取材・文 永塚和志
photo by AFLO SPORT, Seiko
9月13日から21日までの9日間、国立競技場でセイコーがオフィシャルタイマーを務める「世界陸上競技選手権大会(世界陸上)」が行われました。34年ぶりの東京での開催となった今大会。競技場は連日、多くの観衆で膨れ上がり、総観客数は約62万人を記録。大会は大成功に終わりました。
この大会開催期間中には、女子100m日本記録保持者の福島千里さんを講師に迎えた「時育®セイコースポーツアカデミー in 東京2025世界陸上」が実施され、陸上クラブに所属する小学5年生から中学3年生の子ども約30名が参加。セイコーの計測機材を用いながら福島さんの指導を受けるという、彼らにとっては至極の時間となりました。
子どもたちが「本物」に触れる機会となったイベントの模様をレポートします。
セイコーが届ける未来への学び「時育®」とは
世界陸上と同じ環境でウォーミングアップに臨む参加者たち
photo by AFLO SPORT
セイコーグループでは「時」の大切さを学び、自ら考える力を「育む」ことで笑顔あふれる未来をつくること願い「時育®(ときいく)」という未来を担う世代の育成活動に取り組んでいます。今回のプログラムでは世界で活躍したアスリートから実技を交えて体を動かす楽しさを学ぶ機会や、世界大会で使用される計測機材を使った体験を通じ、本物の選手と技術に触れつつ、スポーツと時について考えることが主眼に置かれています。
過去には「セイコーわくわくスポーツ教室 in 世界陸上オレゴン22 ~Time to Shine~」、「セイコーわくわくスポーツ教室 inセイコーGGP陸上2024東京」などを行っていますが、今回は1991年以来の東京での世界陸上という特別な大会中の開催となりました。
セイコーの最先端技術に子どもたちが興味津々
たむじょーさん(左)、福島千里さん(中央)、TKDさん(右)
photo by AFLO SPORT
イベントには福島さんのほか、たむじょーさんとTKDさんの2人の陸上系YouTuberもゲストとして加わり、盛り上げに寄与してくれました。オープニングでは3人が自己紹介をかねて、参加する子どもたちに向けてあいさつ。福島さんは「今行われている世界陸上では世界記録や日本記録がこのトラックで生まれています。皆さんには気持ちをわくわくさせて、楽しんで、一緒に盛り上げながらやっていけたら」とメッセージを贈ります。
その後、福島さんたちと参加者はウォームアップのためにトラックを1周。ジョギングだけでなくスキップを交えるなど、強弱をつけた動きで体をほぐします。それが終わると今度はもも上げの練習です。ももを上げた時の形が数字の「7」に、またかかとをお尻の下まで蹴り上げる時の形が「4」になるようにといった福島さんの声かけのもと、子どもたちの走りっぷりはだんだんと様になっていきます。
続いて、MCの宇佐美菜穂さんから機材の説明に移ります。スターティングブロック、スタートインフォメーションシステム、光電管、フォトフィニッシュシステム、VTT(ビデオトラックトラッキングシステム)といった、開催中の世界陸上でも用いられ、世界のトップアスリートの順位やタイム、ラップタイムなどのパフォーマンスデータが正確に計測される最先端技術に、子どもたちは興味津々の様子です。
スタートインフォメーションシステムで自分自身のリアクションタイムを確認する参加者たち
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子どもたちが挑む“本番さながら”の実践ステージ
福島さんから直接指導を受ける参加者
photo by AFLO SPORT
そしていよいよ、子どもたちも機材を使っての「実践」へと移行していきます。スタート地点に設置されたスターティングブロックについてのレクチャーの後、福島さんとゲストの2人、イベントのサポートをしてくれている順天堂大陸上部の選手によるデモンストレーションが行われます。福島さんらによるリアクションタイムの「対決」では、福島さんが0秒142で最速を計測。世界の舞台に何度も立ったアスリートの記録に、子どもたちから拍手が湧き起こります。
それが終わると「リアクションタイム選手権」と「100mレース」が始まります。今度は子どもたちがスタートの速さを競う番です。参加者は男女小中学生の4グループに分かれ、国立のレーンを疾走します。世界陸上でも実際に使用されたスターティングブロックを間近にした参加者たち、それぞれがベストを尽くすために集中している様子が見受けられました。参加した子どもたちの中には、福島さんから足を踏み出す際のフットプレートの角度の設定方法などを直接教わる場面もありました。
