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文 生島 淳
写真 近藤 篤

マラソンを通じて人生をエンジョイしている川内選手。しかし、ある時期には走ることが苦しかったこともあると告白しました。
それをどのようにして、克服したのか? 
原点に回帰することで走る喜びを取り戻した話は、一般ランナーのみなさんにもヒントになるはずです。
それでは、マラソンを通して自己実現を達成している「川内スタイル」をお楽しみください。

前編はこちら
【前編】川内優輝「走ることを楽しむ、それが何より大切です」

川内優輝 写真

今回は、マラソンに取り組んでいる市民ランナーのみなさんに向けたメッセージをお聞きしようと思います。なんといっても、川内選手は市民ランナーからボストン・マラソンのチャンピオンにまでなった方ですから。マラソンを続けていくにあたって、大切なことはなんでしょう。

基本は楽しむことですよね。私はマラソンを走っていても、疲れるどころか楽しくて仕方がありませんから。

さすがです。(笑)前回、高校時代から市民マラソンが大好きだったというお話をうかがいましたが、ずっと走ることが好きだったんですか。

実は、とてもつらい時期がありました。

川内優輝 写真

それは意外ですね。それはいつごろのことですか?

2010年の夏です。その年の2月に行われた東京マラソンで4位に入り、「公務員ランナー」ということで、一躍注目していただけるようになったのは良かったんですが、監督からいただいたメニューがなかなかこなせなくなってしまいまして。

ということは、日常の練習からつらくなっていたんですね。

そうなんです。僕は練習に関して、完璧主義者でした。与えられたメニューを完璧以上にこなすことに喜びを感じていたんですが、世界陸上やオリンピックを目指すようになってくると練習の質が上がっていき、練習を完璧に消化することがむずかしくなっていったんです。前年の2009年の夏は冷夏で練習が積めたんですが、2010年の夏は猛暑で体力的にも苦しくて。

川内優輝 写真

上を目指そうとすればするほど、強度は強くなり、故障のリスクも増えるのに、猛暑では……。

つらかったですね。ついには練習中に転んでしまい、ケガをしてしまったんです。そのとき、僕はどう感じたと思います?

想像もつかないです。

「よかった。これで練習を休める。」と思ってしまったんですよ。それほど精神的に追い込まれていました。

それはつらい。

でも、僕としてはその瞬間に、新たに走る喜びを見出せたと思っています。

川内優輝 写真

もう一度、前向きに練習が出来るようになったんですね。

そうなんです。いろいろと自分の状況を顧みて、「なんのために走るんだろう?」と自問自答しました。そしてたどり着いた答えが、「とにかく楽しくやろう」という結論でした。

とってもシンプルですね。分かりやすい。

世界の舞台を目指すというよりも、自分が好きなことをする「一般ランナー」に戻れたんです。自分が大好きな市民マラソンに出るために練習をしよう。大会で楽しく走るために、前向きに練習に取り組もう。ある意味、原点に戻れたのかもしれません。

川内優輝 写真

これまで、印象に残っている楽しめたレースはありますか。

どのレースも素晴らしいですよ。ひとつ挙げるとするなら、歴史のあるボストン・マラソンは特別な感じはありました。

ボストン! 日本人では過去に瀬古利彦さんなどが優勝していますが、21世紀に入ってから、アフリカ国籍以外の選手が勝ったのは、川内さんが3人目。快挙でした。

過分な言葉を頂戴し、ありがとうございます。4月の半ば、2018年のボストンは春とは思えない凍えるような寒さだったため、ランナーだけではなく、沿道で応援してくださる市民のみなさんの応援がすごくて、喜びに満ち溢れているレースでした。

川内優輝 写真

走らずとも、応援で参加できるのがマラソンの素晴らしさですね。

おっしゃる通りです。ボストンの場合は市民ランナーのみなさんも真剣で、だからこそより楽しめる雰囲気があります。私が勝った2018年のレースは、私が得意とする悪天候のレースだったんですが(笑)、それを忘れてしまうほど応援から力をいただきました。環境が厳しいほど、走っているときに応援してくださる方との一体感を味わうことが出来ますね。

やはり、楽しむためにこそ、練習が大切なんですね。

マラソン大会を楽しく走るには、継続的に練習を積み重ねる必要があります。マラソンには、とても計画性が重要だからです。計画し、実行する。でも、ひとりきりだと、「今日は体調がいま一つだから、明日頑張ろう」と考えてしまい、練習が後回しになってしまいます。僕は、練習を続けていくためには、「仲間」が大切だと思っているんです。

一緒に練習できる友だちですね。

高校、大学は部活動でしたから、一緒に競い合う仲間がいました。自分だけではなく、同世代の仲間と走ることで練習が積めていたんですね。ただ、競技力を上げようと頑張っていた時は、仲間がいなかった。監督のマン・ツー・マンでした。振り返ってみると、自分の中に閉塞感があったのかもしれません。ところが、楽しむために練習をするようになると、他の市民ランナーの方々と一緒に走ったり、あるいはレースに出て大学の強豪校の部員のみなさんと走る機会があったりと、自分が頑張れる要素が見つかったんです。もう、そうなれば楽しいですよね。

川内優輝 写真

マラソンには孤独なイメージがありますが、やはり人とのつながりによって、より楽しめるようになるんですね。今も練習パートナーの方はいらっしゃるんですか。

あの、実は2019年に結婚いたしまして、普段は妻と一緒にジョグをしております。

これは失礼しました! 奥さまもマラソンランナーでしたね。

家庭では栄養管理もしてもらっておりまして、本当に助かっております。

人生のパートナーであり、マラソンの友でもあるわけですね。パートナーといえば、ランナーにとって、時計は大切なアイテムですね。

もちろん、ひとりで練習する時もありますから、その時に時計がないと、どれくらい走ったか見当もつかないですからね。いったい、自分がなにをしているのか、さっぱり分からなくなります。(笑)

時計 プロスペックス SBEF051

時計 プロスペックス SBEF051 13,000円(税別)

川内選手は、どんな形状の時計が好みですか。

やはり軽くて、なるべく薄い時計がいいですね。ただし、世界陸上のように順位にこだわる大会であれば、あまり時計に頼りすぎず、ペースの確認に使う「相棒」のような存在ですね。

川内選手の話を聞いていると、マラソンを通じて人生をエンジョイしている感じが伝わってきます。そもそも、落ち込むときはあるんですか?

ありますよ。人間ですから。2019年のドーハで行われた世界陸上では、酷暑対策を万全にしていったにもかかわらず、意外にも涼しい気候になってしまい、想定していたよりもスピード勝負になってしまいました。しっかりと暑熱対策の準備していただけに、落ち込みました。でも、そのあと走っているうちに前向きになれました。

川内優輝 写真

やはり、走ることに喜びがある。

いま、私はアマチュアランナーからプロになり、本当にやりたいことが出来ています。「プロランナーなんて、無理だ」とおっしゃる方もいました。でも、いまこうして実現できていますし、私の趣味である旅も、マラソンを通じて実現できています。ボストン、2013年にはニューヨークにも攻め込みましたし、チェコのプラハ、ドイツのトリーアなどなど、どこも素敵な街です。これだけ楽しいことを自分が独占しているのはもったいないので、みなさんもしっかりと継続的に練習して、楽しんでいただきたいですね。

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