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執筆 友光だんご
撮影 藤原 慶
編集 Huuuu

皆さんにとって「ずれたら困る」ものってありますか?

例えば目が悪い人にとって、メガネやコンタクトレンズがずれるのは嫌ですよね。学生時代に女子がノリで固定していた靴下も、きっとずれNGだったのでしょう。

しかし、最もずれたら困るのは「時計」ではないでしょうか。駅や空港の時計がずれていたらダイヤが乱れてしまいますし、スマホの時計がずれたら大事な約束に遅れてしまうかも。

そう、私たちの生活に「正確な時間」は欠かせません。

セイコー受付 写真

そんな「ずれない時計」の技術を取材するため、本日はセイコーへやって来ました。

セイコーといえば日本で初めて腕時計を作った、世界に名だたる時計メーカー。とっても正確な腕時計の取材なのかな……なんて思っていたら、少し違うよう。

どうも、その「ずれない時計」は巷でよく聞く「4K・8K」放送と深く関係しているそうなんです。

一体どういうことなのか、さっそく話を聞いてみましょう!

そもそも4K・8Kの「K」って何?

樋口政史さん(写真左)、宮脇信久さん(写真右)

取材に応じてくれたのは、セイコーソリューションズで営業を担当する樋口政史さん(写真左)と、技術分野を担当する宮脇信久さん(写真右)。

よろしくお願いします。セイコーの「ずれない」技術がすごいらしい、と聞いてきたのですが……。

樋口:セイコーの技術が「4K・8K」放送を支えている、と言っても過言ではないです。

おお~。あの、4K・8K放送って確かによく聞く言葉なんですが、そもそも何なんでしょう?「めっちゃキレイなテレビ」程度の認識しかなくて。

宮脇:だいたい合ってます。「めっちゃキレイだし、音もハイクオリティで新世代のテレビ」が4K・8K放送です。

合ってたんですね。その「K」って何なんですか?

画面サイズ例 画像

樋口:K=1000の単位で、画面の横幅のことです。現在、一般的な地上デジタル放送は、横幅1920で「2K」にあたります。
4Kはその2倍で横幅3840、8Kはさらに2倍の横幅7680ですね。画素数でいうと、2Kが約200万画素、4Kが約800万画素、8Kが約3300万画素になります。

ということは8K放送の画素数は……今の地デジ放送の約16倍?!つまり、16倍キレイってわけですね。

樋口:それだけじゃありませんよ。映像のコマ数でいうと、8Kは従来の地デジ放送の4倍。1秒間に30コマだったのが、最大120コマになります。

音声も進化していて、8Kは22.2chのサラウンド音響システムですから、まるでその場にいるみたいな臨場感が味わえますよ。特にスポーツを観るとすごいんです。目の前でアスリートがプレイしているような体験ができます。

へえ~~、未来のテレビ感ありますね……!

「とっても正確な時計」が4K・8K放送に必要なわけ

インタビュアー 写真
ライター 友光だんご

では、その「めっちゃキレイだし、音もハイクオリティで新世代のテレビ」に、なぜ「ずれない時計」が必要なんでしょう。

宮脇:4K・8K放送では映像が非常にリッチになったぶん、データ容量も非常に大きくなりました。また、放送と通信の複数経路でハイブリッドな配信をするため、放送の仕組みを変える必要が出てきたんですね。

従来のテレビ放送との違いを簡単に図にしました。こちらをご覧ください。

従来の放送と4K・8K放送の比較 画像

宮脇:従来は、放送データはひとまとまりで送信され、受信・放送されていました。

しかし、4K・8K放送では、従来の放送に加え、通信のルートも使い、複数の伝送路で映像・音声・字幕・コンテンツを配信します。そして、バラバラに受け取ったものを組み合わせて放送しているんです。

え、なんだかややこしくなってませんか? 映像がリッチで配信方法も複数に…?

樋口:データ放送のように、放送とともに提供されるコンテンツも増えていますからね。放送と通信のように複数ルートで、かつバラバラにデータが送られる。さて、もしも分割されたデータの組み合わせを間違えると……どうなるかわかります?

ええっと……

宮脇信久さん 写真

「放送事故です」

(食い気味に……!)

