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文 清水麻衣子
写真 中川 司

銀座・和光から聴こえてくるトイピアノの音色。子供たちが目をキラキラさせ、覗き込んでいるその先に、セイコークロックが最先端の技術を結集して作り上げた新しいからくり時計「セイコー 輪舞(ロンド)」が楽しげなストーリーを展開していた。テーマは“歯車たちの冒険”。1984年、有楽町マリオンに日本初の屋外型大型からくり時計「セイコーマリオンクロック」が登場してから35年、今改めて見直されるからくり時計の魅力と、制作の舞台裏に注目する。

冒険の旅に出かけよう!

(左上)からくり時計「セイコー 輪舞(ロンド)」 写真、(右上)子供たちが時計を覗き込んでいる様子 写真、(左下)指揮者の人形 写真、(右下)クリスマスの衣装に身を包んだ人形 写真

ファンファーレとともに指揮者の人形がステージにせり上がると、妖精の衣装に身を包んだ可愛らしい人形6体と力を合わせ、くるくるとレバーを回しはじめる。チクタクチクタクというリズムに合わせて出てくるのは4個の歯車。さあ冒険の旅に出かけよう! レールの上をスルスルと進む歯車たち。だけど、進む先は山あり谷あり、まるで人生そのものを表すよう。頑張って!

歯車がハンマーや振り子、重錘の仕掛けを次々と通り抜け最後は時計にたどり着く 写真

歯車たちは、棒りんハンマーがうごめく「海」を潜り、振り子が揺れる「林」を抜けて、進んでいく。次はどこへ行くのだろう? 歯車たちの冒険を熱心に見守る人々。大人も童心に返り、からくり時計が繰り広げるストーリーに夢中。皆が見守る中、重鐘の「波」に潜って、ついに時計に到達した歯車たち。「おかえり!」皆の笑顔があふれると、人形たちが歯車を巻き、パワーが満たされる。いよいよ6枚羽の文字板が開いてパフォーマンス開始だ。トイピアノの演奏が始まると、たちまちその場を幸せな空気に包み込んだ。

(上)からくり時計 セイコー 輪舞(ロンド)のデザイン案 画像、(中)からくり時計の演出テーマ「歯車たちの冒険」のデザイン画 写真、(下)デザイナーの和田光夫さん 写真

(上)からくり時計 セイコー 輪舞(ロンド)のデザイン案、(中)からくり時計の演出テーマ「歯車たちの冒険」のデザイン画、(下)デザイナーの和田光夫さん

“歯車たちの冒険”をテーマに繰り広げられる約3分間のストーリー。次はどこに向かうの? 何が起こるの? と、見ている人はドキドキワクワク。気づけば誰もが笑顔で眺めている、それがからくり時計の魅力だ。デザインを担当したのは、ベテランデザイナーの和田光夫さん。

時との関わり方、もっとゆるやかに

「クロックの魅力をもう一度再確認してほしかった。今はどこでも時刻を知ることができるようになったけど、紀元前4000年頃のエジプトで誕生した人類最古の時計、日時計の時代は、もっと“人”と“時”の関係がゆるやかだった。時は景色のようなもので、“時計”というより、“時景”だったのではないか。精度を追求することで“時計”になったように思う。からくり時計で、“時の景色”を眺めてもらいたいんです。時との関係を見せることはセイコークロックとしての一つの回答。いろいろなイメージをふくらませてほしいですね。」(和田さん)

嶋村勝巳さん 写真

プロジェクトの推進・調整を担当した嶋村勝巳さん

今回のプロジェクトの推進・調整を担当したのは開発外装グループ・マネージャーの嶋村勝巳さん。入社時は和田さんの直属の部下だったというが、企画が立ち上がった当初のことを思い、「よくできたなあ、本当にできちゃった。」と感慨深げ。

(上)銀座・和光本館、西口入口ホール 写真、(下)からくり時計「セイコー 輪舞(ロンド)」 写真

これは工業製品ではない、工芸品だ

「今回使った素材は、ステンレス、アルミ、木材、ガラス、真鍮と多岐に渡り、強度を求めるときれいな色が出なかったり、大きなサイズだと手に入らなかったりと、苦労しました。歯車は“遊び”がないとうまく動かないのですが、遊びがあるがゆえに調整が難しい。最後は人の手ですよね。工業製品というよりも工芸品だと思います。」(嶋村さん)

