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人々に「時」をより正確に、より広く知らせるという創業者の想いから始まり、さまざまな社会貢献を実践してきたセイコーグループ。
2021年、持続可能な社会発展に貢献することを目指し、サステナビリティ方針を制定し、サステナビリティに関する取り組みを推進しています。

今回はセイコーグループ株式会社のESG・SDGs推進室長・草谷 大(くさがや・まさる)さんを訪ね、セイコーが取り組むサステナビリティ活動の現在地と、未来の展望をうかがいました。

社会貢献と共にあるセイコーの歩み

CSR活動から改めて「サステナビリティ」を前面に出されたことには、どのような背景があるのでしょうか。

草谷さん  セイコーは創業者の服部金太郎翁が、「人々に正確な時間を伝えることが社会課題の解決につながる」という使命感をもって設立された会社です。「社会に信頼される会社であること」という現在の企業理念からも、社会貢献への意識をベースに成長してきたことが分かると思います。

そのためCSR活動にもかなり前から取り組んでいました。現在もスポーツや音楽の分野で支援活動を続けており、中でも「世界陸上(世界陸上競技選手権大会)」のサポートは30年以上になります。

2021年に「革新へのあくなき挑戦で、人々と社会に信頼と感動をもたらし、世界中が笑顔であふれる未来を創ります。」というグループパーパスが制定されました。その後、マテリアリティ(重要課題)の選定とともにサステナビリティ方針が作られました。この方針は、事業活動を通じて重要課題に取り組むことで、グループの成長と持続的な社会発展に貢献でき、それがSDGsの達成に繋がっていく、というセイコーのサステナビリティについての考え方であり、従来のCSRの考えをより明確にしたものです。

草谷さん 画像

「キャリアの始まりは営業」と言う草谷さん。海外営業を長く担当し、過去にはトレーニーとしてのアメリカを含めイギリス、香港と3回の駐在を経験。

日常で実感する、気候問題の切実さ

ESG・SDGs推進室として環境施策を進める中で、難しさを感じることはありますか。

草谷さん  環境に関して言えば正直、ことあるごとに難しさを感じます。CDPという団体からの気候変動への取り組みに関する質問書に回答したり、TCFDという世界的な枠組みに基づいて気候変動に関する情報を開示したりしています。いずれも細かいルールや質問量も多く、事業会社への調査やヒヤリング等が必要になる場合もあるため、質問内容の理解や社内調整が大変でした。他にも、水資源や生物多様性のリスクなど、非財務情報の開示として取り組むべきことはたくさんあります。

しかし同時に、環境問題はすでに私たちの日常生活に切実さを帯びてきました。気候変動の影響と思われる猛暑やゲリラ豪雨も身近に経験し、企業としてできることはスピードを上げて取り組まなくてはいけない、という気持ちを強くしています。

そのためにも、グループ内での連携が非常に重要です。ESG・SDGs推進室の活動には、グループ各社のサステナビリティ担当部門からも参加してもらい、それぞれの状況を理解し合いながら、連合チームのような体制で取り組んでいます。

草谷さん 画像

理解と協力が結んだ国内再エネ100%への道

草谷さん  ひとつ良いこととして、環境問題を含むサステナビリティ活動は、取り組むべきことが明確だということがあります。

例えば、“温室効果ガスの排出量を減らす”とか、“生物多様性に配慮した工場づくりを行う”など、決まった課題を一つひとつ着実に進めていくことが重要になります。幸いなことに取り組む内容が明確なため、グループ各社とも自分ごととして取り組んでいます。

マネジメント層も環境課題への危機意識が高く、意思決定もスピーディに進んでいます。例えばグループ全体の再エネ化は費用が掛かることですが、社会的な機運も手伝って、優先的に取り組むべきだと考えています。2026年度を目標にしていた、国内全拠点での再エネ導入100%は、高橋社長自ら、目標を2年繰り上げることを決めました。すでに、2024年度中に国内の全拠点で再エネ導入100%を達成する予定で進んでいます。

ESG・SDGs推進室長として、この2年間をどのように振り返りますか。

草谷さん  先ほどもお話したようにセイコーはもともと社会貢献の意識が強い会社です。国内外の製造拠点ではコンプライアンスを順守する活動を従来から続けてきましたし、ガバナンスに関してもグループ各社で取り組みがされていました。ただ、それぞれをつなぐ仕組みが必要だったのですね。

例えば、2022年にセイコーグループの人権方針を策定しました。“人権”は人事部の業務と密接な関わりがありますが、人事部だけに策定を依頼するのではなく、ESG・SDGs推進室が主体的に働きかけながら協力して検討する方が包括的に進められます。責任ある調達活動の推進に関しても同じように、ESG・SDGs推進室が主体的に調達方針の改訂を検討したり、サプライヤー様向けのガイドラインを作ったりという進め方をしています。

