SEIKO  HEART BEAT Magazine 感動の「時」を届けるスポーツメディア

アスリートたちの鍛錬の成果を象徴する記録。それだけにスポーツ計時には、失敗が許されない。その厳粛な世界に、セイコーは半世紀以上前から力を入れてきた。私たちの知っている時計開発に加え、華やかなスポーツ競技を裏で支える計時に取り組む背景には、「正確な時間」に懸けるメーカーとしてのプライドがあった。

HISTORY ~セイコーと計時計測~

それは「1964」に始まった
セイコーのスポーツ計時計測の歴史は1964年に始まる。
この年の世界的な大会で公式計時に採用されたからだ。以来、スタートシステムやフォトフィニッシュシステムを開発し、計時計測の最前線を走り続けてきた。85年にはワールドアスレティックスと公式計時契約を交わし、15回の世界陸上を担当。今年9月下旬からカタール・ドーハで始まる世界陸上でも、選手たちの繰り広げる熱戦を正確な時間で記録する。

「27」の世界記録を見届けた
世界陸上でセイコーが計測した世界記録は27。
その中には、世界陸上ベルリン2009年大会で出した男子100メートルの世界記録9秒58も含まれる。セイコーの計時システムは、アスリートたちが肉体的能力の限界を超えるたび、もの言わぬ証人として歴史を克明に記録し続ける。

「27」のうち、今なお破られていない7つの世界記録

1987年
ローマ
女子
走高跳
2.09m
1991年
東京
男子
走幅跳
8.95m
1993年
シュツットガルト
男子
4×400m
リレー
2分54秒29
1995年
イエテボリ
男子
三段跳
18.29m
1995年
イエテボリ
女子
三段跳
15.50m
2009年
ベルリン
男子
100m
9秒58
2009年
ベルリン
男子
200m
19秒19

MOMENTS ~リアクションタイムをも捉える技術~

TECHNOLOGY 01 Seiko Block Cam

選手の表情・緊張感を捉えるスターティングブロックカメラ
アスリートたちは競技に全力を尽くす。その筋書きのないドラマは競技場の観客やテレビの前の視聴者を魅了する。セイコーとワールドアスレティックスは、ドーハの世界陸上で高精度のカメラを内蔵したスターティングブロック「セイコーブロックカム」を共同開発し、スタート前の緊張感を伝える映像を世界中に届ける。実際に練習で使用した山縣亮太選手も「言われなければ、スタート時、顔の真下にカメラがあるとは気づかなかった。これまで誰も見たことのない迫力ある映像を届けられるはず」と話している。

山縣亮太、スタート時の表情 写真 スターティングブロックカメラ 写真

TECHNOLOGY 02 Start Information System

1000分の1秒単位で、フライングを検出
スターティングブロックの前方にスピーカーが内蔵され、スターターのピストル音が全選手に公平に聞こえる。陸上のルールではピストル音からの0.100秒未満にスタートするとフライングとみなされる。これは医学的根拠に基づいた人間のリアクションタイムを根拠としている。選手の足の圧力がセンサーで検知され、その変化量からリアクションタイムを正確に計測することができる。また、横一列に並んだ選手たちのスタートを真後ろと斜め前からカメラで捉えて撮影した映像を、圧力変化の波形データと連動してコンソールに表示し、審判員によるフライングの判定の公正さと精度をサポートしている。

スタートインフォメーションシステム 画像
スタートインフォメーションシステムは、センサーが内蔵されたスターティングブロック、波形データと映像確認のためのコンピュータをおさめたコンソール、スタートガンで構成
スターティングブロック「セイコーブロックカム」 写真
選手の足の圧力がセンサーで検知されリアクションタイムを正確にとらえる
横一列に並んだ選手たちのスタートを真後ろ斜め前からカメラで捉えて撮影した映像を、圧力変化の波形データと連動して表示。この映像によってスタート時の選手の微妙な体の動きも確認でき、審判員による判定の精度や公正さが向上。

TECHNOLOGY 03 Photo Finish System

1秒間に2,000枚を撮影するフォトフィニッシュカメラ
選手一人ひとりのフィニッシュを記録するフォトフィニッシュカメラも高精度を誇る。1秒間に1万枚の撮影が可能だが、人間の走る速度だと2,000枚撮影すれば十分だという。フィニッシュを記録するカメラはコースの外側と内側に計3台設置され、選手がフィニッシュラインを通過する際にそれぞれのカメラが作動して1秒間に2,000枚の極細画像を撮影、これをつなぎ合わせたフォトフィニッシュ画像を元に審判が一人一人の着順とタイムの判定を行う。

フォトフィニッシュカメラ 写真 フォトフィニッシュカメラ 写真 フォトフィニッシュカメラ 写真
世界陸上ベルリン2009大会で、100m男子の世界記録が出た際の画像。1目盛りが100分の1秒。

PRIDE  ~ 「時間」に懸けるセイコーの矜持 ~

「競技内容はほとんど覚えていないのです」。スポーツ計時計測を担当するセイコータイムシステム株式会社(現セイコータイムクリエーション株式会社)のスタッフは異口同音にそう話す。世界各地のスポーツ競技大会を転戦しながら、「選手たちのパフォーマンスを正確に記録すること」に集中しているからだ。場所や時間帯によって環境が大きく変わる中、「ミスが決して許されない仕事」に機敏に備えるスタッフたちの仕事によって華やかなスポーツ競技は支えられている。

―― 永遠の動く影。古代ギリシャの哲学者、プラトンは「時間」をそう例えた。その捉えどころのない現象を正確に計測することに、セイコーはその時々の最先端技術を盛り込みながら力を注いできた。さらに陸上競技の魅力を最大限に伝えるための努力も惜しまない。その「時間」に懸けるセイコーの矜持は、世界陸上という大舞台で感じ取ることが出来るだろう。

Featuring 山縣亮太
Planned & Produced by YOMIURI BRAND STUDIO

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