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C-NAPS編集部

陸上競技を観戦する際に、多くの方が注目するのは記録ではないでしょうか。「100分の1秒でも速く」「1cmでも高く、そして遠くへ」。幾多のトップアスリートたちが、その壁に挑んでは跳ね返され、それでも記録更新にチャレンジし続ける過程では多くのドラマが生まれます。そして、自らの限界を突破したパフォーマンスを発揮し、まさに前人未到の領域に到達した際に新たな記録が誕生するのです。

2009年にベルリンで開催された世界陸上競技選手権大会(世界陸上)では、男子100mでジャマイカのウサイン・ボルトが「9秒58」の驚異的な世界記録を打ち出しました。“人類最速の男”が限界突破を果たした衝撃は、未だに破られていない「記録」としての功績はもちろん、多くの人々の胸に刻まれた「記憶」として語り草になっています。では陸上界では、他にはどんなすごい記録が存在するのでしょうか。さまざまな種目の世界記録・日本記録に注目しました。

【最速は誰?走る種目編】100mの日本記録は男女ともにTeam Seikoのメンバー!

世界記録と聞いて多くの方がイメージするのは、“人類最速の男”として歴史にその名を刻んだボルトでしょう。冒頭でも触れましたが、ボルトは男子100mで「9秒58」の世界記録を保持しています。さらに2009年の世界陸上では、男子200mにおいても「19秒19」で世界記録を更新。まさに最速の称号をほしいままにしています。

一方、女子に関しても100mと200mの世界記録は、同じ選手が樹立しています。その選手とは、“陸上短距離の女王”と呼ばれたアメリカのフローレンス・グリフィス=ジョイナーです。100mの「10秒49」、200mの「21秒34」はともに30年以上破られておらず、今後の更新が困難な“不滅の記録”と呼ばれています。しかし、近年ではジャマイカ勢が力をつけてきており、世界陸上でもジョイナーにどれだけ迫れるか、あるいは不滅の記録を破れるのかが注目されています。

【主な短距離種目の世界記録】
男子100m 9秒58 ウサイン・ボルト 2009年 8月16日
男子200m 19秒19 ウサイン・ボルト 2009年 8月20日
女子100m 10秒49 フローレンス・グリフィス=ジョイナー 1988年 7月16日
女子200m 21秒34 フローレンス・グリフィス=ジョイナー 1988年 9月29日
(2022年6月9日時点)

9秒95で男子100mの日本記録を更新し、セイコーのタイマーの前で笑顔を見せる山縣 写真

9秒95で男子100mの日本記録を更新し、セイコーのタイマーの前で笑顔を見せる山縣

photo by AFLO SPORT

国内に目を向けると、山縣亮太が布勢スプリント2021の男子100mで「9秒95」で日本記録を更新。桐生祥秀やサニブラウン・アブデル・ハキーム、小池祐貴に次いで10秒の壁を破って日本人4人目の9秒台を記録しただけではなく、“日本人最速”の称号も手にしました。また、男子200mは、2003年の日本選手権で末續慎吾が「20秒03」を記録しています。

女子の日本記録に関しては、“日本陸上短距離界の女王”のまさに独壇場です。2008年の織田幹雄記念国際陸上競技大会の女子100mで、福島千里が「11秒21」を記録。2022年に現役を引退した福島ですが、この記録は未だに破られていません。また、女子200mに関しても「22秒88」で福島が樹立しています。日本選手権で前人未到の6年連続100m・200mで二冠を達成した実力は伊達ではありません。

また、男女100mの日本記録保持者はともにTeam Seikoのメンバー。選手が華々しい活躍を見せる裏で、計時・計測のスペシャリストとして選手のサポート役として常に並走しており、世界陸上ではオフィシャルタイマーを務めます。