樋口:例えば、生放送で映像と音声がずれてしまう、なんてことが起きてしまいます。

うわあ。陸上の試合を見てて、ゴールする前に「1位は〇〇選手です!」なんてアナウンスが先に出ちゃったら興ざめですもんねえ。

宮脇:そうそう、ずれたら大変なんですよ。そこで、ずれなく正しく組み立てて映像を再生するために、セイコーの「タイムサーバー」という高精度な時刻情報を提供する製品が活躍しているんです。

セイコーのタイムサーバー 画像
▲セイコーのタイムサーバー。一見何の変哲もない機械だが……。

タイムサーバー? なんか、時計っぽくはないですね。

樋口:これはまあ、「すごい正確な時計を持ってるパソコン」だと思ってください。

タイムサーバーは、4K・8K放送で分割された映像や音声の一つ一つに「タイムスタンプ」といって時刻を刻印するんです。すると、そのタイムスタンプが目印となって、データを正確に組み合わせて、映像を正しく放送することができるんですね。

タイムサーバーが目印として「タイムスタンプ」を押すことで、映像、音声、字幕などが正しく組み合わせられ、同期して放送できる 画像

なるほど、時間の目印が設計図の役割を果たすと。

宮脇:ええ。放送の進化にともなって、より正確な時計の重要性が増してきたんです。

100年以上前から続く、「ずれない時計」の歴史

セイコーの時計 写真

宮脇:「ずれない時計」の歴史は、実はとっても長いんですよ。100年以上前に「キプトンの悲劇」という事件があったんですが……。

急に歴史の講義みたいに。どんな事件だったんですか?

宮脇:アメリカのオハイオ州で、二両の蒸気機関車が正面衝突する事故を起こしたんです。その原因は、運転士2名の持つ時計が、たった4分ずれていたから。

この悲劇を機に、振動が激しく、温度変化も大きい蒸気機関車の運転席でもずれない高精度の鉄道時計の基準が制定されます。同様に事故や混乱を避けるために、「標準時」の概念も生まれました。

最初は鉄道で始まり、その後、国ごとの「標準時」も定められました。

ということは、日本の標準時もあるんですか?

樋口:ええ、インターネット上の「情報通信機構」のサイトで簡単に確認することができますよ。

この標準時が基準になっているのは、鉄道だけでなく放送の現場でも同じです。そうなると、次は「いかに標準時に合わせるか」が重要になってきます。

というのも、今っていろんな機械の中に時計が内蔵されていますよね。例えばテレビの現場だと、カメラやモニター、パソコンなど、いくつもの時計があります。そのどれかひとつでもずれていたら、放送事故が起きてしまうかもしれません。

モニターの時計を見て生放送のキューを出したのに、実はずれていて2分早かった……とかだと大ごとですよね。

樋口:そうそう。とはいえ、時計一つ一つがずれてないか、人力でチェックするのは大変。そこで、ここでも先ほどの「タイムサーバー」という機械が使われているんです。

樋口政史さん 写真

宮脇:まず、先ほどもお話したように、タイムサーバーの中にはとっても正確な時計が入っています。さらに常に「標準時」を受信して、ずれを無くしています。

そのタイムサーバーが、カメラやモニターなどの現場の機械とネットワークを介して繋がることで、常に同期し、時間のずれを無くしているんです。

タイムサーバーに「今何時?」って聞いたら「何時だよ」って瞬時に答えてくれるってことですか?

宮脇:はい、そんなイメージです。その「何時だよ」って答えがめちゃくちゃ正確なんです。

放送以外にも、交通機関、金融・証券、医療、電力など、このセイコーのタイムサーバーの技術はさまざまな分野で使われているんですよ。

さまざまな分野で使用されるセイコーのタイムサーバー 画像

宮脇:金融の現場では、もしATMの時間がずれていたら振込の記録がエラーになったり、トレーディングの取引で時間がずれていると何十、何百万円もの損失が生まれるかもしれません。鉄道や飛行機の緻密なダイヤも、正確な時計があってこそですから。

ずいぶん色んな現場で「ずれない時計」が働いているんですね。

宮脇:もはや「ずれない」は社会インフラと言っていいと思います。

「LTE」や「5G」といった通信の分野でも、タイムサーバーの技術は使われています。目に触れることはなかなかありませんが、見えないところで皆さんの生活を支えているんですよ。

まさに縁の下の力持ちですね。今日は勉強になりました!

おわりに

セイコーの腕時計 写真

この取材以来、電車を待つ駅のホームで、お金を下ろしに立ち寄った銀行で……さまざまな場所でセイコーの「ずれない時計」の存在を意識するようになりました。時計の姿は見えませんが、しかし確かに私たちの暮らしを守ってくれています。

そして4K・8K放送は2018年12月に衛星放送がスタートし、これからますます盛り上がっていくはず。この記事を読んだ皆さんが、4K・8K放送を見る際に少しでも「ずれない時計」の存在を意識してくれたら幸いです。

セイコーソリューションズ 公式サイト タイムサーバー

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