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文 清水麻衣子
写真 近藤 篤
ヘアメイク 石黒麻紀

4年前、CMで話題になった”忍者女子高生"を覚えているだろうか。走ったり、跳んだり、登ったり……流れるような素早い動きで縦横無尽に動き回っていた女子高生。彼女こそが現在世界で活躍するパルクールトレーサー(実践者)の泉ひかりさんだ。
2019年にはFIG Parkour ワールドカップシリーズにてスピード部門で1位、フリースタイル部門で2位の結果を残す実力者でもある。
パルクールとは、フランス発祥の軍事トレーニングが発展して生まれたスポーツ、あるいは動作鍛錬で、走る・跳ぶ・登るといった移動動作を通じて、人が持つ本来の身体能力および精神面の能力を引き出し、追求する方法。
今回のHEART BEAT MAGAZINEは、泉さんがパルクールに出会い、魅せられた理由、思い描く未来について、話を聞いた。

泉ひかり 写真

パルクールを知り、やりたいと思ったきっかけは何だったのですか?

高校2年生くらいのときに、どんなに動いてもメガネがずれないという、アクロバティックな動きをしている人のCMを見たのがきっかけで、きっとCGかワイヤーアクションなのだろうと思っていたら、後日、生身の人間が本当に動いているということを教えられ、そこで「パルクール」というスポーツがあることを知ったんです。子どものころ、公園を走り回ったり、木に登ったり、柵を飛び越えたりして遊んでいたあの動きが、パルクールだったと思うと、すごく興味が湧いて……。近場でできるところを探し、練習会に参加してみたのが最初の一歩です。

ストレッチ中の泉ひかり 写真

もともとスポーツは得意だったのですか?

小・中学生のころはほとんど外で、男の子と駆け回って遊んでいるような子でした。スポーツも水泳、空手、ソフトボール、テニスなど、いろいろやっていたんですが、ジャッキー・チェンが好きでスタントマンになりたくて、小学4年生のとき、アクションを習ったんです。殺陣や受け身とか、ワイヤーアクション、トランポリンなど。1年通ったころ、その教室がつぶれてしまって、そのまま同じ先生が同じ場所で、今度は体操を教え始めて。ほとんどアクロバットみたいな内容だったのですが、しばらくすると演技のレッスンも受けないといけなくなって、それがイヤで辞めてしまいました。女優とかアクション俳優には興味がなく、表に出るのも苦手でした。

泉ひかり 写真

パルクールの魅力って、どんなところですか?

普通のスポーツだと勝つための競技として存在することが多いですが、パルクールはあまり人と戦うことを主軸にしていないんです。自分の好きなスタイルで、何ができるかっていうことを一つ一つ探りながら、分析しながら、練習をし、新しくできることが増えていく達成感や成長する喜びを感じられることが楽しいと思います。また、行けば仲間に会えるっていうのも大きいですね。勝つためにバチバチしていなくて、大会の前日なのにホテルに集まっておしゃべりして夜ふかししたり、終わった瞬間にみんなで観光に出かけたり……。パルクールをやっている人はみんな家族だ、みたいなつながりが強いんですよ。

泉ひかり 写真

2024年の世界の舞台でパルクールが採用されるのではと注目を集めていますよね。人と戦うためのスポーツではないなんて、意外です。

スポーツになったのは最近なんです。軍事トレーニングから始まって、最初はアクロバットを織り交ぜたパフォーマンス要素が、テレビやミュージックビデオ、映画の世界で注目されて有名になったと思うんですけど、もともとはアクロバットもなく、人と競い合うものでもなく、ただみんなで集まってトレーニングしましょう、というものだったんです。最近は大会がどんどん開かれるようになって、選手として活躍する人たちも増えましたが、競うことがすべてではなく、そういう面も出てきたという感じかな。海外では、老人ホームや幼稚園、小学校などでもパルクールを取り入れて、体を鍛えているんですよ。パルクール専用ジムやパルクールパークもたくさんあって、いいな〜と思います。

泉ひかり 写真

すごく危険で、マネしたら大変なことになるイメージでしたが、少し印象が変わりました。パルクールをやってみたいという人にアドバイスをするとしたら?

