査で、家族や趣味などのプライベートな時間は今後も維持したい時間となっていますが、コロナ禍で多様な働き方、多様な時間の使い方を経験したことで、趣味や家族の時間も仕事と両立できるという実感を持った方が多いのではないでしょうか。コロナ収束後は、仕事と家庭の両立が、特別なことではなくなっていそうですね。
コロナ環境下で働く中、工夫すれば時間内で仕事ができるというような、能動的な仕事の仕方を学習された方も多いことでしょう。経験から養われたコツやノウハウ、それを生かすためのツールやリズムなど、コロナ禍で構築されたさまざまな成功事例は、コロナ収束後も社会で共有され、役立つようになると思います。
コロナ禍で、私たちは時間の長さは一定だけれども、使い方は無数にあるという時間の多様性に気付くことができました。社会に多様性が求められるように、時間の使い方も多様化するのが自然の流れです。コロナ禍で気付いた時間の使い方が、社会の資産として共有され、一人一人や、みんなに、社会全体に役立つことを願います。

一川 誠(いちかわ・まこと)先生

一川 誠(いちかわ・まこと)先生

千葉大学大学院人文科学研究院教授/日本時間学会会長。
専門は実験心理学。実験的手法により人間が体験する時間や空間の特性、知覚、認知、感性の研究に従事。
現在は、視覚や聴覚に対して与えられた時空間情報の知覚認知処理の特性の検討を行っている。「大人の時間はなぜ短いのか」(集英社新書)、「時計の時間、心の時間-退屈な時間はナゼ長くなるのか?」(教育評論社)など著書多数。

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