心動かす時を共にSEIKOHEART BEATMagazine

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文 清水麻衣子
写真 望月みちか
スタイリスト 後藤あけみ
ヘアメイク 後藤政直

11月27日に4年ぶりのニューアルバム「Beautiful People」をリリースする久保田利伸さん。アルバムジャケットではなんと、鍛え上げられた見事な裸体を披露。シュールでファンキーなデザイン案に「最高」と思っていたら、まさか自分が脱ぐことになろうとは!? 「何もなくなった世界」をイメージしたデザインに合わせ、「LA・LA・LA LOVE SONG」以来のちょんまげヘアも復活。ちょんまげ誕生の意外なエピソードとともに、自身の音楽のルーツや思い出の一曲に迫ります。

久保田利伸 写真

まず最初に、初めて買ったレコードって覚えていますか?

覚えてますよ。天地真理さんの「虹をわたって」です!(笑)
小学3年生くらいですかね。当時ものすごいアイドルで、大ファンでした。友達と一緒に買いにいったのを覚えてます。同じタイミングで野口五郎さん。それは、近所の赤池電気で買いましたね。その後、井上陽水さんを買って、そのあと中学でナタリー・コールの「Mr. Melody」がありましたね。それはラジオだったか、もしくはテレビの「世界歌謡祭」っていう番組で洋楽に触れるチャンスがあって、そこで知ったのかもしれない。日本も含めて世界各国の歌のうまい人たちが出るんだけど、僕は子供ですから、世界の頂点のお祭りだと思っていた。でも実はそうではなくて、一つの企画だった(笑)。そこでナタリー・コールを知って、「Mr. Melody」のシングルを買って、ずーっと聴いていました。女性の歌だからマネするのはすごく難しいんですけど、今でも曲のエンディングのアドリブの一節まで完璧に歌えますね。「スカバスカバスカバドゥイドゥイドゥイ〜スカバ〜ダバダバ〜♪」って、この辺からフェイドアウトします(笑)。

英語は理解して聴いていたんですか。

ぜんぜんわからないです。耳で聴いて音をマネしていた。厳密にいえば変な発音がいっぱいあったと思います。

久保田利伸 写真

ちょんまげヘアは久しぶりですか? 初めてちょんまげにしたときはニューヨークに移り住むころだったように記憶していますが……

あの頃は、ツーブロックの刈り上げで、上の部分だけ伸ばしていろいろなヘアスタイルを楽しんでいたんだけど、あるときニューヨークを歩きながら、次の髪型をどうしようか、パーマでもかけようか、なんて考えていたら、たぶんメキシコ人だと思うんですけど、タコスを配達している人がちょんまげをしていたんですよ。僕は日本人でありながらファンキーミュージックをやっていたから、ファッションとしてもエッジが効いているスタイルがいいなと思っていて、彼を見た瞬間、「これだ!」って感じでした。ちょんまげは国を問わず、なに人でもいい気がしたし、またそのメキシコ人の顔が俺に似てたんですよ(笑)。だから、この髪型はタコス屋のおかげです!

久保田利伸 写真

意外! サムライがニューヨークに乗り込むぞ、みたいな意気込みなのかと思っていました。

メキシコ人です(笑)。ただ、ニューヨークのレコード会社の人には、「それだ!それを待っていた!」って言われましたけどね。「脇に刀を差してくれ」なんて言われて、「そういうことじゃない、俺は色物じゃないんだ」って。

久保田利伸 写真

ニューヨークに移り住んだときの苦労はたくさんありましたか?

なんで日本人なのにR&Bなんだよとはよく言われましたし、もっとさかのぼると、住み始めたばかりの、僕の音楽を誰がどうサポートしてくれるかもわからない状態の頃、12月の極寒のニューヨークで、まだ慣れていなくて食べたいものがわからない。どう買ったらいいのかもわからなくて、唯一素人が安心できるのが、街のいたるところにある24時間営業のグロサリーストアだった。

腹減ったなあ、ここしかないなあと思って入って、パンとか、カサカサに乾いた焼きそばを買ったら、寒そうに見えたんでしょうね。店の店主が「おまえ、日本から来たのか。俺はコリアから来た」って優しく話しかけてきて、「寒いからこの味噌スープを持っていけ」って言ってくれた。でも僕はニューヨークに来たばかりで、強くいかないと、がんばらないと、と気張っていたもんだから、すごく心の狭い人間だったんですよ。だから「いらねーよ、大丈夫だし」って、突っぱねちゃったんです。帰り道で、なんでもらわなかったんだろう、なんで優しい気持ちにありがとうって言えなかったんだろうって思った。ニューヨークに来たばかりの気合い入れっぱなしのやつって、そういうことよくあるんですよ。厳しい競争社会なので……。始めの半年間くらいは僕にもそんなムードがありましたねえ。