最初は練習会とかワークショップなどで、パルクールの経験者に教えてもらうのがいいと思うのですが、その前に、自分がどのくらい動けるのか、どういうことに対して恐怖心を感じるのかということを、公園などで試してみるといいと思います。たとえば、縁石の上を歩くことができるか、ブランコの周りにある手すりに立ってバランスを取れるかなど。いきなり飛び乗るのは本当に危ないのでやってほしくないですけど、自分の中で安全にできる範囲で把握してみるというのは大事な一歩なのかなと思います。

私の場合はもともとスポーツをしてきたバックグラウンドがあるので、スポーツができないとパルクールはできないと思われがちですが、リハビリで用いられていたりもするし、40歳、50歳で始める人もたくさんいるんですよ。私もおばあちゃんになっても続けたい! 楽しみ方は自由なので、自分の思い描くパルクールをしていけばいいと思います。楽しく体を鍛えて、自分の体をコントロールし、メンタルも鍛えられる。おすすめです。

泉ひかり 写真

パルクールは泉さんにとってどういう存在ですか?

人生そのものですね。自分の性格を表すものだし、自分の行動理由になっています。

じつはパルクールに出会う前の自分は、今できることをすればいいや、っていう人間だったんです。でもパルクールを知ってから、変われたと思っています。例えば高校3年間、英語が得意ではなかったのですが、世界中のパルクールの人たちともっと交流したいと思って、急に留学を決めて2016年にアメリカに渡りました。行動したことによって得られる知識がたくさんありました。パルクールは新しいスポーツでもあるので、これから形を変えていろいろな人が入ってくると思いますが、そこで自分は今のままでいいや、というのではなく、行動力やうまくなりたいという気持ちをキープしながら成長できたらと思います。

泉ひかり 写真

日本のパルクール界を開拓してきた第一人者として、メッセージはありますか?

まだまだ日本には練習場所が少なくて、いつも公園で練習するんですけど、最近は公園の遊具が「危ない」という理由で撤去されてしまっているんです。だけど、これはできる、これはできない、ということを痛い目にあいながら自分で学習していかないと、なにかあったときに大怪我をしてしまいます。私がそうだったように、子どものときは駆け回って、木登りして、飛び降りて……わんぱくでいたほうが絶対にいいと思っていて、そういう機会がなくなってしまうのがすごく悲しいですね。パルクールを使ってそういう環境を整えていきたいと思います。

泉ひかり 写真

撮影している間も、ヒョイヒョイとびっくりするくらい軽やかに動き回っていた泉さん。高くて不安定なところに立つときも、万が一突風が吹いたらどうリカバリーするか、手すりの強度は大丈夫か、壁は滑らないか、固さは大丈夫か、ということを確認し、大怪我につながることはしないのだそう(だから「簡単だと思ってマネしないで」とも)。大会ともなると、アクロバットな動きも取り入れ、泉さんの得意とするジャンプや流れるような動きが、見ている人を興奮させる。パルクールの魅力が広まり、誰もが楽しめるスポーツとして浸透することを夢見て、泉さんは今日もどこかで跳びはね、走り回っている。

2019年11月2日・3日(予備日=4日)に兵庫県で第1回パルクール日本選手権が行われ、泉さんも出場予定。オフィシャルタイマーをセイコーが務める。

第1回パルクール日本選手権

会期

2019年11月2日(土)-3日(日)※4日(月祝)は予備日

会場

兵庫県淡路島国営明石海峡公園『UNDOKAI World Cup 2019』内

主催

日本体操協会(JGA)

後援

日本アーバンスポーツ支援協議会 (JUSC)

主管

日本体操協会パルクール委員会

特別協力

株式会社パソナグループ

オフィシャル
タイマー

セイコーホールディングス株式会社

競技種目

スピード(男子・女子)、フリースタイル(男子・女子出場)

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