SEIKO  HEART BEAT Magazine スポーツを通して人生の時を豊かに

文 久下真以子

冬の人気競技のひとつとして知られる「カーリング」。2018年の世界大会では、女子日本代表が世界3位に輝き注目を浴びました。ただ、「カーリングはテレビで見たことはあるけど、いまいちルールがわからない……」という方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、カーリングのルールや歴史をご紹介。観戦をより一層楽しめるように、注目ポイントもあわせてお伝えします。

カーリングは技術と頭脳が求められる「氷上のチェス」

カーリング 写真

カーリングは、「ストーン」と呼ばれるハンドルの付いた重い石を「ハウス」と呼ばれる円形の的に向けて投げて滑らせ、的の中心からのストーンの位置で得点を競う氷上のスポーツです。投げたストーンの速さや方向は、チームメイトが「ブルーム」と呼ばれるブラシを使って氷を掃くことで調整します。氷を掃くことを、「スイープ」といいます。1チームは4人で構成され、2つのチームで勝敗を競います。

ストーンはただ狙った場所に投げるだけでなく、相手チームのストーンをはじいたり、相手チームのストーンのうしろに自分たちのストーンを隠したりするなど、戦略はさまざま。ストーンの重さは20キロにもなり、正確な技術とパワー、集中力、展開を読む頭脳が求められることから、「氷上のチェス」とも呼ばれています。

また、ストーンの滑り具合や曲がり具合は、氷の状態によっても変わります。氷の状態は室温やコースの使用状況に左右されるだけでなく、ゲーム中も刻一刻と変化することから、「氷を読む」ことも競技者たちには求められています。

カーリングならではの特徴としてあげられるのが、基本的には審判が介入しないこと。点数の確認などにおいても、競技者たちのセルフジャッジで行っています。スポーツマンシップにのっとり、相手チームへのリスペクトを忘れない精神があるからこそ成り立っている競技なのです。

カーリングの歴史はなんと500年!ヨーロッパ発祥のスポーツ

カーリングの歴史は、500年ほど前のスコットランドにさかのぼります。子どもたちが凍った池の上で石を滑らせて遊んでいるのを見て、大人たちがインスピレーションを受けてスポーツとして発展させたと言われています。カーリングの語源は諸説あり、「石が回転(カール)しながら滑るから」「髪の毛が『カール』するように石がゆっくりカールしながら滑るから」と言われています。

日本におけるカーリングの始まりは、1936年と言われています。近年ではさまざまな大会でメダルを獲得し、日本女子カーリングの存在感が着実に世界の中で増してきています。
2018年の世界大会では、男女混合で行う「ミックスダブルス」が新しい種目プログラムに加わり話題になりました。

最もポピュラーな種目「4人制カーリング」の基本ルール

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ここからは、カーリングのくわしいルールについて紹介します。カーリングには種目が複数あり、ルールがそれぞれ微妙に異なります。まずは最もポピュラーな「4人制カーリング」のルールについてご説明しましょう。

ハウスの中心にどれだけストーンを寄せられるかがポイント

4人制カーリングは男女別に種目が分かれており、1チーム4人で試合を行い2つのチームが勝敗を競います。また、ひとつのチームにつき、「リザーブ」という補欠選手を1人登録できるようになっています。

試合が始まると、両チームが交互に合計8投ずつストーンを投げます。両チームが投げ終えた後、ハウスの中心により近い位置にストーンを置けたチームが得点を得られます。ハウスの中心に一番近い位置にストーンを置けたのが自チームで、2番目に近いのが相手チームだった場合、自チームに1点が入ります。2番目に近いストーンも自チームで、3番目が相手チームだった場合、自チームに2点が入ります。

これを1エンドとして10エンド繰り返し、合計得点が多いチームが勝利です。ひとつのエンドにつき得点できるのは、よりハウスの中心近くにストーンを置けたチームだけということになります。

また、各エンドには先攻後攻があり、順番はエンドごとに決まります。公式戦では第1エンドのみ「LSD(ラストストーンドロー)」を行い、先攻後攻の選択権を決定します。LSDとは、試合直前の練習時に代表者がハウスに向かってストーンを投げ、より中心に近いところにストーンを置けたチームが選択権を獲得できるというルールです。