【主な短距離種目の日本記録】
男子100m 9秒95 山縣亮太 2021年 6月 6日
男子200m 20秒03 末續慎吾 2003年 6月 7日
女子100m 11秒21 福島千里 2010年 4月29日
女子200m 22秒88 福島千里 2016年6月26日
(2022年6月9日時点)

【大ジャンプが魅力の跳ぶ種目編】“過去の跳人”の世界記録が破られていない現状

ジャンプ 写真

ジャンプした距離や高さを競う跳躍系種目は、なかなか世界記録が更新されていないのが特徴

跳躍系の種目は、背面跳びなどの跳躍法で高さを競う「走高跳」、ポールの反発力を利用して跳ぶ高さを競う「棒高跳」、助走をつけて踏み切って跳んだ距離を競う「走幅跳」、ホップ・ステップ・ジャンプの三歩での跳躍の距離を競う「三段跳」の4種類です。跳躍系の種目の特徴は、往年の世界記録がなかなか破られていない点が挙げられます。

男子では、2022年に棒高跳でスウェーデンのアルマンド・デュプランティスが室内で「6.20m」の世界記録を更新しましたが、それ以外の走高跳、走幅跳、三段跳は1990年代の記録が未だに破られていません。女子に関しては、2009年にロシアのエレーナ・イシンバエワが棒高跳で「5.06m」、2022年にベネズエラのユリマル・ロハスが三段跳で「15.74m」と世界記録を更新していますが、走高跳、走幅跳に関しては1980年代の記録が未だに歴代1位です。

世界のトップアスリートに比べて身体能力で劣ると思われがちな日本人ですが、実は跳躍系種目で世界にその名を轟かせていた時代がありました。その種目が三段跳びです。織田記念の由来となった織田幹雄を筆頭に南部忠平、田島直人らが世界一に輝くなど、一時代を築いたこともありました。近年では男子の走幅跳がレベルを上げており、城山正太郎と橋岡優輝がハイレベルな日本記録更新争いを繰り広げています。世界との差はまだまだあるものの、日本が誇るジャンパーたちも着実に力をつけてきています。

跳躍系種目は、“過去の跳人”たちの偉大な記録を破るのがなかなか難しいところですが、世界陸上では記録更新に挑む勇姿が見られるでしょう。

【跳躍系種目の世界記録】
男子走高跳 2.45m ハビエル・ソトマヨル 1993年7月27日
男子棒高跳 6.20m アルマンド・デュプランティス 2022年3月20日
男子走幅跳 8.95m マイク・パウエル 1991年 8月30日
男子三段跳 18.29m ジョナサン・エドワーズ 1995年8月7日
女子走高跳 2.09m ステフカ・コスタディノヴァ 1987年8月30日
女子棒高跳 5.06m エレーナ・イシンバエワ 2009年8月28日
女子走幅跳 7.52m ガリナ・チスチャコワ 1988年6月11日
女子三段跳 15.74m ユリマル・ロハス 2022年3月20日
(2022年6月9日時点)

【跳躍系種目の日本記録】
男子走高跳 2.35m 戸邉直人 2019年2月2日
男子棒高跳 5.83m 澤野大地 2005年5月3日
男子走幅跳 8.40m 城山正太郎 2019年 8月17日
男子三段跳 17.15m 山下訓史 1986年6月1日
女子走高跳 1.96m 今井美希 2001年9月15日
女子棒高跳 4.40m 我孫子智美 2012年6月9日
女子走幅跳 6.86m 池田久美子 2006年5月6日
女子三段跳 14.04m 花岡麻帆 1999年10月1日
(2022年6月9日時点)

【驚愕の飛距離!投げる種目編】日本の投てき界のレジェンドはスポーツ庁長官

投てき 写真

ハンマーなどさまざまな用具を一番遠くに飛ばした人が勝つというシンプルなルールが投てき種目だ

投てき系種目は、全部で4種類です。オーバーハンドでの投法が禁止で、砲丸を押し出すように投げる「砲丸投げ」、ディスクの形をした円盤を投げる「円盤投げ」、ワイヤーの先に砲丸がついたハンマーを遠心力で飛ばす「ハンマー投げ」、助走でスピードをつけてやりを投げる「やり投げ」があります。