福島さんがスターターを務めたリアクションタイム選手権では、すべての組が終わると最速タイム記録者が発表されました。1位は女子中学生の参加者が記録した0秒121。福島さんのタイムをも上回るその数字に、どよめきが起こりました。
続いて行われた100mレースでは、各グループの選手たちのスタート前にテレビカメラが映しながら場内アナウンスで選手紹介。さながら世界陸上の決勝レース直前のような演出がなされます。「優勝」はたむじょーさんも出走した最終グループの男子中学生・宮川遼くん。11秒77というすばらしいタイムでフィニッシュをかけぬけました。
「100mレース」スタートの瞬間
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本来であればこれですべての催しが完了の予定でしたが、進行がスムースだったこともあり急遽、福島さんやゲストの2人も交えてもう1本、レースを敢行します。締めはトラックを1周する「ウイニングラン」。講師もゲストも子どもたちも笑顔を弾けさせながらイベントは終了しました。
クロージングでは「テレビで見ていたところで走った感動を忘れずに、もし陸上を続けるのであれば世界を目指して、また走るだけではなくみんなを応援したり支える側になったり、一生をかけて携わってほしい」というメッセージが、福島さんから子どもたちに伝えられました。
トラックをあとにする子どもたちには100mレースでのフィニッシュ写真とVTT(ビデオトラックトラッキングシステム)のデータ、そしてこの日の世界陸上観戦チケットが「おみやげ」として手渡されました。東京での世界陸上開催中の「時育®セイコースポーツアカデミー in 東京2025世界陸上」は、こうして成功のうちに閉幕しました。
雨の中でも世界陸上本番と同じ国立競技場のトラックを駆け抜ける参加者たち
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フォトフィニッシュシステムで撮影した100mレースでのフィニッシュ写真を参加者にプレゼントした
photo by Seiko
参加者たちの感想 ─ 福島千里さん「この中から日本代表が生まれて」
福島さん「ここから日本代表になる選手が出たらいいなと思っています」
photo by AFLO SPORT
イベント後、講師を務めた福島さん、ゲストのたむじょーさん、参加者の宮川遼さんと相澤優衣さんに感想を聞きました。
福島さん、今回の「セイコースポーツアカデミーin世界陸上2025」、お疲れ様でした。34年ぶりの東京での世界陸上開催中にイベントで講師を務められた感想はいかがですか?
福島:たくさんの子どもが来てくれましたが、テレビで見ていた世界陸上の世界に自分が入り込んだかのように感じてくれたと思います。そして実際にトップアスリートたちと同じ機材を使うことは子どもたちにとってとてもうれしい体験になったのではないでしょうか。今日参加してくれた子どもたちの中から将来、日本代表になる選手が出たらいいなと思っています。
たむじょーさんにもゲストとしてイベントを盛り上げていただきました。たむじょーさんは長距離種目のアスリートでしたが、今回のイベントでの福島さんの指導者としての姿を見ていてどんなことを感じましたか?
たむじょー:福島さんの指導は単に走る楽しさを伝えるだけでなく、かなり技術的な内容まで落とし込まれていたのが印象的でした。フォームや体の動きのポイントを的確に説明されていて、子どもたちも真剣に聞きながら実践をしていました。その姿勢から『楽しい雰囲気の中でも技術的なことをしっかり伝えることの大切さ』を学びました。自分も今後の活動で笑いや盛り上げだけでなく、技術面も工夫して伝えていきたいと思いました
宮川くんは100mレースで最速タイムを記録しましたが、今日は福島さんというトップアスリートだった方から様々なことを学んだと思います。特に印象に残っていることを教えて下さい。
宮川:『4』と『7』の姿勢とスタートのスネの角度です。福島さんの走っているフォームの軸のブレがなくて、さすがだなと思いました。
相澤さん、世界陸上2025東京が行われている国立競技場での「セイコースポーツアカデミー」に参加した感想を聞かせてください。
相澤:前日まで国立競技場で走ることがとても楽しみでした。実際に走ってみて、他の競技場とは違うタータンの弾力に感動しました。トップ選手と同じ場所を走ることができて、純粋に楽しかったです
photo by AFLO SPORT