第2エンド以降は前のエンドで勝利したチームが先攻、得点がなかったチームが後攻となります。
得点がなかったチームが後攻となるのは、「カーリングは後攻が圧倒的に有利」なスポーツだからです。後攻はエンドのラストストーンを投げることができ、先攻のストーンよりハウスの中心を取ることができれば最低1点は獲得できます。こうしたルールを設定することで、ゲームの公平性を保っているのです。

両チームともハウス内にストーンが残らず得点が0-0のエンドはブランクエンドと呼ばれ、先攻後攻の順番は変わりません。後攻チームは次のエンドも後攻を得るため、あえてブランクエンドに持ち込む場合もあります。このような戦略に注目しながら観戦することもポイントの一つです。

それぞれの役割を全うする4人制カーリング

1チーム4人で構成されるチームですが、競技者たちには役割があります。ストーンを投げる順番によってポジションが分かれており、それぞれリード、セカンド、サード、フォースと呼ばれています。また、アクシデントがあった場合などに備えた交代要員(リザーブ)を1人登録することができます。リザーブは「5人目の選手」という意味からフィフスとも呼ばれますが、ベンチからチームを鼓舞するシーンを見たことがある人もいるかもしれませんね。

1エンド8投のうち、1投目と2投目を投げるのがリード、3投目と4投目を投げるのがセカンドです。2人とも自分の投げる番以外は、チームメイトの投げたストーンの進路を調節するためにブラシで氷を掃く「スイーパー」という役目を担います。

サードが投げるのが5投目と6投目です。サードはとても重要な役割で、スキップが投げる時にはスキップの代わりに指示を出したり、リードとセカンドが投げる時にはスイープをこなしたりしなければなりません。さまざまな役割が求められるオールラウンダーです。
スキップとはキャプテンの意味で、試合全体の作戦を組み立てチームに指示を出す役割を担います。ブラシを立てて声を出している姿は、まさに「司令塔」と呼ぶのにピッタリです。

フォースは7投目と8投目を投げます。エンドの勝敗を決める責任が大きいポジションなので、多くの場合はカーリングのチームキャプテンである「スキップ」がフォースを担当します。
ただ、「フォース=スキップ」と決められているわけではありません。そのチーム次第でスキップをリード、セカンド、サードの選手が担当することもあるので、こうした点に注目するのもおすすめの観戦方法です。

このように、一般的な4人制カーリングのポジションとその役割を理解していると、観戦がより楽しくなるでしょう。

男女のペアで競い合う注目の種目!「ミックスダブルス」の基本ルール

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男女混合のペアで行う「ミックスダブルス」は、2018年の世界大会から正式に採用されました。4人制カーリングと比べてルールが異なる点も多く、違った戦略が求められます。大きな違いはなんといっても人数。1チーム男子1人、女子1人の計2人と少ない人数で構成されるので、ストーンを投げた選手が同時にスイープを行うなど、体力的にハードな種目です。

通常の4人制のカーリングよりもエキサイティングな試合展開になりやすいとも言われるミックスダブルス。そのルールについて説明します。

早い試合展開と大量得点がミックスダブルスの見どころ

ミックスダブルスは、男女1人ずつの2人でチームが構成されます。そのため、4人制のようなリードやセカンドといった役割の呼び名は特にありません。人数が少ない分、個人のカラーが出やすいのも特徴のひとつです。

4人制カーリングではハウスの中にストーンがない状態からエンドが始まるのに対し、ミックスダブルスではあらかじめ両チームひとつずつストーンを置いた状態からエンドが開始されます。1エンドにつき投げるのは各チーム5投ずつで、これを8エンド繰り返した合計得点で、試合の勝敗が決まります。また、両チーム合わせて3投目(先攻の2投目)まではストーンを外にはじき出してはいけないので、ハウスにストーンがたまりやすくなります。

投げる数もエンド数も少ないので、試合展開は早くなります。4人制カーリングだと試合時間が2時間半ほどかかるのに対し、ミックスダブルスだと1時間半ほどで終わることがほとんどです。

また、独特のルールとして「パワープレー」が挙げられます。ミックスダブルスでは、両チームひとつずつストーンを置いた状態からエンドが開始されるとお伝えしましたが、通常はセンターライン上に置くのがルールです。しかし、パワープレーではその初期配置を左右どちらかにずらすことができるのです。