(上左右)人形 写真、(中左)希少銘木のクラロウォールナット、玉杢 写真、(中右)磨いて生地の色を出した真鍮部分 写真(下左右)柱に使われているのは光学ガラスメーカー・株式会社オハラのガラス 写真、(下右)柱の端から覗いた様子 写真

(上左右)人形が着ている衣装は、細部までとても美しい。(中左)時計を囲う突板には希少銘木のクラロウォールナット、玉杢を使用。(中右)磨いて生地の色を出した真鍮部分。(下左右)柱に使われているガラスは、日本一の望遠鏡「せいめい」にも使われている光学ガラスメーカー・株式会社オハラのもの。柱の端から覗くと、屈折率が極めて低く、透明度の高いガラスだということがよくわかる。

その道のスペシャリストが力を合わせ、作り上げていく

からくり時計を作るということは繊細で、とても根気のいる仕事なのだ。それと同時に、決して一人では成し遂げられない、スペシャリストたちが力を合わせた努力の結晶なのだ。

からくり時計の人形 写真

写真 どうるっと有限会社

「身長8センチというからくり時計の人形に、リアルな衣装を着せ、しかも腕が作動するのを妨げないようにという……今までいろいろな人形ドレス試作を受けてきましたが、これほど難しかったことはありません。デザイナーの嶋田は、生地の選択、デザイン、作動で長時間かかり、苦労したようでした。無事完成し、ホッとしております。」(どうるっと有限会社・吉田政弘さん)

設計担当の川端康夫さん 写真

デザイン画から実現に向けて機構部分の構成を考えた設計担当の川端康夫さん

「デザイン画をもらって、設計の構想を練り、実現に向けて機構部分の構成を考えるのが自分の役目。和田さんのデザイン画がきっちり構造をイメージしたものだったので、やりやすかった。それでも歯車が転がる部分はやってみないとわからない。今までになく表のデザイン(見てもらう部分)が多かったので、モーターは正確に動きを制御できるのか、自然な動きに見えるのか、心配だった。苦労はありましたが、完成品を見ると感無量です。」(設計担当の川端康夫さん)

部品設計担当の石附千羽也さん 写真

部品の設計を担当した石附千羽也さん

「設計後にどういう部品加工をするのか、考えるのが僕の担当。ふだんの仕事より細かく、精密だったので、いつも以上に気を配らなくてはいけなかった。裏側は見えない部分だけど、覗くと歯車やメカの部分がちらっと見える。中身がどうなっているのか、想像して楽しんでほしい。メカが好きでこの会社に入ったけど、からくり時計はメカのかたまりのようでやりがいが大きかった。裏側から見ると感動しますね。」(部品設計担当の石附千羽也さん)

銀座の新しいアトラクションに

(上)銀座・和光本館、西口入口ホール 写真、(下)入口ホールに設置されたからくり時計 写真

銀座和光本館西口入口ホールに設置されたからくり時計「セイコー 輪舞(ロンド)」

銀座の象徴である和光に、新しいアトラクションとしてからくり時計が置かれたことで、「家族で見て、銀座を楽しんで、家に帰ったらからくり時計のことを話題にしてほしい。」と和田さん。マリオンクロックと違って、近くでからくりを見ることができるのが「セイコー 輪舞(ロンド)」の魅力。

からくり時計のストーリーを見守る様子 写真

からくり時計が繰り広げるストーリーを、大人も子供も笑顔で見守った。

ぜひ、顔をぐっと近づけて、からくりの細部に注目して欲しい。楽しい発見がたくさんあるでしょう。待ち合わせをする人々の心を和ませ、子どもたちの想像力を高め、その場に居合わせた人たちが同じ時間を共有する素晴らしさ、皆を笑顔にしてくれるからくり時計の魅力を、再確認しに出かけてみては?

からくり時計 セイコー 輪舞(ロンド)

住所

東京都中央区銀座4-5-11

設置場所

銀座・和光本館 西口入口ホール

アクセス

各線「銀座駅」A9、A10出口から徒歩すぐ、B1出口直結

演奏時間

10時30分の和光開店時、および営業時間中の毎正時(11時〜19時)

定休日

年末年始を除いて無休

からくり時計 セイコー 輪舞(ロンド) イメージ
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