これからニューヨークを目指す人のヒントになるかもしれませんね。

でも、目指す人は、自分で全部経験するといいですよね。僕がちっちゃい人間になっちゃったように、ちっちゃい人間から始めてみるといいんじゃないかな。

久保田利伸(手元アップ) 写真

時計 Grand Seiko SBGA211 ¥620,000(税別)

ニューヨークに移った当時って、今のように世界中の音楽をインターネットを通じて聴けるような時代でもなかったですよね。移り住んでみて、どのような衝撃を感じましたか。

ニューヨークは世界中の音楽がありますからね。日本では、ニューヨークは“R&Bとジャズの街”みたいなイメージに思われている感じもありますけど、人種的にも、ラテン系の人たちが30%くらいいて、キューバの音楽とか、ジャマイカから来た人たちの音楽とか、もちろんジャズ、ソウル、R&B、いろいろありますけど、レストランやライブハウスも今よりもたくさんあって、窓からいろんな音楽が聴こえてくるわけです。やっぱり、ああ僕は世界の、いや、地球の縮図にいるんだなあ、と感じました。と同時に、昔からあるクラシック音楽も、巨匠たちがカーネギーホールとかでやるわけですよ。そういう人たちが集まってくる街なんで、無意識でも聴くし、そういう環境に身を置くっていうことがすごい体験でした。

久保田利伸 写真

そんなにすごいミュージシャンがごろごろいる世界で、自信がなくなったり、弱気になったりとかはなかったのですか?

もう、ウキウキですよ。たとえばアスリートでいえば、すごいやつがいたら、こりゃ勝てない、ってなるけど、音楽ってさまざまじゃないですか。1位2位を争ったり、強い弱いではない。すごい人を見たら、俺もあんな風にやれるかなって思ってみたりとか、追いつかないとしても、俺だったらこう表現できるな、っていう風に思えるジャンルなので。ありがたいもの見ちゃった、聴いちゃったと、取り入れられなくても嬉しい。絵描きさんも、一つの素晴らしい絵を観たとき、断念しないで、刺激を受けて自分でも描きたいって思いますよね。そういうことなんじゃないかな。

久保田利伸 写真

では、心が折れそうになったことはない?

あ、それは、日本に全く帰らなかった10年のうち、3年〜4年は折れそうになっていましたね。いくら「それいいな、素晴らしいな」って思っても、実行に移そうとすると、時間が膨大にかかる。たとえば、来週の月曜日に4人でミーティングをしましょうと言っても、そのうち3人がロングアイランドに遊びにいっちゃってて再来週に延期になったりとか、そういうことが頻繁に起こるわけですよ。でもそれが彼らのリズムなので、それでイライラしちゃいけない。時間を無駄にしないためにそんな時自分は今なにができるかなって、できることを一生懸命探していること自体が今度は逆にちっちぇえと思って。こういうときは街を一日中歩けばいいっていう気持ちになれればいいんですけど、やっぱりそうなれないときは、やってらんねーなーって……。あとはサポートしてくれるスタッフや味方、理解者を探すのに本当に時間がかかりましたね。

久保田利伸 写真

数々のステージに立ってきたと思いますが、特に印象に残っているステージは何ですか?

たくさんありますが、1991年にアフリカ・ナイジェリアの首都ラゴスの5万人収容のナショナルスタジアムで「Children of Africa」というイベントがあって、イギリス人の知り合いが「TOSHI、来ないか」って誘ってくれて、「もちろん!」って、二つ返事で行ったんですよ。出演者のうちアジア人は僕一人だけで、あとはほとんど黒人アーティスト。誰一人僕のことを知らないし、下手すると、日本人としゃべったこともない人たち。そこで2曲半くらい歌ったんですけど、自分の曲の「MAMA UDONGO~まぶたの中に…~」を歌い出してしばらくすると、どんどん盛り上がってくれて、最後は「Wow Wow Wow〜」っていう繰り返す部分のフレーズをお客さんが一緒に歌ってくれた。日本語の曲だし、僕が煽ったわけでもないのに、総立ちで。あれは感動的でした。ジミー・クリフの「Many Rivers to Cross」っていう曲を歌った時なんか、みんな曲を知ってるから、手をあげてノッてくれた。やっぱり音楽は世界の共通語なんだって思いました。

音楽って、会話なんですね。

そうです。ユニバーサル・ランゲージなんです。言葉が通じなくてもできますから。そういう体験をすると、音楽をやっててよかったなあと思います。

久保田利伸さんの思い出の一曲:久保田利伸「MAMA UDONGO~まぶたの中に…~」(6分33秒)

取材協力:アヴァンセリアン ロゴ

衣装協力:ランバンオンブルー ロゴ

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