また最近では、人的資本に関する開示も必要です。これもセイコーグループ株式会社単体の人事部だけではなく、セイコーグループ全体の人事戦略を管轄するグループHR戦略部と協力し、開示するべき項目を確認するなど、取り組みを進めています。

どれも細かく手間が掛かりますし、けっして簡単なことではないのですが、取り組むことが決まったらスピード感をもって取り掛かる。それが大事だと考えています。結果として、これまでに行った施策は着実に進捗しました。それはグループ全社の皆さんのおかげですし、とても良かったと素直に感じています。

セイコーの人権方針についてはこちら

草谷さん 画像

サステナビリティに関する業務には専門用語や英語の略語が多い。知らないことも多かったが「せっかく取り組むからには好きになりたい」と思い、サステナビリティに関する本を精力的に読み、関係するセミナーには積極的に参加し、専門知識を吸収するように心がけた。

社内の皆さんもサステナビリティに関する活動について理解があるのですね。

草谷さん 理解は進んできたと思います。もともと環境意識が高い人もいますが、そうでない人もいるので、私たちESG・SDGs推進室としては、なぜこうした取り組みが重要かを理解してもらうことも大事だと考えています。

勉強会を開催したり、生物多様性活動を進める盛岡セイコー(株)の見学会を開催したり、セイコーウオッチ(株)が包括連携協定を結ぶ岩手県にある平庭高原での森林保全活動に参加したりといった、体験の機会をつくることもしてきました。普段からも、できるだけ分かりやすく丁寧に、自分の言葉で説明するようにしています。メールなどで簡単に済ませるよりも熱意が伝わると思うからです。

実際担当になったら、新聞やニュースでもサステナビリティに関するニュースに意識が向くようになり、毎日本当にたくさんの関連ニュースがあると気づかされます。それだけ注目されていることに取り組むのですから、みんなにも納得してもらえるように、担当者として自分の言動にも気を配っています。

森林保全活動の様子

平庭高原での森林保全活動

事業とサステナビリティの結びつきをさらに強めたい

「WITH」について教えてください。

草谷さん  持続可能な社会に貢献することと共に、自社の成長も考慮して特定したマテリアリティ(重要課題)は13項目になりました。課題解決を進めるためには、社内外を問わず多くの方にセイコーのマテリアリティを理解していただく必要があります。

そこで13の課題を、Well-being(よりよい人生を)、Inclusion(すべての人に)、Trust(確かな信頼で)、そしてHarmony(地球との調和)の4つに分類し、それぞれの頭文字をとって「WITH」というテーマが決まりました。

私自身がESG・SDGs推進室に異動になったのはマテリアリティ決定後でしたが、策定のプロセスはとても大変だったと聞いています。関係各所の意見を踏まえて、慎重に、一年以上もの時間を掛けて決められました。それだけに、なぜセイコーがこの13項目を重要視するのか、理由を含めて社内への浸透はさらに進めていきたいところです。

WITH 画像

社会課題解決の目指す方向性として、WITH(W:well-being よりよい人生を / I:inclusion すべての人に / T:trust 確かな信頼で / H:harmony 地球との調和)をテーマに、マテリアリティに対するキーアクションを定めている。

今後のセイコーのサステナビリティは、どのような展開になりそうですか。

草谷さん  2024年度にはSBTという、パリ協定と整合性のある温室効果ガス排出削減目標を立てていることを示す国際認証を取得したいと考えています。同じく、人権尊重や責任ある調達に関する取り組みもスケジュールを立てているので、予定通りしっかり実施していきたいです。再エネ化も、国内拠点の目処がついたので、次は海外です。国によって再エネに関する法令や条件がかなり違うので、いろいろな可能性を検討する必要があります。

また引き続き社内において、サステナビリティへの基本的な理解をもっと浸透させていきたいと考えています。セイコーの事業自体が課題解決にもっと貢献できるように、事業とサステナビリティの結びつきをさらに強める仕組みを作りたいです。これは社会からも経営陣からも求められていることだと思うので、すでに各社で始めていることを、もっと周知し、拡散していきたいと思います。

この2年間で取り組みのスピードが上がり、社外からの評価であるESGスコアも着実に上がってきました。ただ忘れてはいけないことは、スコアを上げることが目的なのではなく、グループ社員一人ひとりがきちんと理解できた上で実践し、その結果のスコアであるべきということです。そのためにはこれからも、地道にしっかりと、着実な努力を重ねていきたいと思います。

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