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ライター 杉山仁
カメラマン 山口真由子

現代人の生活必需品として、日々の生活に欠かせないスマートフォン(以下、スマホ)。皆さんは一日に何時間利用していますか?
試しに筆者はスマホをどのくらい利用しているか確認してみたところ、なんと一週間の平均で1日9時間以上も操作をしていたようです。

スクリーンタイム 画像

筆者のスクリーンタイムの画像がこちら。普段の仕事はPCでしているというのに……これは一体……。

全国平均では2~4時間以内がボリュームゾーンとのことなので、これは少々極端な例かもしれません。とはいえ、毎日の生活において、スマホは多くの人々にとって欠かせない存在になっています。そして、長年時計事業を手掛けてきたセイコーは、実はこのスマホにおいても、とても重要な電子部品の開発/販売を行なっているそうなのです。

それが、この「水晶発振器用IC」です。

水晶発振器用IC 写真

ドン!!!!

もう一回いきましょう。「水晶発振器用IC」です!!!!

水晶発振器用IC(アップ) 写真

ドン!!!!!!

こ、これは……?

一体どういう部品なんですか……!? 

素人目には、一体どんな役割を果たすものなのか、まったく見当もつきません。しかしこの「水晶発振器」、実は“産業の塩”とも呼ばれ、スマホを筆頭にあらゆる電子機器に使われているそう。

それだけでなく、来たる5G時代にも重要な役割を担う電子部品としても注目を集めているとのこと。そこで今回は、この水晶発振器に使用する「IC」の開発/販売を担当するセイコーNPC株式会社の内田久量さんと澤木勇一さんにお話をうかがいました!

左から内田久量さん、澤木勇一さん 写真

(写真左)セイコーNPC株式会社の内田久量さん、同社の澤木勇一さん

私たちの生活になくてはならない「水晶発振器用IC」

「水晶発振器用IC」というのは、一体どんな電子部品なのでしょうか……? 「水晶発振器」用の「IC」と言われても、何をするものなのか全く分からず……。

澤木 はい(笑)。まずは「水晶発振器」と「IC」を分けて簡単にお話しますと、「水晶発振器」は、電子機器に使われている色々な部品が動くための「合図」をつくりだす部品ですね。

「合図」?

内田 そうです。実は時計だけではなく、すべての電子部品は、「クロック」と呼ばれる基準、つまり「合図」がなければ、正常に動くことができないんです。その「クロック」をつくり出すのが「水晶発振器」です。

なるほど、「水晶発振器」は合図を生み出すためのもの。

内田 その合図のおかげで、電子機器の中のそれぞれの回路が、「これは〇〇だな」「こっちは〇〇だな」と認識して動いていきます。つまり、「水晶発振器」がないと、世の中のすべての電子機器は正常には動かなくなってしまうんです。

今の話だけでも「水晶発振器」がめちゃくちゃ大切な部品だということがわかります。

内田 ありがとうございます(笑)。バンドにたとえるなら、「水晶発振器」はドラムのような役割ですね。演奏するときには、まずはドラムがしっかりしていないと、ギターもベースもピアノも上手くまとまらなくなってしまいます。その基準になるリズムを担うのが「水晶発振器」です。

内田久量さん 写真

バンドを支えるドラム。わかりやすいですね。

内田 一方で、ICというのは、「integrated circuit(集積回路)」の略。たとえば、昔のブラウン管のテレビは今の液晶テレビと比べて非常に大きなものでしたし、携帯電話も昔のものは今のスマホよりもっとサイズが大きくて、縦置き型のものでした。

確かにテレビは昔よりもかなり薄くなりました。

内田 それが今のようにコンパクトな製品に変わったのは、中の回路自体が小さくなったからなんです。そんなふうに、本来はたくさん必要なはずのさまざまな回路を小さくしたものが「IC」と呼ばれるものです。実は今の電子機器でも、もともとの素材や中の構造はブラウン管の時代のテレビなどと変わっていないのですが、それを「IC」にすることでぎゅっとコンパクトにしているんですよ。

スモールライトを当てて小さくしているようなイメージですか?

澤木 そうですね(笑)。この技術によって、テレビが薄くなり、パソコンが軽くなり、時計がスマートウォッチになり……と、色々な電子機器の軽量化が実現しました。

澤木勇一さん 写真

内田 私たちがつくっている「水晶発振器用IC」は、「水晶発振器を機能させるためのIC」で、スマホのような一般向けの電子機器もそうですし、車もそうですし、もっとスケールの大きなところでは、人工衛星にも使われています。一般の方々が普段手に取って使う製品から、宇宙事業や防衛事業まで、さまざまなところに使われているんです。

そんなに幅広く……。

内田 電子部品が入っている世の中のほとんどのものには、「水晶発振器」が入っているんですよ。それもあって、「水晶発振器」は「産業の塩」と呼ばれています。もともと、電子機器を構成する半導体が「産業の米」と呼ばれているのですが、その米を美味しくする=より高度な電子機器をつくるものということだと思います。

多種多様なエレクトロニクス製品に「水晶発振器用IC」は使用されています 画像

「水晶発振器」がない世界の生活とは?

