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日進月歩で文明を発展させている人類は、先端のテクノロジーを駆使することで常に暮らしを便利に豊かにしてきました。その一方で、現代では人口増加、貧困、食糧不足、気候変動など地球規模の課題が山積しています。それだけに国や行政、企業などに解決の一手を一任するのではなく、今を生きる1人ひとりが利他的な思考を持つことが大切です。そんな時代におけるキーワードの1つとして「エシカル消費」が挙げられます。

エシカル消費(Ethical Consumption)とは、地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動であり「倫理的消費」とも言われます。「SDGs」 や「サステナブル」などの言葉が頻繁に使われるようになった現代において、エシカル消費はどのような役割を担うのでしょうか。社会に与える影響や課題、セイコーが取り組むエシカル消費の事例を紹介します。

エシカル消費とは

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エシカル消費は「地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動」を指します。近年は安価で手に入る便利な商品が増えていますが、「良い物をできるだけ安く」という視点のみで消費活動を行うと、労働者や環境などへの配慮が行き届いていない思考に陥りがちです。

日々の消費活動において、商品が「どのように生産されているのか」「どのように流通しているのか」などに目を向けて購入することで、社会課題の解決につながるエシカル消費にもつながります。

エシカル消費とサステナブル、SDGsの関係

エシカル消費と近い意味でよく使われるのが「サステナブル」や「SDGs」といった言葉でしょう。サステナブル(Sustainable)には「持続可能な」という意味があり、人類の営みを未来へとつなげていくうえでの世界共通の考え方として浸透しつつあります。そして、サステナブルという言葉を含んだ「SDGs」が、近年では重要視されています。

2015年9月の国連サミットで、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が加盟国の全会一致で採択されました。その中に記載されていたのが、2030年に向けた持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)です。SDGsは17のゴールと169のターゲットで構成されており、エシカル消費は主に「12:つくる責任・つかう責任」と関連性が高いとされています。

12:つくる責任・つかう責任 画像

なぜエシカル消費が必要なのか?消費行動の変化で起きること

限りある地球の資源を大切に活用するため、持続可能な生産と消費のバランスを形成することは不可欠です。そうした観点でも「12:つくる責任・つかう責任」の意識が重要であり、その思想を体現するエシカル消費が重要視されています。エシカル消費を行うことによって「人」「社会」「環境」「地域」にどのような影響を与えられるのかを紹介します。

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<人に与える影響>

エシカル消費に関連する商品の購入によって、代金の一部が貧困に苦しむ人々に寄付されることがあります。また、ダイバーシティを重んじる企業の製品を購入することで、人の自立や就労支援にもつながります。

<社会に与える影響>

低賃金・長時間労働によって安価な商品を生産することが社会問題にもなっています。生産者や資源を配慮して生産された商品を意識的に選び、購入することは、長い目で見た社会の健全化にも貢献します。

<環境に与える影響>

省エネ家電のような環境にやさしい製品を購入することで、地球温暖化の原因と考えられる二酸化炭素(CO2)の排出量削減にもつながります。微力ながらも1人ひとりの考え方のシフトが環境保全には不可欠です。

<地域に与える影響>

地元や被災地で生産された製品を意識的に消費することで、地域の生産者や小売店の発展に寄与できます。エシカル消費を通じた想いやりや行動の積み重ねが後押しとなって、地域の未来を創造します。

エシカル消費は誰にでもできる社会貢献のアクションの1つ

エシカル 画像

エシカル消費は社会に生きる1 人ひとりの身近な行動や心がけからも始められます。普段よく使う商品のセレクトを意識するだけでも、エシカル消費と関連付けて考えられます。ではエシカル消費に基づいた商品選定や社会に配慮した行動には、どんな例が挙げられるでしょうか。

<認証ラベル付きの商品を購入する>

購入する商品が人や環境などに配慮されているのかの判断が難しい時は、下記の認証ラベルが目印となります。エシカル消費を行いたいけれど、どの商品を購入すればよいのか分からない時は、認証ラベルの付いた商品を選びましょう。

認証ラベル 画像

<「てまえどり」で食品ロスを減らす>

「てまえどり」とは、賞味期限や消費期限が迫った食品を積極的に購入することです。消費者庁によると、2021年度の食品ロスの推計は実に523万トン。世界中の飢餓で苦しむ人に向けた2021年の世界の食品支援量は約440万トンであり、食品ロスはその約1.2倍に相当します。貴重な食料を無駄にしないためにも、普段の買い物から「てまえどり」を意識しましょう。

<マイバッグやマイボトルを活用する>

レジ袋やペットボトルのゴミを減らすために、小さな心がけとしてマイバッグやマイボトルを活用しましょう。レジ袋やペットボトルなどのプラスチック製品は石油を原料としており、使用量が増えると資源の枯渇につながります。また、プラスチックは自然環境で分解が難しく、森林や海洋へのゴミの蓄積も懸念材料です。正しく処理を行わないと自然界に残り続け、環境問題や人の健康に影響を及ぼします。マイバッグやマイボトルを意識的に活用することで、プラスチックゴミの削減に貢献しましょう。