ミックスダブルスも4人制カーリングと同様に先攻後攻の順番は各エンドで決まりますが、パワープレーには「後攻権を持ったチームが1試合で1回のみ使える」というルールがあります。しかし、エキストラ・エンド(延長戦)では使用できません。そのため、どのエンド開始前のタイミングで使用するかという判断も重要なのです。

パワープレーの結果センターが空くと、ストーンを中心に寄せやすくなります。特にカーリングにおいて後攻チームは有利なため、「ビッグエンド」という大量得点のエンドにつながることも多いのです。そのため、劣勢となったチームが逆転をかけた最後の切り札として使うことが多く、成功すればかなり盛り上がる、重要なポイントです。

4人制とどう違う?ミックスダブルスのチーム構成と役割

1人が1投目と5投目、もう1人が2~4投目を担当します。1投目と5投目を投げる選手は、4人制でいうところのリードとスキップにあたるので、直接得点に関わる重要なポジションです。2〜4投目を投げる選手は、4人制におきかえるとセカンドとサードのポジションにあたります。“繋ぎ”として、試合の展開を大きく左右する存在といえそうです。

どちらを担当するかに男女の決まりはありませんし、エンドごとに変えるのも自由ですが、男子が2~4投目を担当することが多いです。ハウスにたまったストーンをはじき出すにはパワーが必要なので、男子の方が有利とされています。

カーリングがもっと面白くなる見どころ

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ここまでカーリングのルールについて説明してきましたが、どんなスポーツかイメージは湧きましたか? 選手それぞれに役割があり、相手チームとの駆け引きがあるのが面白いですよね。では実際カーリングを観戦する際、より一層楽しむためにはどこに注目すればいいのでしょうか? そのポイントや注目選手をご紹介します。

試合中の掛け声にはどんな意味があるの?種類や意味を知ろう!

カーリングの試合を見ていると、選手たちはたえず声を掛け合っているのがわかります。じつは試合中、選手には放送用にマイクが付けられているので、視聴者にはクリアに掛け声が聞こえるようになっています。でも「聞き慣れない言葉でわからない」「言葉の意味がわからない」という方も多いのではないでしょうか。

掛け声の主は、スキップ(キャプテン)の選手です。チームメイトがスイープする時に、ストーンが狙った位置に滑るように、指示を出しているのです。では、いったいどんな掛け声があるのか、見ていきましょう。

イエス(Yes)/ヤップ(Yep)
スイープして(掃いて)

ウォー(Whoa)
スイープをやめて(掃くのをやめて)

クリーン(Clean)
ストーンの前にあるゴミをスイープ(掃いて)で取り除いて

ハリー(Hurry)
もっと早くスイープして(もっと速く掃いて)

国によって言い方に特徴があるのも見ていて面白いポイントです。ぜひ注目してみてください。

注目のカーリング選手は?特徴を知ってさらに楽しもう!

女子カーリングにおいて、注目すべき日本人選手の特徴をそれぞれ紹介します。選手たちの特徴を知ることで、さらに深くカーリング観戦を楽しめるはずです。

藤澤 五月(スキップ)
ロコ・ソラーレの絶対的な存在で、ジュニア時代から同年代のトップ選手として活躍。ショットの正確性やバリエーション、技術、アイスリーディング、経験など、あらゆる点で一流の選手で、強気でありながらもピタッと決めるラストショットに注目です。

吉田 夕梨花(リード)
サードを務める吉田知那美の妹で、チーム最年少。「ウィックショット」が武器。ウィックショットとは、ハウス前にある相手のストーンを動かしながらも自分のストーンをハウス内に納める難易度の高いショットで、吉田夕梨花選手は世界トップレベルの技術を持っています。

吉田 知那美(サード)
リードを務める吉田夕梨花の姉。全体的に好不調の波が少なく、安定したショットでゲームをコントロールします。トレードマークは笑顔で、4年前の大会がきっかけで新語・流行語大賞にもなった「そだねー」の発言者です。

知れば知るほど奥深いカーリングを実際に観戦してみよう!

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今回はカーリングのルールや歴史、見どころについてご紹介しました。カーリングの大会は、現地観戦はもちろん、テレビやオンラインでも中継される機会がたくさんあります。ポイントを押さえると、より一層楽しみが増えますよね。

数手先までの作戦を読む頭脳や技術、チームワークなどさまざまなことが求められる奥深い競技、カーリング。ぜひ観戦して、応援で盛り上がりましょう!

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