なるほど、だんだん分かってきました! ちなみに、身近なスマホですと「水晶発振器」がなければ具体的にはどんなことができなくなってしまうんですか? 

澤木 基本的には何もできなくなってしまうと思います。水晶発振器は基準をつくる役目を果たしますから、その機能がブレブレになってしまうんです。ですから、あくまで仮説として想像するとですが……。

(ゴクリ)。

澤木 たとえば通話をする際にも、互いの信号を上手く受信できずに相手の声が飛んでしまったり、声が聴きとりづらくなったりしてしまうと思いますし、時計機能にも使われていますので、その時刻自体が狂ってしまいます。そうした色々な問題が出てきてしまうかと……。

内田 LINEなどのSNSも、お互いの信号を受信する回路の調整が上手くいかないので、そもそも相手にメッセージを送ることができなかったり、送っても向こうに届かなかったりしてしまうかもしれないですね。

澤木 そうすると、気軽に待ち合わせはできなくなりますよね。こっちから「〇時集合にしよう」と送ったものが、向こうに届く頃には全然違う情報になる可能性がありますので。同様に、誰かの情報は届くけれども、誰かの情報は届かない、ということも考えられます。また、GPS機能も狂ってしまいますので、たとえばグーグルマップで経路検索をしても、本来の目的地とは全然違う場所に誘導されてしまうことがあるのではないでしょうか(笑)。

内田久量さん、澤木勇一さんインタビュー中の様子 写真

絶望的ですね……。何もできないじゃないですか……。

内田 考えたことなかったですが、本当にそうですね……。どれだけ高性能な電子部品を揃えていても、「動くための基準が狂うと問題が起きる」ということで、「水晶発振器」はその基準を担っているんです。

基準の重要性を感じます。

内田 会社にたとえると、「〇〇時から〇〇時までは就業時間です」という、基準になる時計のようなものかもしれません。みなさん仕事をする際には「時間」を気にして働いていますから、それがなければ誰がいつまでに何をすればいいか分からなくなってしまいますし、遅刻をしてしまうことも、帰る時間が分からなくなってしまうこともあるはずです。電子部品の「クロック」と言われる通り、「水晶発振器」は電子機器の「時そのもの」だと思います。

来る5G時代でも活躍

創業以来時計事業を手掛けられてきたセイコーさんのコアになる部分と同じ「時を刻む」ための役割を、みなさんが半導体の領域で担当されているのですね。

内田 そうですね。また、「水晶発振器」は今話題になっている5Gの領域でも活用されます。まだ本格的な5Gのサービスははじまっていませんが、既に5G用のものを用意していて、現在それが一部で試験的に使われはじめているような状況です。

5G用の「水晶発振器」は、これまでのものとどう違うんですか?

内田 5Gにおいては、これまで以上に膨大な情報量をより高速に処理できるようになります。車にたとえると分かりやすいのですが、データが通る道路の幅が広くなって車(データ)の交通量が10倍以上に増え、速度も従来は時速100kmだったものが時速1,000kmになるぐらい変わります。

それはすごい景色ですね……。

内田 そんな状態になるのですから、高速で走る大量の車の交通整理をするために、「水晶発振器」も、それを機能させるための「IC」もより性能の高いものが必要になってきます。それができなければ、事故が起こってしまいますので。

澤木 具体的には、そうしたデータの速度に合わせて、水晶発振器のスピード自体を速く・精度も良くしています。一方で、バッテリーの持ちや発熱についても考えなければいけないのでこれまでより低消費電力である必要があります。それをすべてクリアするために、何度も試行錯誤を重ねて開発を進めていきました。この「水晶発振器用IC」は、5G回線を通してIoTなどさまざまなものに活用されていくと思いますよ。

なるほど……。とても勉強になりました。本日はありがとうございました!

左から内田久量さん、澤木勇一さん 写真

「水晶発振器」そしてそれを機能させる「IC」がなければ、スマホが使えなくなるだけでなく、PCも、テレビも、あらゆる電子機器が使えなくなってしまいます。インターネットも、電話も、SNSでのやりとりもできなくなって、誰かと遊びに行く約束や日常的な誰かとのコミュニケーションも、今のように気軽にはできなくなってしまいます。そう、「水晶発振器用IC」は、実は人々に一番近いところで日々の暮らしを支える、最高の「影の主役」だったのでした。

だからこそ、お話を聞いた後で強く思いました。

「ありがとう、水晶発振器用IC……」。

みなさんもふとした瞬間に、日々の生活をこの小さな部品が支えていることを思い出してみてはいかがでしょうか。

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