世界記録の中でも驚異的だと言われるのがやり投げです。1996年にチェコのヤン・ゼレズニーが「98.48m」という100m近い大投てきを披露し、30年近く破られていません。男子の日本記録が溝口和洋の「87.60m」であることから、世界記録とは10m以上も差があることがわかります。

また、円盤投げの世界記録に関しては、男子より女子のほうが好記録というのが非常に珍しい点です。東ドイツのガブリエレ・ラインシュが1988年に記録した「76m80」が現在もなお、男女全体での世界記録になります。男女では体格差や肉体構造の違いもあるだけに、陸上競技では女子が男子の記録を上回るのは唯一のこと。まさに不滅の記録と言えるでしょう。

投てきの種目において世界と互角かそれ以上にわたり歩いたのは、ハンマー投げの室伏広治です。2022年現在でのスポーツ庁長官は、日本人離れした身体能力でアジア人として初めて世界大会の投てき種目で金メダルを獲得しています。もちろん、「84.86m」の日本記録も室伏広治が保持しています。また、女子のハンマー投げの日本記録保持者が室伏広治の実妹の室伏由佳である点も非常に興味深いところです。まさに最強の兄妹と言えるでしょう。

【投てき系種目の世界記録】
男子砲丸投げ 23.37m ライアン・クルーザー 2021年6月18日
男子円盤投げ 74.08m ユルゲン・シュルト 1986年6月6日
男子ハンマー投げ 86.74m ユーリ・セディフ 1986年8月30日
男子やり投げ 98.48m ヤン・ゼレズニー 1996年5月25日
女子砲丸投げ 22.63m ナタリア・リソフスカヤ 1987年6月7日
女子円盤投げ 76.80m ガブリエレ・ラインシュ 1988年7月9日
女子ハンマー投げ 82.98m アニタ・ヴォダルチク 2016年8月28日
女子やり投げ 72.28m バルボラ・シュポターコヴァ 2008年9月13日
(2022年6月9日時点)

【投てき系種目の日本記録】
男子砲丸投げ 18.85m 中村太地 2018年5月20日
男子円盤投げ 62.59m 堤雄司 2020年3月27日
男子ハンマー投げ 84.86m 室伏広治 2003年6月29日
男子やり投げ 87.60m 溝口和洋 1989年5月27日
女子砲丸投げ 18.22m 森千夏 2004年4月18日
女子円盤投げ 59.03m 郡菜々佳 2019年3月23日
女子ハンマー投げ 67.77m 室伏由佳 2004年8月1日
女子やり投げ 66.00m 北口榛花 2019年10月27日
(2022年6月9日時点)

世界陸上では世界記録・日本記録の更新に期待!

オフィシャルタイマー 写真

世界陸上のオフィシャルタイマーを務めるセイコーは、世界記録・日本記録の瞬間を正確な計時・計測で支えます

photo by AFLO SPORT

今回紹介した世界記録・日本記録だけでもアスリートたちのドラマが詰まっています。記録は日頃の鍛錬の積み重ねであり、結果が良い時もあれば、悪い時もあるでしょう。ただ、それでもひたすら自身の限界に挑み、記録更新を目指し続けることにこそ、陸上競技の面白さが凝縮されています。果たして、世界陸上ではどんな熱戦が見られ、どんな記録が生まれるのでしょうか。今から楽しみで仕方がありませんね。

セイコーは、2022年7月にアメリカ・オレゴン州ユージーンで開催される世界陸上のオフィシャルタイマーを務めます。100分の1秒単位、1センチ単位での世界記録・日本記録を正確に計時・計測。記録更新を目指す世界のトップアスリートたちを支え続けます。

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