エシカル消費の課題とは?日本での普及が進まない理由

近年、意識する人が増えているエシカル消費ですが、日本ではまだ十分に普及していないという現状があります。消費者庁が実施した「令和4年度第3回消費生活意識調査」によると、エシカル消費の「言葉と内容の両方を知っている」または「言葉は知っているが内容は知らない」と回答した人の割合は26.9%でした。日本でのエシカル消費に対する普及が進まない理由を紹介します。

エシカル消費の認知度 画像

出典:消費者庁「令和4年度第3回消費生活意識調査結果について」

<一般の商品に比べて価格が高い>

人や環境などに配慮された商品は、価格帯が高めに設定されていることが多く、気軽に購入しにくい側面があります。エシカル消費につながる商品は、適切な賃金で雇用する人件費や環境に配慮した原材料が必要なため、販売価格もその分高くなりがちです。2020年に消費者庁が発表した「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査でも、エシカル商品・サービスを購入しない理由に関して「価格が高い」という回答が「購入したくない理由はない」を除いて最多でした。

<エシカル消費につながる商品がない>

「どれがエシカル消費に繋がる商品・サービスかわからない」「身近にエシカル消費につながる商品・サービスがない」という回答も、同調査で多くを占めました。販売店がエシカル消費に特化した売り場を設けるケースもありますが、そうした事例はまだまだ少ないのが現状です。エシカル消費関連の商品を探し当てるのだけでも一苦労なだけに、製造・販売業者側においてもエシカル消費の認知拡大への意識向上が求められます。

企業が実施するエシカルな取り組み~セイコーグループの事例~

エシカル商品として、セイコーグループの事例を紹介します。セイコーウオッチではアップルレザーやラボグロウン・ダイヤモンドを使用した「セイコー ルキア」を、銀座・和光のバッグ「MANACO」シリーズではアップサイクルで作られた革小物「MANACO FRIENDS」で活用しています。

<アップルレザーとラボグロウン・ダイヤモンドを使用する「セイコー ルキア」>

セイコー ルキア 画像

SDGsへの意識が高まる中、「セイコー ルキア」では環境に配慮した素材への切り替えをすでに始めています。2022年5月発売の「Oasis Green Limited Edition」の付属ストラップでは、セイコーで初めてアップルレザーを使用しました。

アップルレザーとは、りんごの加工食品を製造した後に廃棄される皮や芯をパウダー状に分解して樹脂と配合し、レザーとして再生した革です。りんごの繊維を原料の一部にすることで、石油由来の化学原料の含有量や、生産時に使用する水と二酸化炭素の排出量を抑えられます。エシカルレザーの中でも、形や色のバリエーションが豊富で腕なじみにも優れていることから、時計ストラップとしての外観や品質に高い満足度が得られます。

セイコー ルキア 画像

また、本モデルではセイコーで初めてラボグロウン・ダイヤモンドを使用しました。研究所(ラボ)で育てられた(グロウン)合成ダイヤモンドを意味し、科学的・物理的な特性は天然ダイヤモンドと変わりません。不純物をまったく含まないことが魅力のラボグロウン・ダイヤモンドは、採掘が不要なため環境負荷が少なく、採掘時の労働や紛争問題に無関係という点がエシカル消費につながります。

他にもボックスで使用する紙をFSC認定紙などの環境に配慮した素材に切り替えることや、紙の取扱説明書を廃止することなど、あらゆる側面からエシカル消費につながる活動を進めています。

アップサイクルによって生まれる「MANACO FRIENDS」

MANACO FRIENDS 画像

2022年、銀座・和光は社会課題や環境に配慮したシリーズとして、バッグの「MANACO(マナコ)」シリーズから派生した「MANACO FRIENDS」を立ち上げました。MANACO FRIENDSは、MANACOのバッグを製造する際に発生する端材を活かして作られる、MANACOらしい上質なレザー小物です。ポーチやバングル、キーホルダーなど、和光らしいクオリティの商品が展開されています。

本来は廃棄される素材に手を加えて、新たな付加価値のある製品に生まれ変わらせることをアップサイクルと言います。大量生産・大量消費が問題となる中、持続可能な社会を目指すうえで、アップサイクルは注目されている取り組みの1つです。和光としての上質なものづくりのエッセンスを踏襲しつつ、製造されたレザーを無駄なく大切にする意識と長く使える製品づくりに努めています。まさにサステナビリティとファッションの共存と言えます。

エシカル消費で持続可能な社会の実現を

エシカル消費は、人・社会・地域・環境の課題解決に貢献できる消費活動です。まだまだ認知度は低いですが「てまえどり」やマイバッグの持参など、身近な行動から実践できます。セイコーグループでもアップルレザーや人工ダイヤモンドの使用など、エシカル消費につながる製品を製造しています。ぜひ普段の買い物からエシカルな視点を持ち合わせて、持続可能でより良い社会の実現を目指しましょう。

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