宇宙飛行士
山崎直子時問時答

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昼と夜を、45分ごとに巡る体験。

宇宙に到達するまでにどのくらいの時間がかかりますか?

いわゆるロケットが打ち上がってから宇宙に到達して無重力が感じられるまで、約8分30秒です。

宇宙に向かっている時、どのようなことを感じられましたか?

そうですね……。なんていうんでしょうね。「やったー! いよいよ打ち上がっている!」という感覚と、「8分30秒の間で、もしエンジンが壊れたらこうしなきゃいけない」「その時は非常用の酸素を出して、このシートベルトをこうして」とかいろんな動作を常に頭の中でシュミレーションしながら、でも、「体に加速度がかかっている、今進んでいるんだ」というような、「本当に宇宙に行っているんだ!」という思いと両方でした。

山崎直子

無重力を感じた時、どのような気持ちになりましたか?

船長さんがみんなに「Welcome to Space!」と言ってくれて、本当に宇宙に来たんだなと思いました。普段は下に沈んでいるホコリなどが一斉に舞い上がるんですね。それが朝日の光を受けてキラキラと光っている様子がとっても幻想的だったのを覚えています。それで窓に、シートベルトを外して近づいてみた時の地球が本当に青く輝いていて。その時、宇宙船からの姿勢によって見え方が変わるんですが、地球が真上に見えたんですね。頭上に。それがすごく不思議な感じがして。これが無重力なんだなと思いました。

宇宙にいる1日と地球の1日では、時間の流れも変わってくるのではと思うのですが、いかがでしたか?

宇宙船の中の時間は、24時間を1日として生活をして、朝6時位に起きて夜の10時にみなで消灯するという規則正しい生活だったんですね。なので、1日24時間という事は同じペースだったんですけれども、その中で流れる時間はとても密度が濃かったなと思います。たくさんの作業をして、実験をして、その合間にたくさんの写真を撮って、仲間とも話をしたりして。そして、地球を眺めて宇宙を眺めて。本当に密度が濃い時間があっという間に過ぎていったという印象です。そして私が行った国際宇宙ステーションですけれども、地球の表面から400キロメートル上空を回っています。90分で地球の周りを1周してしまうので、外の景色を見ていると、45分ごとに昼、夜、昼、夜を繰り返していくんですね。とても慌ただしい景色の、時間の移り変わりだなと思いました。でも、宇宙船の中は、そうした速さは感じずに、スムーズなような、ちょっとゆったりしているような、でも作業している時は慌ただしいような、いろいろな感覚が入り混じっていました。

山崎直子

宇宙とはどのような世界なのでしょうか?

絶対的な上も下もない世界で、全てが相対的な世界で。そして、こうした世界が138億年の宇宙の長い歴史の中で動いていて。こうして見えている太陽の光も、8分ぐらいかけて届いている光なので、今の光ではなくてちょっと前の光ですし。星なんかも本当に何百年何万年何億年前の光が届いているということを考えると、なんかその宇宙って空間だけではなくて、まさに時空というか、時間と空間が一つになっている。すごくその中で包まれているというような感覚がしたんですね。

みんなが宇宙を目指せる世の中に。

山崎さんの今の活動内容について教えてください。

今は、JAXAを退職しておりまして、内閣府の宇宙政策委員会の委員として政策面から宇宙に関わっています。また、宇宙少年団のアドバイザーをしていたり、いろいろな科学館のお手伝いをしていたり、その、教育ですね。特に若い世代の宇宙教育、力入れたいなと思っています。あとは、3年前ですね、2018年にスペースポートジャパンという団体を有志の皆さんと作って。日本からも人が宇宙に行き来できるような、そうした宇宙港、スペースポートを作りたいという活動もやっています。

山崎さんが目指されていた当時から、宇宙飛行士になるための条件など、環境の変化はありましたか?

前回の宇宙飛行士の募集があったのが13年前で、この13年間新しい日本人宇宙飛行士の募集はなかったんですね。それが今年の秋にようやく13年ぶりに募集が開始されるということでワクワクしています。今後は今年の秋からまた始まって、5年毎ぐらいに定期的に宇宙飛行士を募集していくという計画を発表しているので、そうなってくるとより宇宙飛行士にもなりやすくなってくるんじゃないかなと思います。あとは条件も、今、検討をJAXAがしていて、今までは理系の大学を出ていることというのが条件だったんですけども、理系だけじゃなくて文系の分野、いろいろな分野だったり、あるいは大学卒以外の人たちも含められないかだとか。あるいは働き方もJAXA常勤ではなくて、例えばパートタイムのような勤務形態があってもいいんじゃないか、兼業の宇宙飛行士がいてもいいんじゃないかだとか。色々今検討が始まっているので、まだ決まってはいませんが、楽しみにしています。

海外の事例について、お聞かせください。

ヨーロッパは同じ時期に新しい宇宙飛行士を募集しているんですけども、ヨーロッパでは、身体が不自由な方も宇宙飛行士として採用します、と発表しているんですね。どうしたらいろんな人が宇宙で活躍できるかをみんなで考えていきましょう、という方針を出しているので、ぜひ実現していって欲しいなと思います。

宇宙にいても、時間だけはつながっている。

宇宙にいらっしゃった際、地球にいる人たちとつながっているような感覚はありましたか?

地上にいる時も、最近あぁ素敵だなと感動したのが、今年の2021年の初日の出を宇宙から中継してそれをみんなで見ようというプロジェクトに私も参加したことです。その時、国際宇宙ステーションに野口聡一さんが滞在されていて、野口さんも宇宙から出演してくれて。その、それぞれ住んでいる地域も違うので、時間はずれている、けれども今この瞬間、この昇ってくる宇宙の初日の出をみんなで見ているというね、このリアルタイムでみんなと繋がっているという時間の感覚は、なんかすごく不思議な、とてもやさしい温かいものがありました。

山崎直子

普段の生活の中で大事にしている時間はありますか?

これは宇宙にいた時も同じだったんですけれども、やっぱり夜寝る前にその時、その日に会った人たちを思い浮かべたり。あるいは、家族を思い浮かべて「ありがとう」という時間を持つということですね。子供たちには直接生まれてきてくれてありがとうということが日課、大切な時間なんですけれども。普段会えない、特に今コロナ禍でなかなか会えない人も多いので、両親も元気かなとかね、あの人元気かなとかでも今日あの人と会ったなとかね。なんかそんなことを思い浮かべながら、「ありがとうと想う時間」ですかね。大事にしたいなと心がけています。

山崎直子
(撮影:Satoko Imazu)
※本内容は音声でお聴きいただくことも可能です。文章では話の内容をよりわかりやすくするために言葉の調整や補足をした箇所があります。音声と文章、どちらもお楽しみいただければと思います。

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プロフィール

山崎直子
山崎直子 宇宙飛行士

アポロ11号が月面着陸した翌年に生まれる。宇宙開発に関わることを志し、東京大学大学院で航空宇宙工学を学び、卒業後はNASDA(宇宙開発事業団、現JAXA)に入社。1999年に宇宙飛行士選抜試験で選抜され、日本人女性2人目の宇宙飛行士候補者になる。2010年ディスカバリー号で宇宙へ行き、15日間のミッションを全うした。現在は内閣府宇宙政策委員会委員やスペースポートジャパン代表理事などを務め、日本の宇宙開発についての提言や普及活動を行っている。

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