文 生島 淳
写真 近藤 篤
ヘアメイク 中原康博
今年で10回目を迎えるセイコーゴールデングランプリ。
例年は、春からトラックシーズンが始まり、ゴールデンウィークに行われる全国各地での大会を経て、春の総決算となる大会として位置づけられていた。
ところが、今年は新型コロナウイルスの影響もあって全国的に自粛が続き、トラックに選手たちが戻ってきたのは7月になってから。8月23日に東京・国立競技場で行われる2020年のセイコーゴールデングランプリは、日本国内の一線級の顔ぶれが出そろう大会となる。
まさに陸上界が本格的に再出発するシンボルだ。
山縣亮太と福島千里、ふたりとセイコーゴールデングランプリ
写真 アフロスポーツ
セイコーの社員アスリートである山縣亮太、福島千里のふたりのスプリンターの歴史は、セイコーゴールデングランプリの歴史と重なる。
第1回の2011年、福島選手は400mリレーの第3走者として43秒39の日本新記録をマーク。その後も、トップレベルの選手と共に走ってきたが、セイコーゴールデングランプリは「世界の窓になる大会でした」と語る。
「日本で唯一、毎年行われる国際大会なので、選手にとっては貴重な場です。海外からトップの選手も来日して、ここで一緒に走った選手たちと世界の舞台でも顔を合わせることになります。毎年、毎年、セイコーゴールデングランプリでは、これくらいの差だったけれど、世界の舞台ではこれくらいまで縮められたーー。そうやって、世界との距離を確かめる場でした」
写真 フォート・キシモト
山縣選手も慶應義塾大学に入学した2011年、第1回大会に出場している。
「大学に入学したばかりの春に、初めてセイコーゴールデングランプリに出場しました。懐かしいですね。印象に残っているのは、翌年の2012年です。いまも活躍している中国の蘇炳添選手が追い風参考記録ながら、10秒04をマークしたんです。一緒に走って、世界を意識した瞬間でした。この年には400mリレーの日本代表のメンバーとして走れたことも、すごくうれしかった記憶があります」
本来であれば、海外を転戦しなければ一線級の選手とは走ることは出来ない。だからこそ、セイコーゴールデングランプリが日本で開催されるメリットは計り知れないものがあるという。
「世界のトップレベルの選手が日本にやってくるわけですから、本当にありがたい機会です。最近は、アメリカのジャスティン・ガトリン選手が毎年出場したり、世界を肌で感じられる貴重な大会です」
陸上界のトップアスリートに挑戦!「ドリームレーン」が登場
世界の一線級と、日本のトップ選手の真剣勝負が見られるのがセイコーゴールデングランプリの魅力だったが、今年の楽しみは高校生が参加する「ドリームレーン」だ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、日本全国で大会の中止や延期が相次ぎ、夏の祭典であるインターハイまでもが中止となってしまった。日ごろからの練習の成果を発揮する場が失われてしまった高校生に対して、セイコーゴールデングランプリで日本のトップアスリートに挑戦する「ドリームレーン」が用意されたのである。
将来の日本の陸上界を担う高校生にとって、きっと貴重な機会になるはず、と福島は話す。
「私はゴールデングランプリという場で、海外のトップ選手との距離をつかみ、モチベーションを上げることが出来ました。それに舞台が国立競技場ですから、きっと、高校生のみなさんが国立で走れば、将来に向けてモチベーションがグッと上がるんじゃないかと思います」
山縣選手は胸を貸すというよりも、若いスプリンターたちと競うのを楽しみにしているという。
「7月から全国各地で大会が始まっていますが、高校生をはじめとして、若い世代の選手のタイムがよくて、ポテンシャルを感じます。一緒に走るとするなら、さすがに負けられないですよ。これまで、積み上げてきた経験を武器にして、いい結果を出したいと思います」
今年のセイコーゴールデングランプリは、日本の「いま」と「未来」が交錯する大会となりそうだ。
夏にずれ込んだ2020年のトラックシーズンの開幕。
夏にずれ込んだ2020年のトラックシーズンの開幕。今年はここからが本番だ。
8月のセイコーゴールデングランプリを経て、10月1日から3日には日本選手権が行われ、そしてその先には2021年が待っている。
「今年は短期決戦という感じです」と福島選手は話すが、秋、冬を経て、来年2021年に向けてピークを合わせていくことになる。
「このシーズンは、来年に向けて手ごたえをつかんでいきたいですね。完璧じゃなくてもいい。いい手ごたえを得られれば、2021年に飛躍できるきっかけになると思うので。そのためには、いまの自分としっかりと向き合って行きたいと思います。レース結果や、日々の練習に一喜一憂せず、そこから逃げずに向き合えば、きっと自分が成長できると思うので」
山縣選手は、8月から本格的に始動予定。長かった自粛期間を経て、いまは短期的ではなく、中長期的なプランの中で今季を位置づけていきたいという。
「春からの流れを振り返ってみると、僕に限らずみなさんも大変だったと思います。大会が中止、延期になっていき、そのうち練習環境も限られてしまいましたからね。トラックシーズンの到来を素直に喜びたいですが、僕も28歳になったので、ある種、計画的にトレーニング、そしてレースの予定を組み立てていきたいと思っています。セイコーゴールデングランプリから秋を経て、来年に向けてピークを合わせていく。セイコーゴールデングランプリから2021年に向けて始まる感じがします」
また、セイコーゴールデングランプリはふたりにとって、ホームでの戦いのようなものだ。競技場のあちこちに「SEIKO」の文字があり、メインカラーである黄色が目に飛び込んでくる。
福島選手は社員アスリートとなってから、会場の景色が変わったという。
「2018年にセイコーに入社してからセイコーゴールデングランプリに出場してみると、『こんなにSEIKOと黄色に囲まれていたのか』と気づきました。応援してくださる方も増えましたし、ホームで走っているという感じがありますね」
写真 アフロスポーツ
山縣選手は、セイコーゴールデングランプリには独特の雰囲気があるという。
「自分としては責任を感じますし、結果を出すことを意識しています。でも、それが硬さにつながってしまっては本末転倒なので、いい意味での緊張感に変えていきたいですね」
待ちに待った陸上シーズンの到来。
8月23日、セイコーゴールデングランプリからすべてが始まる。
セイコーゴールデングランプリ陸上2020東京
「セイコーゴールデングランプリ陸上2020東京」は8月23日(日)に国立競技場で開催!国内トップアスリート、そして高校生が国立競技場に集結する!
※別ウィンドウでセイコーゴールデングランプリ陸上2020東京サイトへリンクします。
主催 |
日本陸上競技連盟 |
---|---|
特別協賛 |
セイコーグループ株式会社 |
※こちらの大会は終了いたしました。たくさんのご声援ありがとうございました!