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セイコー所属の山縣亮太選手が、リオデジャネイロ五輪 陸上男子100mの代表に決定しました。セイコーホールディングス本社で行われた壮行会の後、話を聞きました。

インタビュー

走ることで恩返しがしたい

- 代表決定おめでとうございます。本日はお疲れ様でした。壮行会はいかがでしたか?

山縣:みなさんの前で挨拶するのは日本選手権の時よりも緊張しましたが、たくさんの方が来てくださって本当に嬉しかったです。日頃から競技に集中できる環境を整えていただき、また、深い理解と暖かいご支援をいただき、感謝の気持ちで一杯です。走ることでしっかり結果を出して恩返しをしたいと思っています。

- 今シーズン、社員が会場で横断幕を掲げて応援していますが、応援団は見えていますか?

山縣:はい。大会では、いつもゴール付近で応援してくださっているので良く見えます。応援に来てよかったと思っていただけるような走りをしたい、と毎回決意を新たにしています。

世界のトップで闘うための ぶれない姿勢と、柔軟性

- 入社してから今まで、いろいろあった一年だったと思います。まず、腰の治療で試合を休むことにしたのは大きな決断だったのではないですか?

山縣:そうですね。去年の春に社会人になって、あらためて「世界のトップで闘いたい」と思った時、目の前の試合は大事だけれど、やはり、けがに向き合ってきちんと治してから試合に出る、というのが本来アスリートとしてやらなければならないことだと考え、一年かけてでも治すというように気持ちを切り替えました。

- 自分で考えて練習するスタイルを変えて、コーチをお願いしたのも大きな変化でしたが、何かきっかけがあったのですか?

山縣:単純に、第三者の目線が必要だと思ったからです。この4年間懸命に取り組んできましたが、なかなか結果が出なかった。自分の感覚と自分の目線だけで良い方向に持っていくのは難しい、自分は大切なことに気づけていないのでは?と思ったんです。自分をよく知っている第三者の客観的な目線で、悪いところをしっかり指摘してもらえる環境が必要だと思いました。
今は、フィジカル面のサポートでトレーナーの方にもついていただいています。精神面でも支えていただき、カッコ悪い部分も含めて今の自分を受け入れることができるようになりました。

真摯に一試合 一試合、反省と修正を繰り返す

- この一年、腰の治療と合わせて、体づくりにも取り組んできました。

山縣:けががあって体を作り直しました。いまいちスピードが出ないなと思っていたので、ナチュラルに出る力を大きくしたかった。
ウエイトトレーニングをして動きが変わったということはないのですが、地面に伝える力が大きくなり、エンジンが一つ大きくなったと感じます。
また、自分は「ムダのない走り」を心がけているのですが、ウエイトトレーニングをするようになってから「力を抜く」ことを意識するようになり、力強く、かつ、スムーズな走りができるようになりました。
トレーニングが走りに上手くいかせていると思います。

- 今シーズンはワクワクするような試合をしたい、と言っていましたが、4月の織田記念からずっと調子がいいですよね。

山縣:一試合 一試合、反省点と良かった点を振り返って、修正してきました。体の調子を見ながらレースを組み立てられるようにもなりました。スタートはもともと得意でしたが、今シーズンは中盤の加速がよくなりましたね。布勢スプリントで、向かい風0.5mの中で自己ベストが出せたのは自信になりました。自分の理想の走りに近づいてきていると思います。

- 日本選手権の決勝は本当に残念でした。

山縣:勝たなければならない試合で勝てなかったので本当に悔しいです。実は、今シーズンのレースで、日本選手権の決勝だけレース展開が違っているんです。予選と準決勝でスタートが悪かったので、スタートを修正しました。ずっとスタートで前に重心をかけすぎないようにしていたのを、スタートから流れるように出て、スタートと中盤の二次加速を組み合わせてみました。スタートはイメージ通り上手くいって中盤も落ち着いて走れたのですが、最初に重きを置きすぎました。前半あそこまで早く抜け出す必要はなかった。最後スピードが上がりませんでした。力みも出たと思います。
あのレースの映像は何度も繰り返し見たので、次は、また、その反省を生かして修正していくだけです。

趣味の料理や読書も、全ては走りに通じる・・・

- ストイックな毎日だと思いますが、今の気分転換は料理だとか?

山縣:自炊で、元々ものを作るのが好きなので、今は料理が気分転換であり趣味ですね。
たんぱく質をとって、油は控える。蒸すとか、和テイストが多い。
お魚もさばけたらカッコイイなという感じで。
ついていただいているトレーナーの方が栄養にも詳しいので、必要に応じて、疲労回復にいい料理などを教えてもらってやっています。
品数多く、栄養バランスよく。栄養が足りなくてパフォーマンスが鈍ることは一番避けたかったので、食べたい量はしっかり食べて栄養はとる、ということはすごく意識しています。

- 写真を見ましたが、本当に品数が多くて素晴らしいですね!料理の他には、本も読んでいて、羽生善治さんの著書に影響を受けたと聞きましたが?

山縣:「直観力」を読み、勝負師としての姿勢に惹かれました。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。」負けた時の言い訳をしない、悪条件の中でも結果を出せるように準備しないといけない、ということなのですが、羽生さんのような方でもこう思うのか、と感じました。
同じくプロ棋士の森内俊之さんの「覆す力」にも影響を受けました。将棋の場合、対局時間が長いのでどうしてもミスはしてしまうものだが、ミスをした時でも動揺しないで、その後ミスを繰り返さないようにする、失敗にも目を背けないで挑戦する、というようなことが書かれていました。
自分も、100点のレースを目指すが、なかなか100点とはいかない、スタートで失敗してもそこから立て直せるようにしようと思い、心がけています。

- 趣味や気分転換とはいえ、やはり全ては走りにつながっているのですね。

日本選手初の9秒台、ファイナリストを目指して

- これから本番まで、どのような取り組みをして、どのような気持ちで試合に臨むのか、聞かせてもらえますか?

山縣:目の前の課題を一つ一つクリアして、自分のレースをできるようにするだけです。今のスタートのイメージに中盤の加速以降をうまく組み合わせられるようにしたい。エンジンはもう少し大きくできると思うので、もう一度体を作って、本番に臨みたいですね。イメージはできているので、前回を超えるつもりで、しっかりシミュレーションして臨みたいと思います。
手応えを感じているので、予選からしっかりねらって自己ベスト、日本選手初の9秒台を出して決勝に進みたいです。9秒台を意識しないことはもうできないので、「9秒台」「ファイナリスト」から目をそらさず、予選の一本目から出すつもりでいきます。ねらえる位置にきていると思うので、しっかりねらっていきたいと思います。気負いはありません。

- 活躍を期待しています。本日は、忙しい中、どうも有難うございました。

インタビューの後、応援してくださる方へのビデオメッセージをお願いすると、「これが一番苦手なんですよね。」と照れながら、しばし考えた後、にこやかに撮影に応じてくれた山縣選手。
レースの時の厳しい表情とはうって変って、丁寧な受け答えと、時折り見せる笑顔がとても素敵でした。
風になって走れ!山縣選手!

ムービー

山縣選手ビデオメッセージ

山縣選手トレーニング風景

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